商社マン-東京→ニューヨーク→東京→Liverpool→東京→Ann Arbor→Austin日記

07年8月から5年間NY、帰国して2年半東京、その後何故か英国Liverpoolに。。引き続き思った事書いて行きます。

「The Color Of Water」 by James McBrideを読んで

2007-10-04 12:52:27 | Weblog
ちょっと前読んで、感想を書こうと思って忘れていた。通常はそういう場合なんとなく何も書かずに終わってしまうのだが、この本は大変感動したので記録にとどめておくことにする。

この本、10年前に出版された本らしく僕はStrandで10周年記念Editionを偶然手に入れた。サブタイトルの「A Black Man`s Tribute to His White Mother」という部分に、「これはなかなかドラマ性がありそうだな」と惹かれたからだが、買って本当に正解。感動しました。簡単にいうと、黒人社会の中に入り込んで、二人の黒人男性と結婚し12人の子供を生んで、そのすべての子供が実社会でかなりの成功をおさめている、という女傑の話(そしてその息子である著者の話)なのだが、1920年代に生まれた白人女性が、たとえそれが白人の中では若干虐げられていたユダヤ人であっても、黒人と結婚して生活した、そして子供も育てた、という人生の苛烈さを知り深い衝撃を受けた。差別というものが裏に潜んでしまった21世紀と比べ、やはり昔は構造が単純なだけあって当事者になったら直接的に毎日きつそうですね。普通に町を歩いていて罵倒されたりするんだもんね。。

この本で後興味深かったのは、このお母さんが何で黒人に惹かれるようになったかという過程で、やはり家庭の事情というのも大きく左右しているという気がしたことですね。父親が異常なほど権力が強く、それに何とか反発し、白人的なもの、ユダヤ的なものから逃れようとする中で、まったく間逆な黒人社会に惹かれたのではないかとそこはかとなく思ってしまったので。

もうひとつは宗教の力。この女性は一度結婚した男性とは死別し、さらに結婚した男性にも死なれてしまい、12人の子供を抱え途方にくれるわけですが、そういう厳しい人生の中で何が救いになったかというと神なんですね。何が起こっても、自分の身がどうなろうとも、最後は幸せになれる、というか自分に起こったことと、幸せとは直接的には関係がないんだ、という達観した感覚に近づくための触媒として「神」という存在があるように感じました。そういう感覚って少なくとも僕はまったくないですね。たぶん普通の日本人はないのではないでしょうか。

この本、大変よい本だな、と思ったらアメリカでは二百万部以上売れているらしいですね。確かにその価値があると思います。日本で見た記憶がなかったので調べたら昔「白水社」で翻訳が出版されているらしい。でもどう考えてもすごく売れた形跡はないですよね。。
ふと思ったけど、日本で「黒人文学」というものに対する認知度は圧倒的に低い気がする。米国の白人作家だといくらでも思い浮かぶけど、黒人作家で有名な人ってあんまりいないような気が。。その辺のところも考察してみると面白いかもしれないですね。

コメント
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