宮古島での陸自ヘリ墜落事故で陰謀論が花盛りなのは、情報開示の問題もさることながら、台湾牽制のために実施された中国軍の演習(台湾包囲作戦)での主力艦艇や航空機の沖縄本島と先島諸島間の通過がほぼ同時期だったことも大きいです。
この演習、中国海軍の空母「山東」が参加し、艦載機の発着訓練を行ったことが話題になっていますが、中国が本格空母の保有、運用に至っているというのは正直脅威です。空母の保有、運用は戦後米国の独壇場であり、西側ではそれに次ぐ規模の海軍力を持つ英国も空母を保有してフォークランド紛争に投入していますが、満載排水量で2~3万トンレベルの軽空母だったこともあり、米国レベルの空母機動部隊の運用とは程遠いものでした。フランスなど空母保有国も同レベルの軽空母でしたが、東西冷戦下、ソ連が就航させていたヘリ空母と巡洋艦のミックスのようなキエフ型は米国はもちろん西側諸国の軽空母にも至らないレベルでした。
この演習、中国海軍の空母「山東」が参加し、艦載機の発着訓練を行ったことが話題になっていますが、中国が本格空母の保有、運用に至っているというのは正直脅威です。空母の保有、運用は戦後米国の独壇場であり、西側ではそれに次ぐ規模の海軍力を持つ英国も空母を保有してフォークランド紛争に投入していますが、満載排水量で2~3万トンレベルの軽空母だったこともあり、米国レベルの空母機動部隊の運用とは程遠いものでした。フランスなど空母保有国も同レベルの軽空母でしたが、東西冷戦下、ソ連が就航させていたヘリ空母と巡洋艦のミックスのようなキエフ型は米国はもちろん西側諸国の軽空母にも至らないレベルでした。
(横須賀での米空母)
それが東西冷戦終了後、1990年代にロシアが6万トンクラスの大型空母を保有し、フランス、インドも4万トンクラスを導入。英国は6万トンクラスと「本格空母」になっています。またイタリアが2万トン台後半の空母を保有していますし、日本もいずも型を事実上空母として運用できるように改造中であり、イタリア同様2万トン台後半の軽空母を保有、運用することになります。
こうしたまさかの「軍拡」の鍵を握るのがやはり中国で、ロシアがウクライナに移管した空母(ロシア同様6万トンクラス)を譲受して設計から運用までのノウハウを取得したことで一気に建艦計画が拡大し、7万トンクラスの「山東」が就航し、さらに8万トンクラスの「福建」が艤装中と、中国の採算度外視の生産力を考えると米国並みの空母部隊を整備することすら視野に入ってきています。
特に「福建」はスキージャンプではない完全な全通甲板となっている「本格空母」であり、大戦中までは事実上米国と日本だけが本格空母による機動部隊を運用していたのに対し、戦後は遂に米国のほか中国だけが本格空母による機動部隊を運用するに至ることになります。
この急激な周辺事情の変化を考えると、日本のいずも型の改造も遅きに失したというか、ひゅうが型も含めて軽空母として運用できるようにしないと日本の生命線ともいえるシーレーン確保や、場合によっては離島(尖閣だけでなく小笠原も)の確保にも黄色信号がともりかねません。それでも軽空母4隻体制であり、大型空母3隻を運用する中国海軍との格差が歴然としています。中国は空母部隊3群を配置できるということですからかなり広いエリアに影響力を同時に及ぼせます。
