すぎなみ民営化反対通信

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安倍政権、大うそとだまし討ちの「子ども子育て支援」「待機児童解消加速」

2013年05月07日 | アベノミクス版「子育て支援」批判

★シリーズのはじめに

   安倍首相が4月19日の「成長戦略スピーチ」で「子ども子育て支援」「待機児童解消」についてかなりのスペースを割きウエイトを置いて位置づけとプランを出しました。アベノミクスの当座の「好調」に有頂天になって「3歳まで抱っこし放題」はじめ色々な問題発言を行い安倍その人のKYぶり(・・・空気が読めていないこと)と社会で起きている物事への無知無理解ぶりをさらけだしていますが、もちろん最大のテーマは、このスピーチと政府、自民党の方針としていま出されている「子ども子育て支援法」の運用の2年前倒しによる「株式会社の認可保育所参入の即時全面的推進」「認可外保育所への支援拡大と小規模保育の奨励・拡大」、「待機児童解消加速化」プラン推進の問題です。結論的に言って、これは全面的な民営化による保育の解体・一掃です。公立保育所を実体的中核として歴史的に形成されてきた(福祉としての)保育、その後の社会保障の解体攻撃の中で「最後の砦」としてギリギリのところで守られ存続してきた保育の最終的解体を狙う攻撃が、この安倍政権の「待機児童解消加速化」プランです。

  安倍首相と政府・厚労省は「待機児童解消加速」と言いながら、「認可保育所への株式会社参入の促進」とは言っても「認可保育所の増設」とは決して言いません。認可保育所は認可要件にかなう公立保育所と株式会社や社会福祉法人等の民間保育所です。あえて具体的に「株式会社の認可保育所参入の促進」というのは、公立保育所を新設・増設する考えは国にはないということであり、市町村の公立保育所もこのかん業務委託・外部委託・指定管理者制度等で大半が本来の公立保育所とは様変わりしてきており、株式会社の参入促進で株式会社立の認可保育所が勢いを増せば、子ども子育て支援法に自公民合意で潜り込ませた「公私連携型法人」「公私連携型認定子ども園」の条項・規定により、公立保育所もその地位を株式会社に明け渡すことになると見込んでいるからです。

  この「株式会社の認可保育所参入の促進」と「認可外保育所の支援の強化」「小規模保育の奨励、支援、促進」こそ、公立保育所を中核とした(福祉としての)保育の解体です。これを「待機児童解消加速」「「4年間で待機児童ゼロ」の大ウソのスローガンで、「抱っこし放題」のキャッチコピーでやるというのです。まさに文字通り、あらゆる面からの、「あの手この手を使った」民営化による保育の解体です。こんな大ウソでだまし討ちを食らうわけにはいきません。

 「待機児童解消加速」の大ウソによる保育解体・一掃のだまし討ちです。▲ぎりぎりのところで団結を崩さず、民営化と対峙し保育職場をまもってきた保育職員、▲委託職場・民間職場で低賃金・不安定雇用下、同じ非正規世帯や共働き世帯の子どもの保育の質を落とすことに反対し、職場環境と雇用形態・労働条件の改善をもとめて歯を食いしばって頑張ってきた非正規職員(契約社員・非常勤・パート・アルバイト)▲共働きでわが子を保育に預けて働く保護者(労働者)にとって、抗議の声をあげ、一歩も譲れないだけでなく、一歩前に出て声をあげるときが来ました。自らと仲間、わが子の現在と未来、生活を賭けた、職を賭けた、人間としての誇りを賭けたたたかいのときが来ました。保育職場から立ち上がろう!同じ仲間である保護者(親たち)と結んで立ちあがろう。街頭に打って出て、安倍政権の「待機児童解消加速化」「子ども子育て支援」の大ウソと保育解体のだまし討ちへの抗議で社会的反撃をまきおこして闘おう。「待機児童」の問題で国と自治体がすべきことは公立保育所の新設・増設と保育労働条件の抜本的改善・向上、非常勤・非正規職の正規化だ!株式会社の保育参入や、無認可保育所拡大、小規模保育促進ではない!民営化に絶対反対!保育を守れ!

安倍首相の「3年間抱っこし放題」発言、自民党の「育児休業3年延長方針」に対し、徹底した怒りの弾劾・抗議を!

