Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

時すでに遅しではあるが

2023-04-12 20:15:23 | 時事
宮古島での陸自ヘリ墜落事故で陰謀論が花盛りなのは、情報開示の問題もさることながら、台湾牽制のために実施された中国軍の演習(台湾包囲作戦)での主力艦艇や航空機の沖縄本島と先島諸島間の通過がほぼ同時期だったことも大きいです。

この演習、中国海軍の空母「山東」が参加し、艦載機の発着訓練を行ったことが話題になっていますが、中国が本格空母の保有、運用に至っているというのは正直脅威です。空母の保有、運用は戦後米国の独壇場であり、西側ではそれに次ぐ規模の海軍力を持つ英国も空母を保有してフォークランド紛争に投入していますが、満載排水量で2~3万トンレベルの軽空母だったこともあり、米国レベルの空母機動部隊の運用とは程遠いものでした。フランスなど空母保有国も同レベルの軽空母でしたが、東西冷戦下、ソ連が就航させていたヘリ空母と巡洋艦のミックスのようなキエフ型は米国はもちろん西側諸国の軽空母にも至らないレベルでした。


(横須賀での米空母)

それが東西冷戦終了後、1990年代にロシアが6万トンクラスの大型空母を保有し、フランス、インドも4万トンクラスを導入。英国は6万トンクラスと「本格空母」になっています。またイタリアが2万トン台後半の空母を保有していますし、日本もいずも型を事実上空母として運用できるように改造中であり、イタリア同様2万トン台後半の軽空母を保有、運用することになります。
こうしたまさかの「軍拡」の鍵を握るのがやはり中国で、ロシアがウクライナに移管した空母(ロシア同様6万トンクラス)を譲受して設計から運用までのノウハウを取得したことで一気に建艦計画が拡大し、7万トンクラスの「山東」が就航し、さらに8万トンクラスの「福建」が艤装中と、中国の採算度外視の生産力を考えると米国並みの空母部隊を整備することすら視野に入ってきています。

特に「福建」はスキージャンプではない完全な全通甲板となっている「本格空母」であり、大戦中までは事実上米国と日本だけが本格空母による機動部隊を運用していたのに対し、戦後は遂に米国のほか中国だけが本格空母による機動部隊を運用するに至ることになります。
この急激な周辺事情の変化を考えると、日本のいずも型の改造も遅きに失したというか、ひゅうが型も含めて軽空母として運用できるようにしないと日本の生命線ともいえるシーレーン確保や、場合によっては離島(尖閣だけでなく小笠原も)の確保にも黄色信号がともりかねません。それでも軽空母4隻体制であり、大型空母3隻を運用する中国海軍との格差が歴然としています。中国は空母部隊3群を配置できるということですからかなり広いエリアに影響力を同時に及ぼせます。

中国海軍がウクライナから空母を買って、という段階では「どうせ・・・」と高を括る意見が支配的でしたが、結局それを足掛かりに三段跳びのように大型化、本格化を実現しています。中国軍恐るるに足らず、という評価もせいぜい10年代までといえるわけで、電子戦に必須のIT関連ですら対中ビハインドが決定的になっていることもあり、日本の防衛力はいまや「どう凌ぐか」「耐えるか」を真顔で考えないといけない状態かもしれません。空軍力にしてもどうなのか。逆に中国は10年代中盤でも自衛隊の能力を高く買っていて、どうすれば対抗できるか、日本の離島奪還作戦にどう備えるか、とCCTVでも結構報じられていたわけで、残念ながら「謙虚な挑戦者」を歩んできた中国の後塵を拝していることは間違いないでしょう。今回中国当局は演習最終日の「山東」の様子を公開していますが、自信だけでなく実力が無ければ公開なんかしませんから、米国を含む各国にドヤ顔で見せつけられるレベルになってしまったようです。


(離島奪還作戦を気にする・・・背景は習志野演習場での降下始)


(いずも、ひゅうがと対潜能力の解説)


(そうりゅう型せきりゅう進水を報じる)


(余談だが呉のせきりゅうカレー)

