絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

絵の批評

2009-09-14 | 絵画指導
この絵の批評を書いてみます。

1、形の遠近法を知っているので、透視図法的には、大体描けています。

2、水の表現が良いと思います。水を水色を使わずに、写っている緑や岩の色、紅葉の色を使ったのは、成功しました。潤いもあって、いい感じです。

3、構図については、厳しく言うと、0点です。平面的な形がつまらないと思います。また、本人が良いと言っていたV字は、やめた方が良いと思います。

4、右端のこげ茶の三角形は、平面的で、具体的には何なのか全く分かりません。詳しく分からなくてもいいですが、山なのか、森なのか最低限わかる程度の表現はほしいです。

5、紅葉がきれいなので、描きたくなったとのことですが、動機は良いのですが、みんながきれいだというものは、難しいです。
これについては、以前も言いましたが、厳しく言うと、写真より美しく描けるなら描いても良いと思いますが、これなら写真の方が増しだねと言われるなら、描いても残念ですね。

6、この絵の場合は、紅葉が山の紅葉ではなく、お花屋さんが作ってくれた花束に見えます。ひとつひとつが分かりすぎます。
もっと、自然は複雑で分からない部分があるのではないでしょうか。
また、一つ一つをくっきりと区分けしすぎるようです。

7、岩の表現は、面が取れていて、離れて見るとまあまあ感じが出ていますが、近くてみると、表現が足りません。岩のごつごつがもう少し描けてほしいです。
岩の暗い中にも微妙な明るさと暗さがあるので、それを描かないと真っ暗でつぶれてしまします。これだけ晴れているのですから、反射光があるはずなのです。

8、岩と水との境目で気になるところがあります。上に上がりすぎて水面との関係がおかしいところがあるのです。この写真では分かりにくいです。

9、水の終わりが、遠近法で閉じていますが、絵の右端で閉じているのが気になります。少し回り込んではいますが、その終わり方が良くないです。

10、水があふれそうだと言ったのは、その右端の部分ですが、川の右端の地面を少し高くしないといけないでしょう。

11、紅葉の空との境目は、軽くぼかしてありますが、どこも同じようなので、平面的に見えます。もっと強弱をつけないと山のボリュームが出ません。

12、右下の砂浜も三角形が気になります。大きな岩とか、草とか、木などを入れることで、三角形を壊したい気がします。

13、空の飛行機雲は、単調で面白くありません。もし、上手に描けたとしても、ここに飛行機雲が必要でしょうか。さりげなく、いいかんじで描ければあってもいいかなと思いますが、それにしても意味がありすぎて、この絵としては、欲張り過ぎるのではないでしょうか。一番言いたいことは、紅葉の美しさなので、それを引き立たせるなら賛成ですが、果たしてどうでしょうか。空が広いので、雲を入れたいという感覚は良いと思います。また、雲の方向性は右上がりで良いと思います。

ーーーーーーー

というのが、私の感想です。批評などと生意気なことを言って始めましたが、私の感想や意見だと思ってください。

ただし、専門家の意見です。自分の絵画体験や人の作品を嫌というほど見てきた人間の意見だということは、踏まえて聞いていただければありがたいです。

結構厳しく言ってしまいましたので、初心者にはちょっときつい言葉に聞こえるでしょう。その点は、おゆるしください。
私の指導は、このくらいのことを常に言っています。

この後、少し参考例を描いてみます。

こんな風に、してみたらどうでしょうか。



1、右側の山の形を変えて、V字をなくしました。
2、左の紅葉の山を少し削って、単調なカーブではなくしました。
3、少しづつ塊で捕らえて、明暗をつけて、それぞれのボリュームをつけました。
4、雲の形を考えて入れてみました。
5、川を右側に抜けるようにしました。(回り込みをやめました)
6、近景の石や草をリズムを考えて入れてみました。

こんな風にしたら、自然さがでるかなと思います。
もう一つのアイディアは、右側から大きな木を手前に入れてみるのも、構図を良くする方法ですが、後で、やってみます。




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次の指導

2009-09-14 | 絵画指導
カサブランカの絵と、赤城山の絵を終了して、次の指導に入りました。

ただし、一からの指導ではなく、今まで描いた絵をなんとかしたいという希望に答える形での指導です。
今日は、この絵について、指導しました。

まず、本人のお話では、

   1、構図がいいと思った。
   2、紅葉がきれいで、描きたいと思った。
   3、遠くの風景は、V字にしたので、かっこいいと思った。
   4、空には、飛行機雲があって、いいと思った。

