Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

復旧宣言と復旧しない宣言

2023-03-30 21:21:53 | 交通
津軽線の復旧について運営、運行形態の見直しをしないと復旧に着手しないと「人質作戦」を明言したJR東日本に対し、芸備線の復旧について5月末を目途と明言したJR西日本の対応が対照的です。

意外ですがこれまでJR西日本は「人質作戦」は取っていません。もちろん「お布施」のおねだりが度外れており、「お布施」が無ければ放置どころか「お布施」を受けながら改善しないというちゃぶ台返しまでしていますので、お行儀の悪さでは甲乙つけがたいです。
一方でJR北海道、九州は災害復旧を渋って廃線に持ち込んでおり、JR東日本もまた同様ながら、只見線でまさかの反撃を食ったので、自社路線での維持の条件(ハードル)をさらに上げていますね。そしてJR東海はきちんと復旧しています。経営状況の差とはいえ、いかに経営が厳しくとも他人の不幸に付け込むような行動はないでしょう。今後「お布施」を一切おねだりはしない、というのであれば別ですが、おねだりするのであれば、そこには「信頼」が必要です。その意味では「嘘も方便」を地で言って信頼を失ったJR東海のリニア問題は反面教師になります。

それでもJR西日本は西日本豪雨での復旧を何とか果たした後も自然災害での運休が年中行事のように起きていますが、芸備線であれ木次線であれ復旧しています。ただ復旧へのスピード感は遅く、限界利益も確保できない状況ですから動かさないことが最大の収益になるわけで、今回も5月末まで、といっています。
そして西日本豪雨での不通区間でも見られますが、ご大層な土木で法面や盛土の損壊を直したように見えて、「雨15」レベルの極端な速度規制を敷くなど、取り敢えず走れればいい、という感じがありありの様子は、持続可能な対応とも言い難いわけで、「放置」から「安楽死」を狙っているようにも見えます。ただ本当に「安楽死」に持ち込めたケースがないので、あるいは出血を最小限にした「放置」狙いでしょうか。適宜赤字を計上することで利益を抑えて外部流出を減らせるという趣旨で。

まあ芸備線はこれを機に廃止しても誰も文句は言わないでしょう。それよりも特に備北交通に体力が残っているうちに地域の公共交通をバスに一本化しないと、そして誰もいなくなった、を地で行くことになりそうです。庄原市内では既に基幹交通の広島への高速バスが減便、三次や庄原での分断と厳しさが募る状況です。
中国バスもかろうじて東廻り東城線と、町立病院と役場本庁がある旧三和町へのアクセスとなる油木ー高蓋間を維持しているだけになってしまい、神石高原町内の公共交通が壊滅的になっていますが(3月末で油木営業所が閉鎖されて単なる車庫になる)、広域合併した庄原市はどうなるのか。

全くの余談ですが、神石高原町はほんの7年くらい前までは中国バスが町内に路線網を持っていて、東廻り東城線で福山、東城。西廻り東城線で府中、福山、東城。その他で上下や豊松と合併前の各町村や近隣への足がありましたが、今は東廻り東城線と油木-高蓋間のみで、町営バスが油木から神石(呉ヶ峠)と豊松まであるほかは福祉タクシーでの対応です。



情報統制に無邪気に賛同する勢力

2023-03-30 21:20:48 | 時事
首相のキエフ訪問で情報管理だ危機管理だと言ってますが、その前提としてメディアが「目の前の事実」を報じない、としてますよね。
メディアがゴミだなんだと言われる理由の一つが恣意的な情報の取捨選択であり、「報じない自由」ですが、じゃあ「報じるな」で言うことを聞け、と無邪気に言えるところが却って恐怖です。

