Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

20年ぶりに価格差を付けるが

2023-10-17 20:36:08 | 交通
そのポイントとアプリの件ですが、EX予約の改悪が一つの契機になっています。
利用の多くを占める法人会員とスマートEXには無縁とはいえ、グリーンプログラムが廃止され、東海、西日本、九州のポイントサービスに移行という大改悪です。グリーン車以外で使える、と両者の宣伝を真顔で信じる人は損得勘定も出来ないわけで、これまで東海道・山陽・九州新幹線でひとかたまりだったポイントが、会社別になるのです。1社完結の区間を使う人はまだマシですが、会社またぎだと半分ずつたまる、ということで、各社に使えないポイントが薄くたまることになります。いわばグリーンプログラムの還元が倍を要する、というような改悪です。

東京と新神戸間の利用だと、これまでは無駄なく積み上がったポイントが、これからは実質新大阪-新神戸は切り捨てのようなものです。1区間だけでたまるポイントなんかたかが知れてますし、首都圏側の利用者から見たらJR西日本専用の特典なんか意味がないですから。最悪なのは岡山から東京とか、名古屋から山陽のようなどっちもたまらない、というようなケース。
まあバブル期の名残で3両つないでいるグリーン車の有効活用でもあったグリーンプログラムですが、ビジネス車両にでもするんでしょうね。7号車をやっつけ仕事で改造していますが、さすがにあれでカネを取るのは酷いので、グリーン車の改造で対応するんでしょう。座席自体は簡素化して、パーテーションとパソコンなどの台を置くという感じで。

あとやはり気になるのは「「みずほ」「のぞみ」が割高になることです。
かつてのビジ回(新幹線エコノミーきっぷ)が「新幹線ビジネスきっぷ」に改組した際に「のぞみ利用券」の購入で「のぞみ」利用を解禁したのですが、ユーザーは完璧なまでに「のぞみ利用券」を嫌いました。というか出張旅費を支出する企業が20分やそこらの短縮で2000円以上の追加などもってのほか、という極めて健全なコスト意識を見せた結果でした。
品川開業と「のぞみ」大増発を控えて「新幹線回数券」として若干の値上げと引き換えに「のぞみ」を全面開放しましたが、それ以降、EX予約の導入と普及のいずれにおいても、「のぞみ」と「ひかり」に料金差はつけませんでした。

今回の措置はその意味では20年ぶりにビジネスユーザーのスタンダードに価格差をつけることになりますが、前回あそこまで嫌われた価格差が受け入れられるのか。今でもアコモに格段の差がある「さくら」志向が強いのですが、今後はさらにその傾向が深度化するでしょう。それでも料金が一緒であれば、まあダメなら「のぞみ」がある、というバックアップ的認識だったのが、これからは「さくら」が取れないと「のぞみ」利用だとアコモは格下で料金は高いという踏んだり蹴ったりになります。

アコモが均質化されている東海道ではここまで酷くはないですが、「ひかり」への集中があるでしょう。ただでさえJRPのインバウンドが集中し、静岡などの中間駅対応、あるいは西明石や相生と名古屋、首都圏を結ぶ直通需要と任務が多いのに、そこに「安い」という絶対的な価値まで加わりますから。

Covid19によるテレワークの普及は、私が想像していた以上に普遍化しており、さらに個人的にもネット会議で十分、逆に出張を考えないでいつでも会議、会話が出来るということで、出張をするまでもなく終わる、というケースが確実に増えています。
そういう流れの中で、出張にかかる企業の経費(旅費)の支出が「値上げ」となれば、本数的に「のぞみ」不可は非現実的とはいえ、山陽区間ではそこまでの本数格差がないので「さくら」推奨も増えるでしょう。そして「のぞみ」利用も含めて、予算順守、さらなるコストダウンが必須ですから、出張回数を減らす方向、すなわちネット会議の更なる推進が当たり前になるでしょうね。