侮れない戦力を持つ中国を前に、台湾有事など想定される周辺有事にどう対応するのか。台湾有事が勃発したら米中関係も冷戦どころか「戦争」になるわけで(そうならなかったら日本を守ってくれる保証もなくなるのでさらに大変)、そうなると日本への攻撃も十分あり得ます。尖閣どころか先島諸島を切り取られる可能性もあるわけで(米軍が駐留していないから見捨てるか、あるいは焦土化してでも「島」という地理的ランドマークを守るか)、軽い気持ちで「参戦」している日本は自分のことになった時にどうなるかですね。米国も最後は極東の局地戦で終わらせないと、万が一本土への核攻撃でもあったら最終的に勝ったとしても世論が持ちませんから(かすり傷で国内世論を参戦に向けるという常套手段が犠牲が大きいと通用しないでしょうね)、最悪は日本を犠牲にして手打ちの可能性すらあります。まあ朝鮮半島がどうなるかですが、そこで戦争にすると中国も負担が大きいので、よくて先島諸島、悪くて広義の南西諸島全部を犠牲にするしかないのかもしれません。根室の目と鼻の先にロシアがいるように、鹿児島の目と鼻の先にまで中国が迫る感じです。


(このレベルの海軍力だと思っていたら)

正直最近の中国軍の装備が飛躍的に向上していることへの認識が不足していました。反撃能力の保有問題、また上記のいずも型改造の時も、日本の軍拡ガー、と毎度の批判に対し国民も「なにもそこまで」という感情を抱いているのが真相です。実際にはそれでも間に合わないくらいに、「敵基地攻撃」どころか「防衛」すら危うい現実があるわけです。なんかスルーされた格好ですが、昨夏の中国による台湾近海へのミサイル発射で、波照間島近海の我が国EEZに着弾、という北朝鮮のミサイル発射がかわいく見える事態が発生していますが、さらに中国の軍拡が目に見える脅威になっています。
変な例えになりますが、いまの左翼運動の主力である高齢者が活動家としてブイブイ言わせていた時代の闘争のターゲットだった米空母「ミッドウェイ」「エンタープライズ」にもう1隻(もうすぐ就航)が中国海軍側にあって我が国に睨みを利かせているようなものですからね。


(キャンプ・シュワブ)

日米同盟に基づいて米軍に担保してもらうという従来通りの対応も、実際に米中衝突となるリスクが高まった時にどうなるか。米国民の戦死者を多数出してでも台湾を、そして日本を守るのか。これまで景気よく介入してきたのは鎧袖一触で踏み潰せる、すり潰せる相手だけであり、逆に泥沼化して最後は撤収したベトナムのトラウマは未だ重くのしかかっています。ソマリアでは泥沼化の様相を見せて来た途端に撤退し無政府状態を招きましたし、また2021年にはタリバンに政権を渡してでもアフガニスタンから撤退したわけで、我が国はあの国をどこまで信じていいのか、という覚悟と最悪を想定した予想、対応が必要です。

自主防衛の拡充、充実は必須ですが、軍拡競争をして勝てる相手ではないだけに、非常に苦しい状況です。80年以上前の日本が米国と張り合おうとした時の国力差よりははるかに小さいとはいえ。



「通年感染症」へどう備えるか

2023-04-12 20:13:46 | 時事
Covid19は急性期から慢性化というか、世界にある感染症の1つとなった感じです。インフルエンザも東南アジアだと年中感染するようですし、Covid19も冬季限定でない通年型の感染症としての「地位」を築いてしまったようです。

感染症に限らず疾病については「予防」と「治療」が対応の両輪になりますが、Covid19についてはどうか。まず「予防」については、医療行為としてのワクチン接種と、公衆衛生的な対応としてのマスク、手洗いうがいがあります。「治療」については対症療法とウィルスの封じ込めになりますが、前者は解熱剤からはじまり、酸素吸入など肺炎への対応(最悪は人工呼吸器)があり、後者は抗ウィルス薬となります。