 安倍首相が、7月参議院選での女性支持票拡大のあけすけな狙いで、4月18日日本テレビで行った「育児休業期間の3年間への延長」発言、4月19日「成長戦略スピーチ」の中で触れた「3年間抱っこし放題」発言と「今後5年間で保育受け皿40万人分確保による待機児童解消」発言をめぐって、働く女性、子育て中の女性、出産を予定している女性、これから結婚しようという女性を中心に、ほとんど総スカンで反発と批判と怒りの議論がまき起こっています。いくら参議院選の女性票目当てにせよ、いかにアベノミクスによる株価上昇・金融バブル再来に有頂天のあまり、図に乗った軽佻浮薄発言にせよ、人を愚弄するもはなはだしいというものです。

 

  (1) 保育・子育てめぐる深刻な現実に対する根本的無知・無理解・・・安倍首相「三年間抱っこし放題」の軽佻浮薄暴言

  安倍首相が、ここで言っているのは、子育て、保育という女性・母親にとっても女性・母親にとどまらず家庭と社会、未来にとってのかけがえがない子どもたちの問題に関することです。いま子ども子育てで最大の問題となっているのは何でしょうか?実際の保活の厳しさ(子どもを保育所に入れられず、働くために必死で行われている入所できる保育所さがし、経験したものでないとわからない苦労と困難。今日では若者の就職が困難を極めている「就活」になぞらえて「保活」と呼ばれるようになっています)、子どもがいる働く女性、共働き家庭における保育・子育ての問題をめぐる困難と切実な苦悩に対して、まるで無知無理解で偏頗な認識で、「育児休業三年延長=三年間抱っこし放題」などというキャッチコピーで支持が得られるだろうと思っていること自体、人を愚弄するもはなはだしい、怒りにたえない話です。


 (2) 参議院選での女性票目当て

 そこには「子育てはママ(母親)が家庭でするもの」という自民党保守ならではの一貫せる伝統的家族観が見え隠れしています。安倍発言を聴いて「夫(男・父親)が社会で稼いでいるのだから、妻(女・母親)が家事・育児で家庭を守るのは当然。子育ては女の仕事」という家族観にカチンときた人はたくさんいると思います。しかも、そう言いながら、選挙での女性(ママ)票目当てで、実際に実施されているのは2・6%にもかかわらず、男性の育児休業の現実を知ってか知らずか「8819(パパイク)」「イクメン促進」まで無責任なリップサービスよろしく軽口で挙げています。魂胆があまりにも見え透いた話です。

 (3) 一般職や非正規の共働き世帯にはおよそ無縁な「育休3年」

 愚弄するもはなはだしい問題の核心は次のことです。「3年間抱っこし放題?」「育児休暇3年間?」!!! 安倍首相は何を現実として見ているのか?何も見ておらず、何も知らず、何もわかっていないのではないか!! 時給いくらの世界で日々の生計をしのいでいる非正規共働き家庭にとっては、「育児休業3年間」「3年間抱っこし放題」などおよそ自分たちの現実とは無縁な別世界の話です。「いったい、3年抱っこし放題など安倍首相はどこの誰に向けて話しているのか」と批判されているように、ごくわずか、ごく一部の恵まれた条件にある人々にしか与えられない例外中の例外の世界の話に過ぎません。そもそも育児休業とは言いますが、育児休業期間の給付金は中小企業やパート・アルバイトの世界ではまったく保障されないし、大企業で育休給付金制度を実施している場合も正社員でなければ保障されず、その給付金もこれまでの給与額にはまったく満たないものです。「3年間育児休業延長」と口先だけ「子育て支援」のようなことを言っているように聞こえますが、ごく一部の恵まれた環境にある家庭以外の圧倒的大半、非正規や一般職の家庭は、そのかん、どうやって生計を維持すればいいのでしょうか。

  安倍首相はどこの誰に向けて言っているのか無自覚かもしれませんが、「抱っこし放題」とは「3年間は育児に専念せよ」ということであり、一般職の労働者世帯、中小企業や非正規で働く労働者世帯にとっては「子どもはつくれない」「子どもをつくるな」というに等しい実に許せない暴言です。