さらに言えば、それは値上げ分のカバーなんてチンケな話ではなく、絶対数と絶対額を減らすことで目に見えるコストダウンにつなげ、企業の競争力を上げていくという流れです。そうなればそれがスタンダードになり、元には戻りません。
そりゃたまには面着となるでしょうが、回数は確実に減ります。コミュニケーションという意味ではネット会議で画面越し、スピーカ経由とはいえ、顔も見れるし声も聞けますから。これ、帰省需要にも影響しており、IT機器に疎いはずの地方在住の高齢者がこうしたツールを使うことで、盆暮れの帰省時だけしか会えないのではなく、思い立ったらすぐに「会える」ことに気が付いたわけですから。


意地でも便利と快適は与えないというスタンス

2023-10-17 20:34:52 | 交通
京都府知事がCovid19からの回復による観光客の急増に対し、JR西日本がCovid19を理由とした減便、減車のままであるのを回復すべしと要請しました。特に嵐山を控えた嵯峨野線は顕著ですが、減便減車からの回復に関しては腰が重く、さらに特急を嵯峨嵐山に停車します、という斜め上の対応です。嵯峨野線の特急は全車指定席ですから嵐山から二条や京都まで一体いくらかかるのか。JRP利用のインバウンドなら大丈夫と思いきや、大幅値上げでインバウンドに使わせまいという方向に舵を切っており、施策に整合性が全くありません。

やってることは嵯峨野線の嵯峨嵐山への特急停車のほか、有料着席サービスの拡充と、まさに銭ゲバです。さすが大阪商人、と言いたいところですが、なにわの商人(あきんど)はそこまで汚い商売をしませんからね。客も目が肥えていますから、そんないかさま商売にはなびきません。「うれシート」のような仕切ってカネを取ります、というような商売は冗談やおまへん、というわけで、京阪のプレミアムカ―など錢を取るにたるサービスが大前提です。

嵯峨野線も昔のイメージだと市街地を行く単線の非電化路線でしたが、いまでは複線電化の幹線です。増発、増結余力は十二分にあるわけで、ここで増発、増結しなければいつどこでやるんだ、というレベルです。
転クロガー、と事業者無謬が騒ぎそうですが、通勤輸送に耐えているわけで、混雑が激しく見えるのはひとえに「ケチっている」だけの話です。詰め込みがうまくいかないからサービスレベルを下げます、という呆れかえる流れを擁護する発想もまた厳しく指弾されるべきものです。

そもそも221系のアコモ改造車はラッシュ耐性に留意しており、ドア間の座席を1列無くしましたが、扉間のバランスは二の次で単純に外したため、立客スペースが非常に広くなっています。いわば座席区画と座席無しスペースの両極端になっており、収容力はかなり高いです。一方でそれでも詰め込みで対応しようと悪あがきをしているわけで、京都地区に阪和線の223系2500番台車を転属させています。これまでの2+2の転クロが、1+2になっており、立客スペースが大幅に広がり(ただし座席数は10人の大幅な減少)、詰め込む気マンマンな車両が転属されています。

嵯峨野線や奈良線といった観光客対応が急務な路線を控えた京都地区への詰め込み車両の転属は、もうあからさまにも程がある、という感じです。あおりで比較的足が長い湖西線や草津線にも同車が回ってきていますし、一方でこれを引き抜かなければ転クロ4連を充当できたはずの和歌山地区の各線、特に紀勢線の中長距離列車に227系1000番台を投入して、オールロング2連に詰め込みます、という結果にしています。

余談ですが紀伊半島は特急の本数も限られ、観光地を周遊しようとするとかなりの長距離を普通に揺られることになります。
これでJR東海管内の東紀州側も含めてロング詰め込みですからまあ気が向かないわけで、しかも東紀州はバスも「南紀急行バス」から「熊野古道バス」を名乗る中型ノンステになっており、熊野古道という立ち寄り型、周遊型の世界遺産の観光地に最もふさわしくない対応です。

まあ新快速の末端部減便と接続の悪化など、どこをどうすれば客に嫌がらせが出来るか、ということに腐心しているとしか思えない対応に注力しているとしか思えない事業者とはいえ、ちょっとひどすぎますね。自治体の自覚ガー、とか事業者無謬や忖度メディアが騒いでいますが、「お布施」をふんだくって塩対応どころか廃止というような前科がある事業者が今こうしてこんなザマですからね。「本業」は塩対応で、今更周回遅れでポイントが何倍とアプリを売り出しているようなズレた発想ですし。



