老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

死について

2006-01-29 19:50:36 | Weblog

トロチェフさんの悲報を聞いたせいか、昨年暮れからの鼻風邪がのどにまわって胸まで苦しくなったせいか、死のことを考えた。もちろん世俗的な男であるから死の哲学などではない。いわゆる巷の死の社会学。

大学の友人たちは入学したクラスが40人位で卒業したのが20数人であるにもかかわらずすでに7人も死んでいる。もっとも7人ぐらいいる女性たちは皆ぴんぴんしている。一方、高校のクラス(授業をを共に受けるクラスのことはまったく覚えていない。いつも出入りしていたブラスバンド部のこと)で死んだのは一人である。

大学の物故者一人ひとりを回想してみよう。
猟銃で頭を飛ばした贅沢な男。かれは死ぬ気ではなかったかも知れない。ゲーム感覚でのどに銃口を突きつけ、引き金を足の親指にかけ寸前のところで止めるという遊びをやっていて暴発してしまったのかも知れない。「ロシアで流感に罹り芥子を全身に塗りたくられ、塗りたくった女医さんか、そばにいたもう少し若いロシア女性との恋に破れたことに起因する」という説もあるが、真相はもう分からない。机龍之介を主人公とする作品を書いた作家の甥で、ロシア語が達者で早熟ですぐれた男だった。卒業して5-6年後だったろうか?

アル中で禁酒をしたがやめられず悲観して死んだ男もいた。在学中、かれと飲むとすごい腕力で人の背中を叩く癖がある悲しい男だった。卒業時は就職難の時代で零細企業を転々とした。ある広告会社にいた時わたしのところへ広告をよこさないかと訪れたことがあった。こちらも零細だし、ソ連の本はどう考えても一般的な広告で売れるわけはない。断ってしばらくして自殺した。でも断ったのが原因ではない筈だ。

20年以上、ある大商社のモスクワ駐在員でソ連室長になり、定年退職後ロシアの商売をしようと意欲を燃やしていた男もいた。苦味ばしったハンサムなかれは、すばらしい美声の持ち主でバーのマダムがうっとりと聴き入っていたことを記憶している。冬のロシアの寒さは厳しく、強い酒を飲まざるを得なく、それが習い性となり大酒のみになったのかも知れない。葬式に行くことができず、しばらくたってお参りに行ったとき奥さんは、「医者に止められていたのに夜中2時ごろ部屋を覗くと、コップに注いだウオッカをがぶ飲みしているのですよ」と愚痴をこぼされた。数年前、1月の初めに脳梗塞で倒れ、入院後20日ほど過ぎたある日、血栓が心臓を侵し心不全で亡くなった。伊豆の立派な屋敷に住んでいた。

友の死の顛末はまだ続けるが、こんなことを詳しく覚えている自分が情けない。でも先に死ぬのはいやだ。

 



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2 コメント

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トロチェフ氏に関し…。 (パウロ神父)
2010-03-28 19:44:31
お亡くなりに成る前に生まれて初めて、露西亜巡礼を果たされました。露西亜から戻り程無くして発病。
愚輩は彼が亡くなる数週間前に在って来ています。
翌年に墓参致して居ります。
出逢いに感謝 (hiromi)
2013-05-14 01:26:59
海外ドラマを観ていた折、[死んだ王女と七人の勇者]というフレーズがあったのでこのブログに行き着きました。
まさか白雪姫とは思いもしませんでしたが、とても楽しく読ませて頂きました。
2006年以降の投稿が無い様なのですが、お元気であられますよう。