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日銀の金融緩和は万能薬にあらず③

2012-05-05 00:01:51 | 日本

(前回からの続き)

 さらに個人的に気になるのが、金融政策のインフレ目標値を引き上げようという意見があることです。一部の政治家、経済学者やアナリスト、さらに次期選挙用マニフェスト原案を4月9日に発表した自民党などは、インフレ目標を現行の日銀の1%よりも高い2%(あるいはそれ以上)にするべきと訴えています。

 個人的には金融緩和によるインフレ目標値は当面は1%くらいを上限にすべきと考えています。なぜならばインフレ率が1%ならば実質金利(=名目金利-インフレ率)がほぼゼロ%になると推測されるからです。

 以前にも書いたように、欧米諸国の実質金利は軒並みマイナスになっています。つまりお金の価値が受け取った瞬間からインフレで減っていく状態です。貯蓄をしても受け取り利息よりも物価上昇分が大きいため、お金の価値の目減りを防ぐためには、いまそのお金で何かを買うか、預貯金よりも利回りのよい株式等で運用するしかありません。わずかな預貯金しかなく普段の生活を切り盛りするだけで精一杯という一般の市民にすれば辛い経済環境といえます。

 これに対してわが国は現状の実質金利が約1%(=長期金利1%-インフレ率0%)でわずかながらのプラス。この状態でインフレ率を2%以上にすれば当然実質金利がマイナスとなり、外貨と同様、円の価値も時間の経過とともに減少していくことになります。そのため、わが国の市民も欧米市民が苦しんでいるような物価高のネガティブな影響をより強く受け始めることになるでしょう。実質金利をマイナスにするほどの過度の金融緩和にはインフレを強める懸念があることを肝に銘じるべきでしょう。

 さらに、景気が良くない中でインフレ率だけが高くなると、長期金利もそれにつれて上昇するとともに、国債の価格が下落していくはずです。そうなれば、大量の国債を抱えているわが国の金融機関が多額の評価損を計上せざるを得なくなるなど、金融システムが不安定になるおそれもあります。こうした事態を防ぐ意味でも実質金利がマイナスになるほどのインフレ目標は掲げるべきではないと考えています。

 そして消費税の増税議論が山場を迎えています。金融緩和でインフレ率が高まってくるなかでさらに消費税が増税されれば、市民の暮らしは一段と厳しくなるとともに、GDPの約60%を占める個人消費は急激に冷え込み、わが国は本当に景気後退に突入してしまうおそれがあります。こうした事態を回避するため、消費税率アップは、景気に大きなダメージを与えることにならないよう、そのタイミングを慎重に見極めて実施すべきと思います。

(続く)

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