事務屋のひとり言

東京都の事務員のひとり言です。

人文学部の戦い

2005-08-09 | 都立大改革の日々
2004年になりました。
それまで沈黙していた経済学部から、ついに抗議声明が出されます。
「新大学設立準備体制および移行スケジュールの根本的な見直し」を掲げた明快な抗議声明です。

でも読んで思いました。近経の先生は本当に人文が嫌いなのね、と。
というのも「同趣旨の意見表明」として取り上げられたのは、総長の声明と理工と科技大の「教員110名による声明」だけなのです。
人文教授会も所属専攻も院生会もこれまでたくさんの声明を出していますが、それらは取り上げてもらえませんでした。

「教員110名による声明」の方には、
「10月7日の都立大学総長声明をはじめ,教職員,学生,大学院生などからの多くの声明や抗議が出されてきている」
と書かれてますから、せめてこの程度の取り上げ方でもいいので、触れて欲しかったです。

この頃南雲部長は極度のプレッシャーとストレスで体調を崩され、同じ専攻の先生に強引に温泉に連れて行かれたりしてました。「俺は辞める」と話されて冗談だと思って笑ったら、机の中に辞表が入ってると大真面目で言われてびっくりしたこともあります。
とにかく人文学部は、ゼロどころかマイナスからの挽回が続いていました。
事務側の観測は、情報ギャラリーに学生自治会が立てた立看、「人文崩壊」がまさに現実になると考えていました。


ただ学内で一番バラバラのはずの人文学部は、未だ強い結束を示しています。同意書圧力は日増しに強くなっていましたが、大学管理本部の予想に反して崩れません。

事務側の中では7月の文科省への認可へ向けて、管理本部が「現大学の改編で申請しようとしている」と情報が入りました。対外的には「都立大廃止、新大設立」を言いつつ、申請は「改編」。
「やり方がズルいんじゃないか?」と事務側でも思いました。

さっそく組合の方に「こういうやり方っていいんでしょうか?」と聞いてみましたが、「そういうものだ」とあっさりした答えでした。
大スクープだ!と思ったのに、ちょっとがっかりです。
しかしやはり焦点としてわかり易いという判断だったのか、組合の方もこの後から積極的に、ダブルスタンダードを抗議していきました。

大学管理本部の方は、この点は別におかしいとも思ってなかったようです。
その管理本部の顔色が変わったのは、日比谷公会堂で「東京都の大学改革を考えるシンポジウム」が行われ、1800人を超える人が集まったことでした。
対外的に特に出ていなかったと思いますが、この時から管理本部の雰囲気がガラリと変わったのです。
係長級に「都庁を向いて仕事するように」という今聞くと笑ってしまうような注意が入ったり、(俺の机は都庁を背にしているが動かすのか?とか呆れた声が出ました)「研究環境は確保される」などと発表を始めたのもこの頃でした。

表の強硬な姿勢とは裏腹に、南雲先生の方には、妥協点を探る管理本部からの電話が入り始めました。
「学部はしょうがない。その代わり教員を大学院所属にし、現専攻も大学院で救う」
教育重視の『学部』(実態はともかく)と、研究重視の『大学院』という構図です。
基礎教育センターやエクステンションセンター(途中からオープンユニバーシティに変わりました)の先生を、大学院ではこれまでと同じ研究を続けられるようにした、ウルトラCでした。
ここまで話を持っていったのは、南雲先生ならではだったのではないかと思います。
崩壊かと思われた人文学部は大学院所属となることで、生き残る道ができたかに思えました。

3月7日、管理本部長や学長予定者も含めた会議がもたれることになりました。
ここで、事実上の手打ちが行われ、大学認可へ先生も協力する旨の話し合いがされるはずです。
しかし会議数時間前に、突如延期すると管理本部から連絡が入りました。
いろいろ聞いてみましたが、みんなどういうことなのかわかりません。

そして3月9日。組合の「手から手へ」に学長予定者と管理本部長の連名で文書が出ました。
「現大学との対話、協議に基づく妥協はありえない」。
衝撃の内容でした。