Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

被害と障害の不均衡

2019-09-16 00:18:00 | 震災・災害
故郷は遠くにありて思うもの、じゃないですが、今回の台風15号の災害には驚かされるとともに、尋常じゃない事態に心が痛みます。
電気や水道の停止は、昨夏の西日本豪雨で実家や親類の苦境を直接現地で見聞きしているだけに、残暑厳しい中での長期間の停止は想像を絶する大惨事です。昨年も断水こそ2週間でしたが、停電は1日半で済んで、その期間の大半が天候回復前の曇天だったので高齢の親類も何とか切り抜けましたが、停電が継続して冷房が効かない日々が続いていたらと思うといまだに背筋が凍ります。

一方で今回の災害は、暴風による災害という意味では昨秋の台風21号による大阪府下を中心とした災害と同種です。
今回は台風の中心が直前に東に振ったため、千葉市西部に上陸し、危険半径は今回大きな被害を受けたエリアとなったわけですが、一歩間違えば都内城東や京葉エリアを巻き込んで昨秋と同じような災害になったかもしれなかったわけです。

その意味ではわずか1年前の事例が生きていなかったとしか言いようがないわけで、文字通りの対岸の火事としか思ってなかったんでしょうね。手前味噌になりますが、今回の台風の規模と進路を見て、昨秋の21号をイメージして自宅に厳重に警戒するように指示したわけですが、「関空の橋に船が突っ込んだ台風」と言っただけで深刻さが共有できたわけで、後述するような千葉県など自治体の感度の低さはやはり批判の対象となります。

しかし21号の被害と比較すると、15号の被害は正直桁落ちになります。もちろん鋸南町や南房総市のような激甚災害レベルの被災地もありますが、21号の時は泉州から摂津南部にかけて、直前に北摂を襲った大阪北部地震の被災地のように家屋が破壊されており、いたるところにブルーシートで応急処置された家屋があり(1年経った今でも目立ちます)、マンションも飛来物で破壊され、工場も建屋が大きく損壊していたのに対し、千葉県内の被害は特定のエリアを除けばそこまでひどくない、いや、被害というほどでもないというのが実情です。

要は被害規模に対するインフラの障害がシンクロしないのです。なんでインフラだけ壊滅したのか。交通にしてもR128などの通行止めは日単位ではなく、館山道、富津館山道路も翌日の午後には開通していたわけで、鉄道の運休との格差が大きすぎました。
鉄道は停電による保安装置のダウンが原因という面も大きい(いすみ鉄道はその典型)ので、結局は電力になるわけですが、当リによる被害は確かに甚大でしたが、それへの対応は適切なのか。これは今後真剣に検証する事項です。

少なくとも市街地での復旧の遅れを考えると、今回の千葉はなぜなのか。独自の要素が絶対にないとここまでの事態にはなりません。
一部市街地での電柱悼ヘ気になるところで、1ヶ所で折れて負荷が変わって根本付近で剪断という感じですが、過去もあったはずの被害パターンでこんな結果になったのを見たことがなく、施工や維持、電線の張り方などあらゆる要素を予断なく検証する必要があります。
そして内房南部はともかくとして、千葉市各区をはじめとする広範囲にエリアで停電が長引いたのはなぜか。被害と障害の不均衡が住民の疑問を呼んでいるのです。

千葉市では東電による説明会があったようで、人的、物的資源が限られていて、という理由で房総優先に理解を求めていましたが、これもおかしな話で、東電のエリアを考えたら、千葉県全土でも「局地的」でしょう。要は災害対応の経営資源が枯渇しているのではないか。これで社会の基本インフラの維持なんかできないのではないか。西日本豪雨、台風21号といった大災害が相次いだなかで、今回の東電の対応は明らかに遅くて戦力が足りない印象を受けます。

昼夜連続で復旧作業に当たる現場の方々には頭が下がりますが、だからと言って批判を許さない風潮はどうか。現場の頑張りを訴え一切の批判を許さない流れに持ち込むのは、まさに事業者無謬の典型でしょう。現場を盾に司令塔のミスを隠蔽しているようなものです。
特に復旧の見積もりが甘かったのは素直に批判すべきですし、初期の報道で集められた作業員が電工関係だけで当リ対応には無力で手持ち無沙汰だったというシーンがあったように、被害の把握(情報収集)と対策に重大な問題があったとしか言いようがありません。

ここで東電以上に問題なのが自治体の対応で、特に千葉県庁は話になりません。情報を収集して東電などを差配するのが自治体の仕事なのに全く機能しなかったわけです。千葉市にしてもそう。普段は雑談レベルのSNSでネット住民の称賛を浴びていますが、そのSNSをはじめとする情報発信がなってなかったとしか言いようがありません。特別支援学校の水浴びへの批判に反論したのが目立ったくらいですよ。「岡目八目」とはよくぞ言ったもんで、神戸とか遠隔地にいると、情報発信力というのがよくわかります。去年の西日本豪雨でも岡山県倉敷市と総社市で見事なコントラストを見せていますし。

激甚災害を食らった地元を批判するのは忍びないのですが、鋸南だったか南房総だったかで、停電のため安否確認ができないという住民対応組織の「苦戦」が報じられていましたが、千葉県はその典型として、今回こういう「対応」が目に余るのです。
要は、なんで自分から情報を取りにいかないのか。上記の通り沿岸部の国道や高速は通れる中で、県庁からクルマを走らせれば文字通り「朝飯前」の情報収集でしょう。少なくとも鋸南の状況は当日でも入手可能だったはずです。防災ヘリだってちゃんと使ったのか。県が適切に動けば民有地の当リ処理なども早期に動けたはずですが、連携もないし情報収集もないし、今回の県の対応はもっと大きな台風や大地震発生時は絶望的と思わしめるものです。

住民対応にしてもそう、停電で電話が鰍ッられないじゃなくてこっちから行くんですよ。電話が鰍ッられない状態であれば、家屋の悼竡?傷といった最悪の事態が想定されるわけで、「困った」と言ってる場合じゃないんです。通信が使えなければ伝令という手段だってある。クルマがダメならバイクや自転車、最悪は徒歩だってあるんですよ。

普段なら2時間もあればクルマで行ける県土で情報収集がなぜにこんなに遅れたのか。千葉市だってそうでしょう。未だに中央区ですら停電地域がありますが、現実に職員を派遣して情報を集めたのはいつか。普通なら9日のうちに情報収集は終えて、10日には作業に入る。指示を出す。支援を求める。そう考えると特に県は2日以上遅れているのです。