ぬか喜びのあとに来る現実

2023-10-17 20:33:39 | 交通
運転手不足を理由にバス転換は出来ないと騒ぐ軌道系至上主義者が多いですが、何のことはない、軌道系も同じ道を歩むというか、軌道系だけにまさに同じ轍を踏んでいます。
島原鉄道、福井鉄道と運転士不足を理由とした減便を発表していますが、50万都市で中核市でもある松山市の公共交通を担う伊予鉄道も減便です。郊外鉄道のみならず、みんな大好きチンチン電車もですからね。そしてついに大手私鉄の一角である南海電鉄も運転士不足も理由に挙げての減便に踏み切りました。

軌道系はそもそも旧国鉄末期、ビジネスモデルとして成立できるか怪しい路線が第三セクターとして「蘇った」のも、乗務員、特に運転士は国鉄OBの再雇用とすれば安く上げられる、というブラックそのものな発想あっての話であり、それを国民が持て囃したのも事実です。20年、30年経って自分たちや子供たちもまた買い叩かれて雇用不安にあえぐ破目になるとは思わなかったんでしょうね。肉屋を支持する豚の末路です。

軌道系交通は大手事業者でもCovid19による流動減を理由に深夜帯を中心とする減便を既に実施していますが、Covid19が一定の流行を見ているとはいえ規制もなくなって人々の行動が元に戻ってきているというのに、こうした減便が元に戻らないのも実は要員不足という面が大きいのでしょう。おそらく今後は遠からずというか近々大手鉄道会社の減便が深度化するでしょうし、また限られた経営資源である運転士を最適配分するとしてローカル線の致命的な減便、さらには廃止も出てくるでしょう。バスの運転手がいないのに、と言っても、その鉄道の運転士がいなければどうしようもありませんから。バス転換も不可能となれば、コミュニティバスのように平日のみ運転、あるいは週3回だけ、といった運転形態に踏み切るケースも出てくるかもしれません。

こうなると軌道系至上主義者が噴き上がったのはまさにぬか喜びなわけで、公共交通を守るためには今以上に積極的に適材適所を進めないといけなくなります。この問題の要諦は運転手、運転士の処遇問題に尽きるわけで、大型2種という汎用性のある有資格者の確保で歯が立たなくなったことがきっかけです。大手や公営交通を中心にいかにして労務費を削減するか、という発想が通用したのは雇用もおぼつかないデフレ期だったからであり、雇用の取り合いとなった瞬間に連戦連敗になっています。

基本的に軌道系交通はラストワンマイルの二次アクセスを前提としているわけで、それが機能しないとなると軌道系交通も先が暗いです、どうしても二次アクセスも閑散線区を中心に整理せざるを得ないとしても、比較的流動が多いエリアを軌道系と並行するようにバスを維持できるのか。限られた資源を有効に使うためにも、バスで十分な輸送量の区間はバス路線の維持をまず考えるべきであり、いわんやみんな大好きチンチン電車の維持のために広域で見ると軌道系が二重三重と重複しているようなケースはまさに無駄遣いです。

あるいは運賃を大幅に上げるしかありません。運転手、運転士に十分な所得を保証しないと雇用で取り負けます。
利用者が困るという声も出てくるでしょうが、交通産業に従事する人もまた利用者であり消費者です。支出も増えるが収入も増える、というサイクルに持ち込むことで、健全なインフレになります。逆に収入を何とか抑えようとしているなかでの物価上昇はスタグフレーションですからね。デフレを人為的に維持して賃金と物価を抑えることで、日本における労務コストは途上国並みに下がりました。それでもデフレが続く間はゆでガエルのように低収入ながら低物価でやっていけたのが、物価がコントロールできなくなった瞬間に牙をむいたわけです。

物価と収入が国際平価に向けてともに上昇しきった時点でインフレも沈静化しますし、購買力も回復します。物価が高く見えるが収入も高いという諸外国と同じようになります。為政者も国債の返済額が実質減少するから悪くはないはずですが、名目所得の上昇はとにかく困る、という勢力がいるようです。