 (4) 核心は、「成長戦略」のための30代女性の非正規労働への根こそぎ動員

  そのうえで、安倍首相が、アベノミクス「三本の矢」の三本目の矢としての「成長戦略」について、それが軌道に乗るかどうかの鍵は「戦略の中核である女性の活躍」にあると「成長戦略」スピーチで強調している点は、自民党と安倍政権の「子ども子育て支援」政策の正体を考える上で重視する必要があります。 これはまさに労働者の9割非正規化・総非正規化・ワーキングプア化の犠牲の上に濡れ手に粟でカネ儲けする新自由主義、アベノミクス版「子ども子育て支援」です。

現在、最も活かしきれていない人材とは何か。それは女性」です。女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。「成長戦略」の中核をなすものであると考えています。女性の中に眠る高い能力を、十二分に開花させていただくことが、閉塞感の漂う日本を、再び成長軌道に乗せる原動力だ、・・・・(4・19安倍首相「成長戦略スピーチ」:官邸hp)

 そうです。安倍首相にとっては、女性は「活用しきれていない労働資源」なのです。安倍首相は「輝く女性の活躍」「女性の登用」だの、前掲引用のように「女性の中に眠る高い能力」「閉塞感の漂う日本を再び成長軌道に乗せる原動力」だのと持ちあげてみせ、「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上としたい」、「自民党は女性を党の四役という要衝に二人登用した」と言い、「経済団体にも役員に一人は女性を起用すべきと進言した」などと吹聴していますが、この「成長戦略スピーチ」で言われていることは、男性労働力よりはるかに人件費が廉価ですむ女性労働力をとことん活用しようという政府財界の雇用(労働資源)戦略にほかなりません。

  「欧米はじめ世界各国と比べて30代女性の就業率が著しく低く落ち込み、M字カーブとなっているのが日本である」と、日本的雇用構造と保育の不十分性・不備・欠陥への国の制度・政策責任を棚上げした勝手な女性就業率分析から、この就業していない30代女性を低賃金で非正規雇用すれば企業の利潤率がもっと向上する、というものでしかないのです。

 資本(企業)は、長時間労働を軸とした労働強化と賃金の切り下げによる強搾取で利潤を紡ぎ出そうとします。日本の財界は、1995年日経連プロジェクトの報告「新時代の日本的経営」ではそのために「経営的資源たり得る労働力人材=1割正社員」「9割=非正規、不安定有期雇用」としました。

 9割非正規化とは、にいま就業している労働者(男女)の非正規化にとどまらず、中卒高卒の少年から家庭の主婦、さらには退役労働者である高齢者、さらには障害者、病気の人々まで、「老いも若きも」、資本が利潤をあげつづけるための廉価な労働資源として非正規労働に駆りだすということ以外の何ものでもありません。安倍首相が「成長戦略スピーチ」で「老いも若きも全員参加の成長戦略」と言っているのはこのことにほかなりません。これが安倍首相が「能力が十分に発揮され活用されていない」とする若い世代・女性・高齢者等の全員に対して求めている「チャレンジ」です。大恐慌・大不況・大失業のもとで労働に駆りだす層に、資本の側で制限はありません。搾取できるかぎりは誰からも最後の血の一滴まで搾取しつくす、失業と窮乏の恐怖・不安から労働に駆りだせば駆りだすほど、安く労働力を買いたたけ、労働条件の切り下げも賃金の切り下げもどんどん進めやすくなり、その分利潤は上がるというのが資本(企業・財界)の論理なのです。

 ここから、「活用できていない(⇒企業の利潤を生みだす非正規雇用にまだ十分に動員・駆り出せていない)30代女性(女性労働力)」を「活かしきる」・・・このことを安倍首相は「女性の活躍」「女性の中に眠る能力の十二分の開花」「成長戦略の中核」「成長軌道に乗せる原動力」と言っているのです。

 「3年間抱っこし放題」(安倍首相発言)「育休3年延長」(自民党方針)に対して、本能的直観的に30代を中心に働く女性、子育て中の女性はじめ多くの人々が胡散臭さ、違和感を覚えた最深の根拠は、▲この政府財界の狙いである労働者の9割の非正規化、▲共働き化のもとで切実な苦悩となり死活的な要求となっている子ども子育て支援とは裏腹に、実体を伴わない口先だけの虚構性、▲それゆえの政府がやろうとしていることと人々が求めていることの真逆な乖離の大きさによるものです。安倍首相の本音はスピーチでも出ています。「社会政策(※⇒社会保障や社会福祉としての保育=子ども子育て支援)ではなく成長戦略(※⇒企業・財界にとって儲けになる雇用戦略)」・・・この本音が安倍首相の「子ども子育て支援」をめぐる発言の端々に見えてしまうということです。