この対応はインフルエンザとほぼ一緒ですが、足下の症状もまたインフルエンザと同等になっています。ただし感染力が桁外れで、これまでありえないと思われていたインフルエンザの封じ込めを達成するレベルでの防疫体制においても流行を見たわけで、完全な封じ込めは極めて難しいようです。ですから個々の感染者レベルをターゲットにした予防と治療に軸足を置くことになりますが、感染レベルを一定レベルに下げるための封じ込めは有効でしょう。

治療については抗ウィルス薬が確立していますが、副作用の問題もあり極端に支給を渋っている状態です。一方で薬価は実は高く、健保3割負担でも1セット3万円という話で、検査料、診察料などを合わせると4万円コースとも言われています。インフルエンザに対するタミフルなどの抗ウィルス薬の登場で、直るのを待つ病気から治す病気になったわけですが、Covid19も早くそうした移行になってほしいです。

問題は予防で、メニューを並べてみると一目瞭然ですが、見事に「反ワクチン」「反マスク」がいるわけで、予防の急所を押さえているあたり、何か意図(他意)があるようにも感じますね。一方で免疫を高めようとかオカルトじゃないですが一種の「民間療法」がのさばっているわけですし。
そして反ワクチンは発狂するでしょうが、通年流行し得るインフルエンザ、という性格が確立したら、インフルエンザと同じ対応になる、つまりワクチンを毎年接種する、ということになります。現在は旅行支援にしろ出入国にしろ接種時期を問わない格好で回数縛りにしていますが、そろそろ丸2年以上最終接種から経っているケースが出てきます。Covid19ワクチンはmRNAという新しいワクチンで、実際に一生効力を有する予防接種もありますが、一般論として効力が薄れるときは来ます。であれば何年かに1回は接種する、という流れになりますし、そうであればそれこそ不活性ワクチンのシノバックのような枯れた技術のワクチンを定期的に接種したほうが身体にも優しい、となるかもしれません。そしてそれはインフルエンザと同じでしょう。

ワクチンをどうするか。mRNAをこのまま続けるのか。一方で上ではシノバックを例えに出しましたが、mRNA以外は有効性が劣る、疑義がある、というのであればmRNAの接種を定期的に継続するしかありません。なお副作用ガー、という反ワクチンの常套句ですが、まず大前提は感染がもたらす被害との比較であり、重大な副作用ガー、というケースは接種の絶対数を踏まえた確率論になります。まあインフルエンザワクチンですらこの手のトンデモが反対運動を繰り広げて来た過去があるわけで(さらに言えば子宮頸がんワクチンは反対運動で接種しない世代が発生し、罹患率に有意な差が発生するという悲劇が起こっている)、学校での集団接種を廃止したことで、子供が家庭に持ち帰ることで高齢者の罹患が増え、超過死亡発生がインフルエンザシーズンに移行したり、ワクチン接種が出来ない乳幼児の感染が増えて脳症による死亡、後遺障害が激増という事実から何も学ばないというかだんまりを決め込んでいます。

残念ながら現状は予防も治療も「自然体」で、しかも「3年ぶり」「4年ぶり」で煽られた国民の感染機会は増加する一方です。
既に生命保険の入院医療特約の適用がなくなり、また選挙前ということもあり負担増はないと毛ばりが下がっていますが、そのうち間違いなく自己負担が発生し、健保があっても数万円単位の自己負担、という流れもあります。

そうなるとまさに「個人の判断」が重要ですし、自己防衛を強めるしかありません。そしてリスク行動を謳歌する、また他人をリスクに晒す行動への忌避というか排除もまた自己防衛として必要ですし、声を上げていくことが必要です。
ワクチンを打っておけば、マスクをしていれば、と後になって悔やんで遅いのです。



デフレマインドでは人は来ない

2023-04-12 20:11:24 | 交通
物流業界の「2024年問題」ですが、結局これもデフレマインドだから「問題」なんですよ。連続労働時間、休憩時間の制約から運行時間に必要な要員が増えるが人材が確保できない、という問題の本質も、ドライバーの数が一定(以下)という前提で話をしていますよね。要は出すものを出したらドライバーの数が増える、という当たり前の話が出来ていません。一足早くこの逆に陥っているのが路線バス業界で、大型2種持ちがより稼ぎの多いトラックに流れて人材確保が出来ず、それで減便、さらには究極の減便である路線廃止に追い込まれているのです。

