Straphangers’ Room2022

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LRTはなぜ志向されるのか

2013-02-09 10:12:00 | 交通
気仙沼線のBRT化に対して、鉄道での復旧に拘泥することを批判した際に、バスではダメだ、という意見を、条件があっていない比較ではと批判しました。

それに対するご意見として、米国のLRT推進団体の論文のご提示を頂きました。
http://www.lightrailnow.org/facts/fa_brt_2006-08a.htm

英語はあまり得意ではないのに、いきなり長文の英文とあって面食らいましたが、ありがたいことに最近は単語にカーソルを合わせると訳(怪しいのも含めてでてくるので取捨選択が大変ですが)が出るわけで、ざっと目を通してみました。

一言で言うと、バス嫌いは心理的なものだから鉄道だと思って使え!という当局の誘導があっても、結果は鉄道志向という明白な結果が出ている、という批判です。

確かに論文上の各都市での結果は出ています。そういう意味では軌道系交通の整備のほうが効果が高いという結論になるでしょう。ただし、「同じ条件」という意味で見たとき、提示されている事例の多くは、論文中の写真で見る限り、輸送力的に日本で言うところのLRTのカテゴリーよりも、近郊鉄道のカテゴリーに近いわけです。

BRTの弱点として挙がっている理由にバスの輸送力不足(団子運転)があるように、輸送量に応じた交通モード選択の段階で軌道系交通にアドバンテージが見られますし、LRT整備による輸送改善(従来のバスにおける輸送力不足がLRTになって適正化された)が評価されることでシフトが進んだというは、BRT整備に無いャCントであるという評価も可能です。

鉄道のほうが「上位」と感じる心理的要因を除去すればBRTは利用される、という主張を否定しているわけですが、ではなぜ同じ条件で鉄道志向が生じるのか。私の読解力不足なんでしょうか、あくまで「結果論」としての志向であり、その志向に対する明快な分析が見られないような気がします。

もちろん、公共交通シフトを期待する時に、「利用者の心理的要因を考慮して」軌道系交通を選択したほうが効果が高い、というのであれば、軌道系を選択する大きな理由になるわけですし、この論文がそれを示し得るものであれば、重要な素材になるでしょう。

もちろん「同じ条件ならバスは選択されない」という結果が統計的にも認められることを示せることが条件でしょう。成功例を挙げていますが、失敗例がそれを下回るということは示されていませんから。



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2 コメント

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Unknown (一愛読者)
2013-02-09 12:36:43
早速のご批評,有り難うございます。
因みに本来であればせめて抄訳を添えて伺うべきでしたが,私は読破に5日を要したほどで,手に余りました。その点御寛恕下さい。

さて。
>あくまで「結果論」としての志向であり、その志向に対する明快な分析が見られない

ご指摘のとおりです。曖昧な推測は出て来る(路線が明確,など)ものの,具体的ば根拠に基づく指摘は「団子運転になるから」だけですね。その点,私も大いに不満です。


>「同じ条件ならバスは選択されない」という結果が統計的にも認められることを示せることが条件でしょう。成功例を挙げていますが、失敗例がそれを下回るということは示されていませんから。

ご指摘のとおりですが,これは困難だと思います。鉄道をバス転換した事例は枚挙に暇ありませんし,バスが鉄道化した事例も存在しますが,それらの事例では当然,従前の交通モードにおける欠点の除去が行われるわけです。「軌道系優位」或いは「バス優位」という結果は出るでしょうが,それが乗客の単純な好みなのか,それともフリークエンシーや運賃・便数などの改善によるものなのかは判然としません。
この場合,次善の策として行うべきは乗客の意識調査でしょう。軌道系だと利用する理由は何なのか,それは輸送サービスの改善では達成出来なかったのか,それらの検討が望まれる思います。
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Unknown (エル・アルコン)
2013-02-09 22:17:38
一つ言い忘れた大前提として、この「ライトレールナウ」という団体がいかほどのものか、ということがあります。まあテキサス州に拠点を置くまっとうな団体のようですが、交通工学などの世界でどの程度の評価を得ているのか。
日本で言えば、学術論文なのか、市民団体のプロパガンダなのかで評価が相当変わるように、この団体の立ち位置や社会的評価によっては、その信憑性も変わって来ます。
その意味では、タイトル部分の「BRT神話を退治する」という表現を見るに、やや不安を感じないとは言えません...

ちなみに日本語ベースで検索してみるとほとんどヒットしないのが気になります。
もっともこれは日本のこの手の活動のアンテナが低いとか、ガラパゴス的ということによるのかもしれませんが。
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