中国海軍がウクライナから空母を買って、という段階では「どうせ・・・」と高を括る意見が支配的でしたが、結局それを足掛かりに三段跳びのように大型化、本格化を実現しています。中国軍恐るるに足らず、という評価もせいぜい10年代までといえるわけで、電子戦に必須のIT関連ですら対中ビハインドが決定的になっていることもあり、日本の防衛力はいまや「どう凌ぐか」「耐えるか」を真顔で考えないといけない状態かもしれません。空軍力にしてもどうなのか。逆に中国は10年代中盤でも自衛隊の能力を高く買っていて、どうすれば対抗できるか、日本の離島奪還作戦にどう備えるか、とCCTVでも結構報じられていたわけで、残念ながら「謙虚な挑戦者」を歩んできた中国の後塵を拝していることは間違いないでしょう。今回中国当局は演習最終日の「山東」の様子を公開していますが、自信だけでなく実力が無ければ公開なんかしませんから、米国を含む各国にドヤ顔で見せつけられるレベルになってしまったようです。
(離島奪還作戦を気にする・・・背景は習志野演習場での降下始)
(いずも、ひゅうがと対潜能力の解説)
(そうりゅう型せきりゅう進水を報じる)
(余談だが呉のせきりゅうカレー)
侮れない戦力を持つ中国を前に、台湾有事など想定される周辺有事にどう対応するのか。台湾有事が勃発したら米中関係も冷戦どころか「戦争」になるわけで(そうならなかったら日本を守ってくれる保証もなくなるのでさらに大変)、そうなると日本への攻撃も十分あり得ます。尖閣どころか先島諸島を切り取られる可能性もあるわけで(米軍が駐留していないから見捨てるか、あるいは焦土化してでも「島」という地理的ランドマークを守るか)、軽い気持ちで「参戦」している日本は自分のことになった時にどうなるかですね。米国も最後は極東の局地戦で終わらせないと、万が一本土への核攻撃でもあったら最終的に勝ったとしても世論が持ちませんから(かすり傷で国内世論を参戦に向けるという常套手段が犠牲が大きいと通用しないでしょうね)、最悪は日本を犠牲にして手打ちの可能性すらあります。まあ朝鮮半島がどうなるかですが、そこで戦争にすると中国も負担が大きいので、よくて先島諸島、悪くて広義の南西諸島全部を犠牲にするしかないのかもしれません。根室の目と鼻の先にロシアがいるように、鹿児島の目と鼻の先にまで中国が迫る感じです。
(このレベルの海軍力だと思っていたら)
正直最近の中国軍の装備が飛躍的に向上していることへの認識が不足していました。反撃能力の保有問題、また上記のいずも型改造の時も、日本の軍拡ガー、と毎度の批判に対し国民も「なにもそこまで」という感情を抱いているのが真相です。実際にはそれでも間に合わないくらいに、「敵基地攻撃」どころか「防衛」すら危うい現実があるわけです。なんかスルーされた格好ですが、昨夏の中国による台湾近海へのミサイル発射で、波照間島近海の我が国EEZに着弾、という北朝鮮のミサイル発射がかわいく見える事態が発生していますが、さらに中国の軍拡が目に見える脅威になっています。
変な例えになりますが、いまの左翼運動の主力である高齢者が活動家としてブイブイ言わせていた時代の闘争のターゲットだった米空母「ミッドウェイ」「エンタープライズ」にもう1隻(もうすぐ就航)が中国海軍側にあって我が国に睨みを利かせているようなものですからね。
(キャンプ・シュワブ)
日米同盟に基づいて米軍に担保してもらうという従来通りの対応も、実際に米中衝突となるリスクが高まった時にどうなるか。米国民の戦死者を多数出してでも台湾を、そして日本を守るのか。これまで景気よく介入してきたのは鎧袖一触で踏み潰せる、すり潰せる相手だけであり、逆に泥沼化して最後は撤収したベトナムのトラウマは未だ重くのしかかっています。ソマリアでは泥沼化の様相を見せて来た途端に撤退し無政府状態を招きましたし、また2021年にはタリバンに政権を渡してでもアフガニスタンから撤退したわけで、我が国はあの国をどこまで信じていいのか、という覚悟と最悪を想定した予想、対応が必要です。
自主防衛の拡充、充実は必須ですが、軍拡競争をして勝てる相手ではないだけに、非常に苦しい状況です。80年以上前の日本が米国と張り合おうとした時の国力差よりははるかに小さいとはいえ。