菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

鰻と落語と法律と(三田評論)

2013-07-07 00:00:00 | 菅原の論稿

 三田評論1169(7月)号「社中交歓」にコラム『鰻と落語と法律と』が掲載されました。

          

                          

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 土用の炎天下、しがない野幇間(のだいこ)が、とりまく相手を探して町をうろうろ歩くうちに「なんとなく見覚えがあるような男」と出会う。男は幇間を昼飯に連れてゆくが……おなじみの落語、『鰻の幇間』の冒頭である。
 鰻は江戸時代から庶民の憧れで、江戸っ子の大好物だったらしく、このほかにも、『後生(ごしょう)鰻』や『素人鰻』など、鰻や鰻屋が登場する噺は多い。ちなみに、土用の丑の日に鰻を食べると病気にならないなどと広めたのは、平賀源内か太田蜀山人だと聞いたが、どこまで本当かわからない。
『鰻と幇間』は、八代目桂文楽(くろもんちょう)の十八番(おはこ)として有名である。その文楽が贔屓(ひいき)にしていた鰻屋が、神田明神下の神田川本店。五代目志ん生らと宴席を楽しんだらしい。
 さて、『鰻の幇間』。上がった店は汚い鰻屋。お世辞を並べて幇間は酒と鰻にありつくが、小用に立った男がいつまでたっても戻ってこない……何とか男の身元を探ろうという幇間と、どうにか騙して食い逃げしてやろうという男との駆け引きが、この噺一番の見せ場であろう。
 まんまと幇間を欺いた男。その行為を現代の法律で読み解くと、どのように解釈すべきだろうか。末席の法律家としても興味は尽きないので、執務場所から近い木挽町の竹葉亭本店で鰻重を食べがら考えるとしよう。
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