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カジノ・ロワイヤル公開記念 007シリーズ全作短評 第6作~第9作

2006-12-30 10:09:57 | 過去に観た映画
カジノ・ロワイヤル公開記念と、適当に言い訳して、シリーズ全作を簡単に振返ってみよう・・・
次々と主役交代しながら駄作を繰り返した暗黒時代の6~9作を
迷走篇~レイゼンビー→コネリー→ムーア~

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■■■■■■ →生涯ベストクラス
■■■■■□ →大好き
■■■■□□ →結構好き
■■■□□□ →まあまあ
■■□□□□ →つまんない
■□□□□□ →最悪

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■■■■■□ 女王陛下の007
監督 ピーター・ハント
音楽 ジョン・バリー
出演 ジョージ・レイゼンビー、テリー・サバラス他


実は傑作である。これ一作で降板させられた二代目ボンド・ジョージ・レイゼンビーがボンド役者として魅力があったのかどうかは判断つかない。しかし作品的には優れていたと思う。
序盤は、ポカポカなぐりあう程度のアクションシーンが時々入る程度だったり、運命的に出会ったヒロイン、トレイシーとの純愛デートとかかなりユルい展開である。ブロフェルド役は刑事コジャックでおなじみハゲ俳優テリー・サバラスに変わっている。ブロフェルドの秘密施設に正体を偽って訪れたボンドはブロフェルドと面会し、お互いに正体を隠しながらしばし歓談する。しかし前作で素顔を見せ合い、自慢の秘密基地をボンドに吹き飛ばされたというのになぜ正体に気づかないんだ!?俳優が変わったからなんて言い訳は効かないぞ
それはともかく後半から急に面白くなる。ブロフェルドの基地からスキーで逃走するボンドと、彼を追うスペクターのスキー兵たちのアクション。トレイシーと再会したボンドは彼女の車で追ってを振り切り、農家で一夜の休息するや、そこでもう結婚を決意する。はや。
夜が明けてまたブロフェルドのスキー兵に襲われる。除雪ラッセル車に敵を巻き込ませて、ラッセル車が真っ赤な血を巻き上げるシーンはシリーズ屈指の残虐ユーモアだ。
人工雪崩で大ピンチの2人。トレーシーが連れ去られボンドはトレーシーのパパ(犯罪組織のボス)と奪還に向かう。殺せばいいのにわざわざいい女を自分のものにしようと欲望むき出しにしてボンドに見せ場を作ってあげるブロフェルド。
ブロフェルド基地のカーリングコートをボンドが滑りながら敵を撃ち殺すところはチーム青森の皆さんに見せてあげたい名シーンだ。
その後さらに逃走するブロフェルドはなぜか競技用のボブスレーに乗る。ボンドもボブスレーで追跡。何やってんだお前らと突っ込みたくなる暇も与えないスピード感あるクライマックス。
ほんでもってボンドとトレーシーの結婚式シーンで、MとQとマネーペニーに溢れる万感の思い。そしてあえなくブロフェルドに射殺され悲しい結末。この敵討ちは第12作まで持ち越されることになる
後半の怒濤の展開とかなり気合いの入ったスピーディーなアクションとラストの物悲しさとの対比が素晴らしく、主演の地味さとは裏腹にかなりの傑作に仕上がっている。ゴールドフィンガーから女王陛下までが007第一期黄金時代と言っていい


■■□□□□ 007 ダイヤモンドは永遠に
監督 ガイ・ハミルトン
音楽 ジョン・バリー
出演 ショーン・コネリー他


007の最高傑作はゴールドフィンガーさ!と信じて疑わなかったプロデューサがゴールドフィンガーの主演・監督・主題歌ヴォーカルの布陣に戻して作った作品。ゴールドフィンガー以上のスケールのでかいストーリー(スペクターがレーザー光線衛星を使い米中ソの核ミサイル基地を攻撃し武装解除を迫る)オープニングのアクション、巨大基地爆破のクライマックス・・・とシリーズを面白くする要素が全部詰まっている筈なのに、嘘みたいにつまらなくなってしまった不思議な作品。原因は一作休んだ間にでっぷりしちゃって精悍さのなくなったショーン・コネリー・・・だけではない。
監督のガイ・ハミルトンがダメなのだ。この人たしかに「ゴールドフィンガー」は傑作だったしだからこそプロデューサの信頼を得て「ダイヤモンドは永遠に」から3作連続で監督を務めるにいたったのだが、その3作がシリーズ屈指の駄作となってしまった。テンポは悪く演出はダイナミズムにもスピード感にも全く欠けているし、わくわくさせるようなアイデアも持っていなくてアクションシーンも全般退屈。ようするに「ゴールドフィンガー」はまぐれだったのだ。
ガイ・ハミルトンは007シリーズの他に「ナバロンの嵐」(「…の要塞」の続編)、「空軍大戦略」(イギリスとドイツの空軍の戦いを描いた戦史もの)などを監督しているが、どちらもやっぱりダラダラとした展開で、特撮シーンがウリなだけの映画になってしまっている。


