負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

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満開の桜より雪に埋もれた桜木を愛する人がいる

2005年01月14日 | 詞花日暦
春がくれば桜花にとりまかれるが、
なぜか私は冬の景色を好む
――水上勉(作家)

 十代のなかば、寺の小僧だった水上勉は、京都・衣笠山の等持院から嵯峨野の天竜寺まで和尚のうしろをとぼとぼと歩いた。足袋もはかず、雪の吹雪く広沢池の泥道を凍えながら歩いた。池畔にたくさんの桜があった。植木職を営む佐野藤右衛門の桜で、円山公園のしだれ桜を植えた人として有名。百種の桜の苗は葉を落として雪のなかに沈んでいた。水上はこの花もない冬の景色をなぜか好んだ。
 北の海に面した若狭湾から、内陸の狭い谷を半里ばかりさかのぼると、彼の生まれた村がある。低い山間の谷地で、生家跡は西の山すそにある。当時はコジキ谷と呼ばれた。「藁ぶき屋根の小舎」は冬になると雪に埋まった。
 じっと春を待つ桜木に水上は自分を感じたのだろう。「樹のいのちは人のいのちの裏打ちである」書いた。春の満開の桜だけではない、自然のままに生きる冬の桜に思いを馳せる人がいることを忘れたくない。

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6 コメント

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テレパシーかしら? (persempre)
2005-01-15 12:35:57
昨日アップした記事にトラバさせてください。 すばらしい枝ぶりについパチリと携帯でやったものです。 この記事読む前にアップした記事。 ビックリした。
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広沢の池と言えば・・ (みく)
2005-01-16 07:37:17
秋に京都紅葉の旅に載せましたが、広沢の池は桜の季節は言うまでもありませんが、背景に山を頂き、ゆったりと静かな水面に映る景色・・何度見ても感動ですね。 娘時代京都にいる時には、悲しい時辛い時良く来ては眺めて心を癒したものです。 厳しい京の寒さに耐える姿ましてや雪、春爛漫の美しさを思えばいっそう愛おしく感じますね。 「樹のいのちは人のいのちの裏打ちである」本当に味わいの込められた言葉ですね。 円山公園のしだれ桜は見事ですが職人さんのお名前始めてです、また興味を覚えました。
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persempreさん (菅原)
2005-01-16 17:19:19
こちらのブログはうっかり見逃していました。冬の桜にわざわざ興味を示すのは、どこか一般の人と違っています。命を大事にしてくださいね。
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みく (菅原)
2005-01-16 17:26:39
若狭湾沿いの道から水上勉の生家方向に曲がる角に小高い墓地があって、桜の木が一本植わっていました。田舎にはそんな桜がかなりあります。少年の彼はそうした桜を見ていたのでしょう。後に老桜の復旧などに力を注いだのも、うなずける気がします。
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Unknown (persempre)
2005-01-18 22:34:31
岩手山を背景にした、だだっぴろいところに、1本だけ咲いてる桜。 石割り桜に負けづ、こちらでは有名です。 桜並木でなくても、枝振りのいいものは、1本で、充分自己主張しますよね。
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Unknown (菅原)
2005-01-19 08:04:51
石割桜って、盛岡城のものですね。普段はあまり気付かないのに、季節になると、短期間、咲き誇り、あっという間にまた消えてしまう。それだけに、桜特有の受け取られ方をするようです。
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