(前回からの続き)
前述のように、新興国の立場から脱して先進国―――高い付加価値を創出できる世界的な自国資本を有する国々―――に近づけたのは、歴史的な経緯、および地理的な近さなどから、日本の手厚い支援を得られた中国や韓国くらいでしょう。欧米諸国のサポートがあってもよさそうなアフリカや中南米諸国には、これに当てはまる大企業等が見当たらないこと(ってことは、これらの国々は欧米に搾取&利用されっぱなしということ?)からも、日本が中韓両国を含むアジア諸国の経済発展にいかに貢献してきたのかが分かるというものです。
とはいえ、中韓両国もまた、まだまだ新興国的なところがある(先進国にはなり切れていない、というか正確には「日本」にはなり切れていない)わけです。中国は引き続き実質的なドルペッグ制を維持しているし、韓国だって中銀HPのトップに「公的外貨準備が4037億ドルあります(昨年12月時点)、外貨準備高は世界第8位です(同11月末)」なんて看板を掲げていて、要するに両国とも自国通貨の価値を米ドルによって裏付けてもらっています。この点は本稿2回目で書いた「ドル≧新興国通貨(人民元、ウォン)」ということで、この状態が続く限り、「円>ドル」という本来の(アベノミクス円安を選択しなかった場合の)わが国の目から見れば中韓両国の成長は日本に及ばず、それらの通貨等にはとても投資できないということになるわけです。
加えて両国は、肝心の国民を豊かにすることに失敗しています。その象徴が、中国の場合は「農民工」と呼ばれる人々の存在。農民工についてはこちらの記事を含めて何度か書いているので詳細は省略しますが、昨年末時点で、農民工の人数は前年比で1.7%増の2.9億人にもなっているといわれます。彼ら彼女らは大資本の下請けとして搾取され、権力層はもちろん、都市住民と比べてもはるかに低い生活水準・資産水準に留め置かれるなど、戸籍差別が厳然として残るなか、共産国家すなわちプロレタリアート(労働者階級)が主役であるべき国の国民とは思えないような不平等極まる扱いを受けているわけです・・・
韓国の場合は、家計が完全な債務超過に沈んでいます。韓国メディアによれば、昨年4~6月期時点の家計債務総額は1493兆ウォン、ドル換算(1ドル1125ウォン)で1.3兆ドルあまりと、同国が誇る(?)上記外準額を大きく上回るスケールに膨らんでいます。であれば、今後不可避の(?)世界金融危機において、韓国では通貨ウォンがドル等に対して暴落し、これで借金返済負担が急増する家計の多くが破綻することでしょう。したがって、同国としては、ウォン売り浴びせという市場の攻撃に対していまから備えを厚くしておきたいところ、その最強の選択が日韓通貨スワップになりますが、さて、どうなりますか・・・?
・・・といったように、中韓両国は新興国の立場からテイクオフしつつある半面、自国資本(経営者・株主等)を厚遇し、国際収支を良くすること等を過度に優先した結果、一般国民の多くがこのように「置いてけぼり」にされてしまっています。これではいくら、世界的企業がいくつも誕生しました!と胸を張ったところで、やはりいつまでも新興国―――少数の特権階級だけが発展の恩恵を享受する国―――の地位から抜け出せないような気が・・・