■■□□□□ 007 死ぬのは奴らだ
監督 ガイ・ハミルトン
音楽 ジョージ・マーティン
出演 ロジャー・ムーア、ヤフェット・コットーほか


ついにコネリーが本当に降板となり、実はコネリーより年上のロジャー・ムーアが三代目ジェームズ・ボンドを襲名。その襲名披露作がぬるーい駄作となり、前途不安な三代目であった。
ブードゥー教の呪いだの予知能力美女(処女を失うと力を失うというかなりバカバカしい設定)だの、オカルトチックなクライマックスになだれ込むトンデモな展開を見せ、ポール・マッカートニーの主題歌もミスマッチで空回り気味。
今回のボンドの秘密兵器は、超協力磁石内蔵の腕時計。ワニが溢れかえる池の真ん中にある小島に取り残され絶体絶命のボンド(敵もなんだってそんな回りくどい殺し方をするのだろうか?)は、岸につけられたボートを強力磁石で引き寄せる。脱出できそう・・・と思わせて、ボートはロープで岸に繋がれていたため途中で止まってしまうというオチ。じゃあボンドが腕時計ごとボートの方に引きずられていくんじゃないかと心配になる。恐らく凄まじい脚力で踏ん張って耐えていたのだろう


■□□□□□ 007 黄金銃を持つ男
監督 ガイ・ハミルトン
音楽 ジョン・バリー
出演 ロジャー・ムーア、クリストファー・リー


文句なし堂々のシリーズワースト作。初めて観た時あまりのつまらなさに愕然とし、あれは何かの間違いだったのだと改めてTV放送で吹き替え版(ロジャー・ムーア:広川太一郎)を観たがやっぱりつまらなく、さらにそれから10年後くらい、つまり最近になって、大人の目で観たら面白いのかも・・・と見直したらやっぱりどうしようもない駄作だった。意外と三回も観てるのはくさっても007だから・・・
オープニングアクションはなぜかボンドではなく、黄金銃を持つ男スカラマンガの活躍シーンである。演じているのがクリストファー・リーなのが救いなんだか笑えるんだか。
スカラマンガの執事は、身長1mちょっと、3~4頭身くらいのウィローみたいな奴だが、そいつがスカラマンガを殺して遺産を独り占めしようと殺し屋を送り込む。絶体絶命のスカラマンガ!!ってなんで悪役のピンチにハラハラしなきゃならんのだろう。しかも戦いの場所が遊園地のビックリハウス程度のしかけのいかにもちゃちな家。段差1mくらいの階段を降りたところにある黄金銃を取りたいスカラマンガだが殺し屋が待ち伏せしている。スカラマンガがボタンを押すと階段がパタンと折り畳まれスロープになり、彼はそこを滑って降りる。・・・1mくらいだよ。走ってジャンプすりゃいいじゃん!!
殺し屋を仕留めたスカラマンガはなぜか室内に飾ってあるボンドの蝋人形に自慢の黄金銃を撃ち込む。
こんなに顔が知られていてスパイを続けられるのか?ミスター・ボンド・・・
恐らく、この一見意味不明なオープニングは、「ロシアより愛をこめて」のオープニングへのオマージュなのだろうと解釈。それにしてもぬるい演出をみせる、四作目のガイ・ハミルトン。
さて我らがジェームズ・ボンドはスカラマンガからの挑戦状を受け取る。ついでにソーラーエネルギーを巡る陰謀とかが絡んでたりしたが、その変はけっこうどうでもいい。ボンドはマカオや中国やタイやその辺りでスカラマンガを追うのだが、アクションらしいアクションもなく、ほんとうに飾り程度のボンドガールとのやる気のないロマンスを見せる。
いちおうカーチェイスシーンで、コークスクリュージャンプみたいのをして川を渡るという見せ場はあるが、長~い作品の中で見せ場らしい見せ場はそこくらい。
ついにボンドVSスカラマンガの対決はオープニングと同じビックリハウス内。子供だましな仕掛けにことごとく引っかかり大ピンチのボンド。情けなさ過ぎるぞ!!
しかし我らがボンドはスカラマンガが飾っていたボンドそっくりの蝋人形に化けてスカラマンガを待ち伏せ射殺。逆転勝利・・・はいいのだけど、そんな罠に引っかかるなよ、黄金銃を持つ男さん・・・。このシーン、香港のバリー・ウォンが演出していたら、石膏像に化けるため全身粉まみれになるボンドとか、黄金像に化けるため全裸金粉まみれになるボンドとかが見れただろうに、ガイ・ハミルトンはほんとぬるい。
その後、お決まりのように基地が大爆発しボンドとボンドガールが間一髪脱出となるのだが、手下が一人しかいないスカラマンガだから無人の基地がちゅどーんちゅどーんと爆発し、なんか寂しい。
このころのボンドシリーズではクライマックスの後のエピローグで、やっつけそこねた敵の殺し屋とか、逃げていった敵のボスとかが襲ってきて、ボンドがやっつけるという、クライマックスの後もう一波乱加えるのがお決まりだった。本作でもそのパターンを守り、エピローグでは4頭身の執事が襲いかかってくる。いくら殺しの許可証があるといえさすがに大人げないと感じたボンドは、殺さずにお仕置きだけして後はボンドガールとイチャイチャの続きを楽しむ。
すでにテンション下がりまくっていた作品に留めをさすような脱力アクション。

最初から最後までいいところほとんどなしの、目が冷めるくらいの駄作っぷり。語ると楽しいが、観てると死ぬほど退屈な救いようの無い超失敗作。話のタネに一度くらいは観ておくことを薦める

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ショーン・コネリー篇~クールなスパイが気がつくとバカ騒ぎ~(第1作~第5作)
迷走篇(第6作~第9作)
ムーア充実篇~アクションシーンはスタントマンに、ベッドシーンは自分で~(第10作~第14作)
ティモシー篇~消されたのはライセンスだけではない~(第15作~第16作)
ピアース篇~そしてどんちゃん騒ぎへ~(第17作~第20作)
第21作 カジノ・ロワイヤル 映評


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