オレンジ色の紫陽花

携帯から軽快に綴るおいらの日々。
…だったのだが、ツイッターのまとめブログに変更。極稀にこっち単独の記事もある、かも。

「紀文大尽舞」

2006年06月11日 22時37分52秒 | ほぼ、文庫本
紀文大尽舞/米村圭伍/新潮文庫


ああ、長かった。
というのが読み終わってすぐの感想。仕事の行き帰りに、バスの中や、バス停で(バスを乗り継ぐんですが、これまた便数が少なくて!特に帰りはほぼ1時間待ち、なんてことも結構あるんです。)読みまくりました。あとは病院の待合室。のべ日数として三週間。でも家ではほとんど読まなかったので、実質の時間数としてはそれほどでもないかも。
あらすじは――
花のお江戸で女だてらに戯作者を志すお夢が追うのは、紀伊国屋文左衛門。蜜柑船で一夜にして財をなした豪商の一代記を書くためだ。ところが紀文は逃げ回り、お夢は命を狙われる。華やかな立志伝に隠された秘密とは何か。ついに大奥に潜入したお夢が遭遇する、将軍継承を巡る大陰謀とは。紀文と八代将軍の吉宗の意外な接点。お夢の推理が冴えまくる痛快無比の大江戸歴史ミステリー。
(文庫本裏表紙より全文掲載)


時代劇が好きな人なら、楽しめるかな。史実にこだわりたい人にはオススメしません。
おいらは時代劇好きな人ですから、楽しみながら読みました。
ええ、楽しかったんですよ。そもそも紀伊国屋文左衛門てのも、名前だけは知ってるし、確か紀州から蜜柑を運んだ人だ、くらいなことは知ってましたが、なんでそれが豪商になるのかは知りませんでしたし、紀文がいつの時代の人だってことすら知りませんでした(どーん)。
ですから、そうか、紀文てこういう人だったんだ、ふーん、から始まるわけで、そこらあたりはもう、時代劇を楽しむのと同じです。そこへもってきて、のっけから主人公が刺客に襲われたり、それを助けるいかにも御都合主義な設定の浪人だの忍者だのが出てくるもんですから、すっかりノセられてしまいました。
が。
なんだろうな。
最後の最後、あらゆる事柄がどんどん繋がってきて、謎解きが佳境に入ってきて、黒幕も、その裏の黒幕も見えてきて、さていよいよ幕引きだ、てあたりから、もういいよどうでも、な気持ちになっていくんです。
一つは、将軍継承問題という、いわばこの話の屋台骨になる話が、おいらにとってはちっとも面白くなかったこと。これはおそらくおいらの歴史不勉強によるものだと思います。別に八代将軍吉宗が紀州徳川の出でもいいじゃん、なんでそんな目くじらたてるの、みたいな。…そういえば今ふと思ったんだけど、徳川の歴代の将軍で、「家」の字を上に持ってこないのは、二代秀忠、五代綱吉、八代吉宗、十五代慶喜、だけだよね。しかもそのそれぞれが印象に残る将軍だったり、歴史上有名な事件がおこったりするよね。なんか、あるのかねえ。
もう一つは、どんでん返しが多すぎること。最後の最後、の最後、の最後、て、何!?これだけ文字数を使っておいて、オチはそこ?そりゃちょっとなんぼなんでも、なんか、ぇえ?…後味、悪っ。まあこれもおいらの好みに合わなかったというだけの話ですけど。
話が進んでいって、謎解きもがんがん進んでいって、お夢自身が何回も言う「どうやったら面白い結末になるか」。それはそのまま、読者(であるおいら)の気持ちなんです。ここまでいろんな話が噴出して、それが巧妙に仕組まれて作られて今日の姿になっている、その裏の部分を白日の下にさらして実はこうこうこうでした、というだけでは面白くない。さてお夢は、いやお夢を書いてる作者は、これをどうシメるか。それを楽しみに楽しみに、ていうか謎解きが進んでいくうちに、謎解きはどうでもいいから結末を、最後の一文字を読み終わった後にどういう感想を持つか、を楽しみに読んでいたくらいです。それを、あっさりと裏切られた感じ。せっかく面前で三色チャンタイーペーコードラドラを揃えたのに、立直のすぐ後に1000点の手で蹴られた感じですよ!(って麻雀知らない人には分からない例えで済みません。)
というわけで、読後感はよろしくありません。きっぱり言いますが。
でも、途中は面白いです。活劇ですからね、それこそ痛快時代劇を見るようでウキウキします。ごいごい読めます。
その爽快感があるだけに、余計に読後感がよろしくなかったのかも。
あくまで、おいらの好みの問題ですけどね。

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