Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

司法の壊滅的な劣化

2019-06-03 00:01:00 | 時事
化学メーカーの社員が育休明けに転勤を命じられて退職したら、退職時の慣行のはずの有給消化とのセットを拒否されて退職時期を指定された事案、メディアが直当たりして記事にしているので実話なんでしょうが、少なくとも退職時期の指定や有休消化の拒否は違法ということに気がつかないあたり、かなり心配な会社です。

一方で育休明けだろうが転勤命令は合法!と告発者を叩くことにカタルシスを覚える毎度のパターンが出てきていますね。弁護士も「んだんだ」と単に判例をなぞって無批判に肯定していますが、まあ「コンプライアンス」の意味すら解っていないわけで、「法令順守」という「邦訳」でいいじゃないか、というが如きで「私本質がわかっていません」と自白しているようなものでしょう。

少なくとも「くるみん」という公的な「資格」(経済的メリットを国から提供されています)を取得しているわけで、自分たちがどういう規範で動いているか、法律の「最低限」以上の規範を守っています、と言いながらの所業は、「合法!」と単純に言えるものではありませんね。公に届け出た内容を順守できていないことが判明して咎められたら、でも法律は破っていませんから、といって開き直っても、「そうですね」と温かく迎え入れるということでしょうか。ダブスタの香りがプンプンしますね。


その程度の意識で法律を振り回しているのが日本の法曹界ですが、今日は最高裁が素晴らしい判例を出してくれました。
信号無視で摘発した相手が黄色信号での通過を主張し、パトカーにあるはずの車載カメラの映像での確認を要求したところ、警察官が拒否したため切符の受け取りを拒否し、正式裁判に移行し、二審で反則切符を受け取らなかったのは警察官の不誠実な対応が原因として無罪、というか裁判に持ち込んだこと自体を不当とした公訴棄却になったのを、逆転敗訴にしたのです。

本件、今回の判決を報じる報道には一切出てこないんで誤解した状態でいったん書き込んだ後に知って書き改めましたが、かなり根深い案件です。信号無視として停止を求められ、証拠の提示を求めても「映像はない」との一点張りのうえに逮捕されたというのですから異常事態です。別に公務執行妨害でもなく信号無視を罪状としての逮捕なんてありえません。

身柄を送検されて地検で「ない」はずの映像が出てきて赤信号のタイミングと判明し、被告も受け容れたんですが、この時点では既に送検されており略式起訴による裁判に依るしかない、と裁判を強行。それはおかしいと控訴した高裁で、黄色か赤かと言うタイミングの問題で本人は黄色と信じている以上、証拠を要求するのは当然であり、証拠を提示していれば受諾していた可能性が高いのに「ない」と拒んだのは甚だ不誠実であり、それで起訴するのもおかしい、と断じたのが公訴棄却になった流れです。

真否は「信号無視」で確定しているので、差し戻すわけにもいきませんので、確かに破棄自判か上告棄却しかありません。
ただ、やはり司法の劣化とした言いようがないのが、検事出身の判事による「法律には書いてないもん」と言う主張でしょう。駐車違反とか逆走のような疑いが無い違反ではないのに、証拠を提示する必要はない。要は「俺が法律だ」で通用するのか。「スピード違反だ」「何キロの違反ですか」「19㎞の違反だ」「記録は」「そんなものはない」で通るわけがないことは子供でも分かります。

そして証拠はない、と言い張っていて後から出してきたわけです。
探しきれなくて見つけたんです、というのではなく、始めからあることは分かっていたのにウソをついていたわけです。こうなると画像だって信号機の部分を加工している可能性だって否定できないわけですし、そもそも「ない」と断言していた証拠を後出しで出して証拠として容認すべきか。一種の偽証ですよね。信義則どころかそもそも「違法手続」であり、そういう証拠に証拠能力はないとするのが真っ当な司法でしょう。

その意味でも、今回の判決は司法の劣化の典型例の一つとして指弾されるべきものでしょう。
実効性のない国民審査でしか判断できないのが本当に悔しいレベルの無能裁判官です。