株主は出資者だから、会社に対し出資額に相当する割合の持分的な権利を有しているはずです。つまり、株主は会社の実質的所有者にほかなりません。
しかし、先ほども説明したとおり、株式会社では、合理的効率的な企業経営を実現するために、原則として所有と経営が分離しています。
その結果、株主は、会社の実質的所有者でありながら、会社経営から制度的に疎外されています。とはいえ、株主は、自分が会社の本来的な所有者ですから、オーナーとして会社の経営にある程度は口出しもしたいし、経営に対する監督権限も行使したいでしょう。そこで、株主にも、会社経営に対する監督是正権限の行使を保障すべきだということになります。
下図をご覧ください。その具体例が、株主総会の議決権(会社法105条1項3号・308条1項)であり、責任追及等の訴え(同法847条)や差止請求権(同法360条)などの各種の監督是正権なのです。
王道は、まさに株主総会というオーナー会議で議決権を行使することにより、経営の意志決定に参画していくことです。また、360条は、取締役がとんでもないことをしようとしている時に「ちょっと待った」と差止めを請求する権限です。これは事前の措置ですが、取締役に違法・不当な行為をされてしまい、会社に損害が発生した後には使えません。これに対して、事後的にカバーをするのが、責任追及等の訴え、むしろ株主代表訴訟という呼び方のほうがお馴染みかもしれませんが、847条です。
(次回に続く)