仲間に言われたことは、

   1、どちらからどちらへ流れている川か?と問われた。
   2、細かく描き過ぎるので、もっと大雑把に描くように言われた。
   3、黒を使うなと言われた。
   4、V字がある方が、かっこいいと言われた。

ーーーーーーーー

以上のような、ことでした。

私は、それを聞いていて、絵とは関係ないことで、いろいろなことを気にしているなあと思いました。気にしなくてもいいことを気にして、気にしてほしいことが、気にされていないと感じました。

ーーーーーーーー
まず、どちらが上流かという問題ですが、どちらが上流でも問題ありません。それが問題になるような絵ではありません。
構図によっては、わからないとまずいかなという場合もありますが、この場合は、川に見えれば良いと思います。場合によっては、池でも構いません。

この場合は、むしろ右端の川の水が溢れそうになっていることの方が問題でしょう。お風呂の水が溢れるような感じになっています。池にしても川にしても、これは不自然な感じがします。

ーーーーーーー
細かく描き過ぎるので、もっと大きくつかむということは、描き過ぎる人には、注意することはあります。大きくまとめるということは、大切なことです。

しかし、それを聞いて、いつでも太い筆で水をたくさんつけて描くものだから、細かい表現ができません。細部を描かないと感じが出ない物もあるのです。それを細かく描いてはいけないと思っていたら、いつまでたっても、それらしくなりません。
たとえば、岩の感じを出したいと本人は言います。それを太い筆で、水をたっぷり含ませて、ぼたっと着けていては、いつまでたっても、岩のひび割れは描けないでしょう。

  言われたことを、まちがって受け取っているのです。

「黒を使ってはいけない」と言われたということも同様です。黒と白を混ぜて灰色ができますが、色の彩度を落とすには、灰色を入れなければならないのです。それを黒を使うなと言われたものだから、どこもかしこも派手な色になってしまうのです。

専門家絵具を買いに行くと、中間色を売っていますから、その分、少しだけ彩度の落ちた色が使えますが、その中間色というのは、灰色が混ざっているのだということを知らないようです。例えば、ラベンダーという色は、青紫に明るい灰色が混ざった色です。
このように、中間色は、灰色が混ざって彩度が落ちているのです。それを理解する必要があります。

明るい色は、紙の白さを使うという淡彩画の技法しか知らないと、このような勘違いをするのです。本人は、本庄第一の生徒さんのように描きたいと言います。それなら、淡彩画のやり方では、永遠に描けませんと話しました。

ーーーーーー

「明るい絵の具を上から乗せるんですよ」と説明したら、驚いていました。
そして、自分がやると乗らないというのです。
それは、水をたっぷり付けて、パレットで薄くのばして描いているからで、その方法では、描けませんよと話しました。

水分を控えて、べとつくくらいの状態にして、下が完全に乾いてから描かないと上から描いても描けませんと説明しました。
すると、「じゃあ、油絵みたいに描くのですか?」と言いました。
私は、「そうです」と答えました。

しかし、本当は、油絵みたいにべとべとではありません。やはり水彩の技法です。
しかし、絵具が着かないと話にならないので、どのくらいのべとべとかは、言葉では説明ができません。塗ってみて、乾いても下の色に食われない状態で、丁度よく着くべとべとです。その感じは描いてみて習得しなければなりません。

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V字がかっこいいということについては、私は理解ができません。
かっこいいでしょうか?
私はむしろ、V字を避けて描きたいくらいです。
山で、残雪のある谷を描くときには、必然的にV字が現れますが、その場合でも、12一重にならないように、気を付けて描きたいと思います。V字の繰り返しが単調になりがちだから、それを避けるように、残雪の形で変化をつけて、形のリズムを考えたくなります。
だから、V字があった方が、かっこいいと周りの人たちから言われるので、わざとV字を作りましたと言った言葉が、とんちんかんに思えました。

ーーーーーーー
むしろ、V字を避けた方がいいのではないですかと言いました。

今日のやりとりでした。

この絵についての、詳しい批評は、後で書きます。










 
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