もちろん報道統制はありますし、誘拐犯のように無制限な報道で人質が殺されるという悲しい結果もあり、報道統制についてのコンセンサスがあるケースもありますが、じゃあ今回のようなケースはどうなのか。実際には金融パニックを起こさないためにという理由で、しかし今なお公式には報道統制の事実を認めていませんが、多くのメディアが言及するように1997年の金融危機における安田信託銀行の取り付け騒ぎを報じなかったという「事実」があります。
確かにあの時点では三洋証券、山一證券といった証券会社の破綻だけでなく、拓銀、徳陽シティと都銀、第二地銀も破綻する状況で、大手銀行が相次いで破綻した昭和初期の金融危機の再来となってもおかしくない状況であり、銀行の息の根を止める危険性が高く、預金者がパニックになると必ず発生する「取り付け」を報じるリスクは確かにありましたが、誘拐事件が一定の時間の経過や結末を見た後には報じられるのに対し、「取り付け」は四半世紀以上たった今でも公式には無かったことになっていますし、メディアも断片的に「あった」と報じるだけで、当時メディアが報道統制をした(今もし続けている)事情は全く出てきません。

「国益に反するから」というのは一片の事実ではありますが、それに流されて報道統制を肯定できるのか。それが許容されるのは事前に対象に関するコンセンサスを確立することと、事後速やかな開示です。もちろん記者クラブに流される「ニュース」をそのまま記事にするようなメディアが報道の意義を云々するレベルではないわけで、報道統制された「ニュース」は粛々と出し手の統制解除で報じるのでしょうが、じゃあそれがスクープだった場合はどうあるべきなのか。

たまに舞台裏的な話として、当局と協議して報道を抑えた、という趣旨の話が出てきますが、そんなのはメディアの自殺行為ですからね。
「知る権利」のツールだからこそ認められている特権を、当局と一緒になって握りつぶしているようでは「知る権利」を阻害するだけの存在です。
今回の件にしても、日本に限らず各国の要人が鉄道で訪問するとしたらここしかない、というポイントがあるわけで、そこを張ってるくらいでないとメディアとは言えません。以前北朝鮮の金正恩委員長による極秘の北京訪問が専用列車を見かけた中国の鉄ヲタにすっぱ抜かれたという逸話がありますが、それくらいの食い下がりがあってもおかしくありません。

「国益」「危機管理」というのであれば、それをかいくぐる位の隠密行動にするか、あるいは首相の外国での行動の報道は政府が良いというまで解禁しない、とするかですね。それがコンセンサスを得られるかは別として。
今回はロシアにも事前連絡をしており通路安全は保障された格好です。他国の要人も含めてある意味「やらせ」なんですが、本当にリスクがあるのであれば、そもそも訪問しないでしょうし、リスクがあったとしたらメディアの報道を云々する以前の問題として「戦場訪問」そのものを問うべき話です。

公開することによる「公の利益」もまた重要な要素ですが、そこも昨今はおかしくなっているわけです。
ネタばれになるという悲鳴もあるんでしょうが、例えばロケを見かけても情報を上げない、というのもどうなんでしょうね。公開の場所で人の口に戸を立てるようなやり方は妥当なのか。あるいは録画放送があるので試合結果を報じない、というのもどうか。スポーツではそんな遠慮はないのですが(試合途中は放映権に配慮して出してませんが)、将棋で放送がある棋戦なので対局結果が放映まで伏せられていたというのも何だか、と感じましたね。勝率その他の記録が放映で解禁になるまで計算できなかったですし。

余談ですが、企業情報においては、上場企業(およびそのグループ会社)であれば一定の内容については株価に影響があるとして取引所規則で速やかな開示を要求されます。(適時開示) じゃあ不慮の事態でばれてしまった、というのはどうなのか、というと、それも上場規則違反になりますし、開示のその瞬間まで厳格な情報管理が要求されます。「言うなよ」ではなく「出しません」であり、出たら情報管理が出来ていないとされた企業側がインサイダーを招きかねない行為として責任を負います。それが当たり前の対応でしょう。

まあ交通の世界でも、目の前に新車があっても事業者の公式発表があるまではネットに上げることはまかりならん、という謎ルールがヲタレベルでもあるくらいで、鉄道雑誌に至っては社章入りの車両があるのに「・・・と思われる車両が」といった「自主規制」をしてますからね。
少なくとも目の前の事実を報じない(伝えない)ということに違和感の欠片も感じない人は、情報操作によって簡単に被害を被るでしょうね。