トラックの場合は荷捌きの問題もあり、本来ドライバーは「運ぶ」だけが仕事なのに、積み下ろしがサービス残業よろしく負担させられているとか、積み込み荷下ろしの時間をピンポイント指定されて遅延は許されないので待機場所もない状態で早着して無駄に回っているとか、依頼側が本来負担すべきコストやリスクを負担していないのを温存して議論しても意味がありません。

要は労働に見合った対価を払わない、安ければいい、というデフレマインドに囚われているわけです。
「官製春闘」ではないですが、最低報酬を決めてもいいんでは? 消費者物価も上がりますが、それに応じて労働報酬(分配)も増える、というプラスのスパイラル並行すれば解消する「問題」でしょう。日本以外ではそんなことはないですから、物価は高いが賃金も高い、というのが多くの国なのに対し、物価も賃金も安い、という日本は輸入に頼っているので、輸入価格の上昇をスタート地点に物価が高騰してしまいスタグフレーションになりますね。賃金も上がりませんし。物価も賃金も上がる方向に持って行かないといけません。その意味でも「2024年問題」と煽る内容にデフレマインドがあるのは問題なのです。

だから路線バス業界もいっしょですよ。運転手不足で、という事業者の大半が非正規や契約社員として安く労働力を買い叩いているわけです。経営者のマインドというのがまた露骨で、どんなベテランでも自社に入るときは初任給で買い叩くのが茶飯事ですから。さらにはそれならもう働かない(地方だと高齢だし田畑もあるしというケースが多い)、という至極もっともな判断をしたら「不良社員にそそのかされて入社しない」と逆ギレする経営者もいましたからね。デフレ経営者も極まれりです。

まあ利用者も路線維持には出すものを出さないといけない、という理解が必要です。物流で荷主の改善が必要なのと同じように。ただ路線バスの場合は路線がなくなれば負担金額が比較にならないタクシーしか移動手段がなくなるとか、タクシーも満足にないとか、利用者を直撃しますから、だったらマイルドだが実効性があるレベルの値上げを受け入れることへの理解は出来るでしょう、いや、させないといけません。自治体がタクシー代を負担、というの福祉的施策として称賛されやすいですが、これも経緯を踏まえるとデフレマインド溢れる政策です。

一つ言えることは、交通の世界、交通論の世界で、我々ヲタもそうですし、専門誌や商業誌、また学会や監督官庁とあらゆるプレイヤーがデフレマインドで行動してきました。そう、原価計算に基づいた認可賃率で運賃を得ていた路線バスに対し、100円均一とか安価な均一運賃を掲げたコミュニティバスを称賛してきたことは、今から振り返ればデフレを定着させる方向性だったということです。都市部で収入の増加が期待できる、幹線系統のフィーダーで幹線と一貫で考えるべき、という路線がはじまりでしたが、公共の補助が前提のローカルバスがそれを始めたわけです。なかにはコミバスの「ダンピング」で既存路線バスが維持できなくなり、コミバスとして自治体が面倒を見る破目になったケースとか、一見安くて便利になったように見えて、実は持続可能性という面では問題だったわけです。

物価高で必要コストが上がるなか、税金からの支出項目もまたあらゆる分野で上がっていきます。収入サイド、すなわち税金を上げるのは租税法定主義もあり困難ですし、交通事業ももともと採算度外視で抑えていた運賃ですから、利用者にとっては大幅でも収支から見たら中途半端な値上げでは到底及ばず、交通よりも必要な支出項目を維持するためには、交通が切り捨て、となるしかありません。

それでも少しでも破局を先延ばしするためにも、値上げで路線を守る、というマインドが必要です。運転手の確保のためには原資が必要ですからね。手っ取り早いのが「ワンコイン」的均一運賃を上げること。300円均一、500円均一というように、近場ではタクシーよりは安い、というラインまで上げて、1人でも乗せれば100円均一と違いそれなりの運賃収入を確保できるようにするのです。長距離であれば500円でも割安感が維持できますし。全国を見渡すと「ちょっと高めの均一」はそこそこありますから。