菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

講義録: 株式会社の基本構造(5) ~債権者保護の必要性(後編)

2012-05-01 00:00:00 | 会社法学への誘い

 この株主有限責任の原則と所有と経営の分離の結果、会社と取引関係に入った第三者にとって、自らの債権の担保・引当てとなるのは会社財産だけです。この第三者には、取引先ばかりでなく、会社の不法行為による損害賠償請求権を取得した債権者も含まれます。
 このように、株式会社制度を前提とすれば、会社財産のみが債権者の唯一の担保となりますから、その分、債権者の保護ということがきわめて重要な課題となるのです。

 たとえば、「今日から取引をお願いいたします」と言って、名刺を見せたら、その会社が株式会社の場合、「なんだ、おたくは株式会社ですか。そりゃちょっと困るな。おたくは株主有限責任の原則と所有と経営の分離を採るわけでしょう。債権が焦げ付いちゃった時には回収できないじゃないですか」などと言われてしまいます。
 先ほども説明しましたが、株式会社は現代資本主義経済社会における重要なプレイヤーですから、そこに取引先が付かなければ、市場経済を発展・維持することができなくなります。何とか制度的に債権者の立場を底上げしてあげる必要がでてきます。そこで、株式会社を中心とした会社法では、株主の保護や経営者の意向と同じぐらいに会社債権者の保護を強調するわけです。

(次回に続く)


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