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罪作りなケーブルだぜAcross2000

2006年10月15日 | Audio

シンバルが「シャーーン」、バスドラが「ドシーン」というような“うん?”と思わせる変な鳴り方が影を潜めて、フラットなレスポンスでスピーカーが歌い出すという感じが得られるようになってきました。このケーブルの持つハイスピードな反応というのは、ここにウダウダと書くより、一聴してすぐに分かるものです。
我が家で何年間も他のケーブルを蹴落としてきたパイオニア製の極太ケーブルでも管楽器などの演奏で「音が重くて飛んでこない」という瞬間がよくありました。しかしこのAcross2000してからはこれが一気に解消してしまったわけです。いわゆる“音離れがいい状態”になったということでしょうか。
それに伴ってかなり細かい音も聴こえるようになりました。僕が“音のタペストリー”と勝手に呼んでいるデビッド・フォスター盤でも、音を何層にも積み重ねているのがマスキングされずに出てきます。もう聴いていて怖いくらいですね。ここまでオーバーダブしていると、普通は鮮度が落ちて平坦な音になってしまうのが常ですが、そうならずに聴こえるというのがこのケーブルからしっかり伝わってきます。
そうそう、このケーブル、ミュート・トランペットとドラムスのブラッシュは、聴き応えありますよ。プレスティッジのマイルスと、ロリンズと一緒にやっているマックス・ローチの演奏、凄すぎです。
同様にクラシックでも各セクション(例えばバイオリンやチェロやベース)などが団子状態で聴こえていたものが、その人数までが把握できるのではというくらいに一人一人の演奏がちゃんと聴こえてきます。普通ここまでクリティカルに聴こえてしまうと楽器同士のハーモニーが聴こえなくなったりするわけですが、そんなことは全くなくて、杞憂にすぎないということがこれまた一聴で理解できる鳴りっぷりです。
レイ・ブライアントのシグネチャー原盤の『プレイズ』を聴いてぶっ飛びました。こんなにいい音の盤だとは、今の今まで思いもしませんでしたから。たぶんこの年代(確か58年か59年)のピアノとしては別格のキレのあるジャジーなピアノの音がしています。ましてやベースもドラムスもいい音なんだなぁ、これが。正直シグネチャー盤は音が悪いはずだという固定概念がそうさせていたのかもしれませんが、この盤を一気に聴き通してしまったのは初めての経験でした。恐るべしAcross2000。
褒めちぎりばかりではいけないので、幾つか気になる点を。
どういうわけだかボーカルが物凄く平らに聴こえるのです。音の濁りやくすみが取れてしまったからなのでしょうけれど、何となく実在感が希薄になったような感じ。ボーカリストは気迫で歌えというのが持論ですが、ちょっと力が抜けたような感じもします。凛とした歌声といえば誉め言葉ですが、ちょっと淡泊で色気(男性ボーカルだって必要)がなくなってしまっているような部分もあります。
また奥行き表現は本当に凄くて、ドラムなど各太鼓やシンバルの位置関係まで見通せる感じがなんとも素晴らしいのですが、反面綺麗に聴かせすぎじゃないの?と思わせるところもあったりします。同様にベースでも「ドスが利いた」音ってのがあるんですが、これが結構綺麗に聴かせちゃうために、粘りや迫力みたいなものが多少欠落している感もあります。そうそう、一番良いところと悪いところを書き忘れました。それは物凄くセッティングにクリティカルという所です。スピーカーの頭を振って見ると分かるのですが、物凄くシビア。ごろりと音が変わります。良いのか悪いのか難しいところではありますけれども、それがしっかり聴こえてくるのはとてもいいことなのかもしれませんが。今日は何度も首振りをやっての試聴でしたから、疲れました。本当に。
そういう訳ですから、最新のテクノロジーのアンプやCDPやスピーカーなどを使用している方で「音場再生派」の方には、絶大な効果を発揮するケーブルです。またどうも音が濁るんだよなぁとか、あと一息の立ち上がりの良さを求めているというようなビンテージ・オーディオの方にも間違いなく福音となるケーブルだと思います。そう、音がいきなりリフレッシュしちゃうんですから。
欲を言えば、芯線が倍の太さ(値段が倍でもいいです。キッパリ)になってくれたら、言うことはありません。触ってみるとわかるんですが、やっぱりちょっと細い(芯線が)のです。すでに相当堅いケーブルがもっと堅くなってハンドリングしにくくなるでしょうけれども、それはそれでしょうがないことですね、皆様。