アメノチハレ

豆腐一丁の賄い


冷奴は好物である

ちりめんじゃこや みょうがや 大葉や 
多めの薬味もいいが
シンプルに葱と生姜と鰹節をのせて醤油がいい

美味い豆腐は豆の味がよくわかる

上京へのきっかけを模索しながら
広島時代 ピアノの置いてある洋食レストランで
弾き語りのバイトをしていた頃

ジャケットを着てピアノを弾く者
長靴履いた厨房の見習い達
そしてシェフや支配人も
そこで働く誰もが まかないとして
同じ釜の飯をいただく 

一枚の大きめの洋皿に
各自が米は好きなだけよそい
その横に豆腐一丁とめざし一本をのせたもの

今で言うワンプレート飯だ

それに醤油をかけたものが 毎回のまかない飯だった



最初は鬼のように寡黙で怖かったシェフとも
まかないの時間に少しずつ打ち解けて話をするようになり
やがて「音楽」というキーワードで
別人のように気さくなおっちゃんに様変わった

今は料理の仕事をやっているが
自分も音楽好きで楽器を弾くのが好きでと
とりとめのない話に花が咲いた

当時は独り住まいで電話もなく
そのレストランを自分の連絡先にさせてもらいながら
東京の事務所やレコード会社にせっせと
デモテープを送る日々 

弾き語りをしながら
今日か明日かと
来るかどうかもわからない東京からの返事を待っていた

運良く上京が決まり 最後のバイトの日 

「応援してるぞ 東京行ってもがんばれよ!」
と 鬼だったシェフが終いには
似合わない涙目で一番喜んでくれた

冷奴といったら真っ先にその 
まかない飯とシェフが浮かぶ

さて 

今夜も好物の冷奴をいただくわけだが
もうその話何回聞いたかわからないと
言われないよう

今夜は黙って静かに食おう
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