報道によると、安倍首相は先日開かれた経済財政諮問会議で、携帯通信料の家計負担の軽減が大きな課題だとして、高市総務相に対して料金引き下げの検討を指示した、と甘利経済再生担当相が明らかにしました。甘利氏によれば、同費用の家計支出に占める割合が上昇しているうえ、携帯電話3社体制が固定化し、競争原理が働かなくなっている面もある、と首相が指摘したとのこと。これを受けた総務省は年内中に検討内容をまとめると約束したようですが・・・
TVニュースもあまり見ないし、こちらの記事等に書いた理由から新聞の定期購読をしていないわたしにとって、携帯(スマホ)のインターネットは情報の命綱。なので事由の如何を問わず、その料金が安くなること自体は大歓迎です。したがってこのたびの首相発言を受け、携帯電話各社が料金値下げに動いてくれたら・・・なんて期待する気持ちも正直、あるわけです。
しかし・・・それでも上記指示には違和感を覚えます。なぜならこれは首相自身の政策の方向性と矛盾するからです。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」は、インフレ目標年率2%程度を標榜するとおり、物価を意図的に引き上げて経済を活性化しようという狙いを持つもの。実際、アベノミクス推進者(安倍政権・黒田日銀)は、日銀の「異次元緩和」で円安を誘導し、ほぼすべての財やサービスの原価に含まれる輸入原材料の円建て価格の上昇を促すことでインフレを起こそうとしてきました。で、その成果(?)ですが、こちらの記事等で示したように、数ある物価のなかでもよりによって光熱費(企業や家計の電気代やガソリン代など)および食費の値上がりに顕著に表れています・・・(って、これを喜んでいる国民って、どれくらいいるの?)
で、ここで上記の首相指示に対して疑問が湧くわけです。インフレ率を高めるため、上がっては困る生活費ランキングがあればおそらくトップ2であろう光熱費と食費さえも意図的にこれだけ引き上げておいて、この2つよりも明らかにランクが低位の携帯通信料はどうしたら下げようという理屈になるのか?ということです。そこが異次元過ぎて(?)理解できない・・・
先日も書きましたが、円安インフレが浸透した現在、日本国民のエンゲル係数(生活費に占める食費の割合)はここ20年来で最高水準にあるほか、サラリーマンの小遣いが1979年以降で2番目の「低さ」に落ち込むなかで昼食代だけはアップしています(新生銀行調査:男性会社員の平均昼食代は昨年541円⇒今年601円に上昇!)・・・。わたしたちの日常生活において食費(や光熱費)が増加したらその分だけ、趣味や娯楽などの他の用途に回せるおカネが減って生活のゆとりやうるおいは当然、失われます。そこまでして安倍首相はインフレを起こそう!というのに、いっぽうで携帯料金は下げよ!では筋が通らないのではないでしょうか。