 安倍首相の「アベノミクス」や「世界最高水準の安全技術による原発再稼働」や「失業なき労働移動による雇用」等々、安倍首相が言うことなすことは、このように、ことごとく、大うそとだまし討ちです。30代女性をターゲットにした廉価な非正規労働力としての動員が狙いの「三年間抱っこし放題」「2013年・14年の2年で20万人分、2017年までの4年で40万人分の保育受け皿の確保で待機児童ゼロ」も実にゆるしがたい大うそとだまし討ちだということです。

 (5) 「3歳になるまでは家庭の責任で育児・養育の子育て」「3歳児からは学校教育課程」

  ここでは簡潔に済ませたいと思いますが、安倍首相が自民党の参議院選挙マニフェストの作成過程で「育児休業期間延長」(現行制度では期間は1年)の年数にこだわり、「3年」と明記することを強く求め、経済団体・企業サイドからの疑問符や慎重意見も押し切って「育児休業3年延長」方針となったという経過の問題があります。

 自民党は、一貫して「3歳児からの教育課程」「幼児教育を3歳児から」という制度改革に執着してきました。戦後の歴史的な経過では、子どもを預けて共働き形態の世帯と父親が働き母親が育児する専業主婦形態の世帯という、母親が就労か専業かで保育所と幼稚園にすみ分けしてきたという面が、実体はほとんど子どもの養育で大差ないまでも保育所と幼稚園の分化・併存にはありました。前者(保育所)には親の就労のために保育に欠ける児童への「福祉」が、後者(幼稚園)には小学校就学前の準備としての「教育」が国の制度・政策契機となっており、法令も前者は児童福祉法、後者は学校教育法を根拠とし、所轄官庁では、前者は厚生省(現在の厚生労働省)、後者は文部省(現在の文部科学省)の管掌とされてきました。自民党は、その一元化のために「3歳児からの幼児教育」を軸に再編し、「保育(福祉)」には国のカネは出さず、家庭と民間企業に委ね、「幼児教育」にだけ国のカネを使うという「幼児教育の無償化」政策の制度化をめざし、たえず追求してきました。安倍政権による今般の参議院選向けパンフレットでも自民党は「幼児教育の無償化」を掲げています。

 このようにみると、「教育再生」「教育改革」を強く押し出している安倍首相が「三年間抱っこし放題」「育児休暇3年延長」と言いだした根幹には、「3歳までは家庭で育児・養育」「3歳以降は学校教育」という自民党の国家戦略、その基礎をなすものとして保守層に位置付けられている教育改革戦略が、-それが「子ども子育て支援」政策との関係でどれほど実現性や整合性があるのかどうかは措くとしても- 透けて見えます。3歳を境とする「子どもの養育」と「幼児教育」への制度上の区分とは、保育に欠ける子どもへの「福祉」の最後的解体と国家主義的な幼児教育への一元化を意味します。

 (6) 保育・子育ての責任を放り出したこの国・政府に、未来は委ねられない!

 これほどデタラメで無責任な話はありません。子どもは、社会の次代の担い手、未来そのものであり、国の未来を担う宝です。たとえ安倍首相や自民党が「3歳からは幼児教育」と勝手に決めようが、「三年間は抱っこし放題、三歳までは家庭で育児」と謳おうが、保育の問題は共働き就労が続く限り厳然として、社会の責任であり、それはとりもなおさず、国がある限り国、その政府の責任です。

 そもそも国も企業も私たちの就労・労働のおかげで養われ支えられているのであって、保育は国、企業の責務です。言い換えれば、この国と政府は、保育、子ども子育てには、もはやいかなる責任もとらなくなった、放り出した、とれなくなった、破たんした、この次代にかかわる根本的な問題でいかなる解決能力、統治能力を持ち合わせていないということです。未来をこの国と政府に、安倍政権に委ね続けることはできません。いま起きている保育、子育てをどうするのか、という問題には、個別政策領域としての「保育、子育て」にとどまらない、どういう社会にするのか、この国を社会のありかたもろとも、政府もろとも、変えるのか、それとも政府・支配層の言いなりで道連れにされ、無茶苦茶な破滅を招くのかという問題がはらまれているのです。

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