Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

批判を許さぬ空気

2018-11-08 20:53:00 | 交通
台湾のプユマ号脱線事故で、事故車両が日本の日車製ということもさることながら、保安装置をカットした場合の通報装置が作動しなかったことが明るみになり、議論を呼んでいます。
日車の公式サイトでは特に本件のリリースはなく、一定の条件で開示義務を負う連結親会社も特段のリリースを出していません。

本件はJR宝塚線事故を彷彿とさせるような転覆脱線の衝撃的な映像とともに事故原因があれこれ言われていましたが、保安装置カットという事実が確定的な中で、勝手なカットを抑止するための通報装置の不作動が事故発生における影響をどの程度及ぼしたのかが焦点になります。

通報装置の不作動については、朝日が設計ミスと報じており、リリースはないものの日車が発表したという表現を他社も取っていることから、事実とみて間違いないでしょう。
一方で台湾メディアが通報装置が実装されていなかったと報じているのですが、実装されていないのであればミスも何もあったもんじゃない話であり、台湾側からの要請で実装していなかったのであればそう発表すればいい話です。責任問題を考えたらそれで「ミス」を認めるのは自殺行為なので、「修理」の発表と合わせ、実装はあったが切られていた、としないと辻褄が合いません。

当初は不安定な加減速などの情報から車体傾斜装置の異常といった事態が想定されていましたが、保安装置のカットとバックアップとなるはずの通報装置の不作動という保安系の話になっています。ただし保安装置のカットに至る原因が置き去りになっているわけで、復帰運転のために保安装置をカットしないといけない、というところを起点にしたら、原因にはたどり着けません。

想定するに、N700系新幹線との共通部分もあるだけに設計そのものの問題ではなく、製造ロットに起因する問題が存在し、それが不安定な運行を惹起し、それにより生じた遅延をカバーするために保安装置カットに至った。ということでしょう。ですから前段部分の解明がないと、本当に特定の製造ロットの話なのか、設計に何らかの要因があるのかがはっきりしませんし、場合によっては日本の新幹線に波及する話になるだけに、そこははっきりさせないといけません。

保安装置の方は微妙ですが、実装している(と思い込んでいた)ものを台湾側がカットした。
しかし実際には設計ミスで作動しなかった。設計ミスの有無にかかわらず通報不能な状態に意図的に陥っているのであれば、直接的にはカットした側の責任ですが、これがもしカットされていなければ、普通はカットしない状態ですから、設計ミスの判明はなんらかの事故によって発覚すると考えられるだけに、危ないところだったとも言えます。

本来はそう考えるべきなのに、日車側の問題を論点とするだけで異常なまでに反発する人が湧いてくるという不思議な傾向が見られます。
上述の台湾メディアの報道が出ると、設計ミスではない、そもそも実装していなかったのだから台湾側の責任だ、と言う大合唱はその一つで、だとしたら実装していなかった装置の修理という矛盾が出てくるのですが、それもまだ序の口です。

衝撃的な映像を前に、JR宝塚線事故で事故原因と喧伝されたダイヤ至上主義、運行管理のプレッシャーを事故原因とする人もいますが、よしんばそうだったとしても、じゃあなぜ遅延したのか、そして保安装置で防げなかったのか、という話になります。
JR宝塚線事故では度重なるオーバーランによる時間の費消が遅延を招き、保安装置は旧型ATSできめ細かい速度照査が出来なかったという原因とヘッジ手段の分析がされていますが、本件ではそれに触れるとなぜか日本で抵抗を受けるのです。

その批判の最先鋭が、日車を批判したら連結親会社の不興を買う、過去に連結親会社の批判をした末路を見るがいい、というものでしょう。
頼みもしないのに連結親会社の名を借りて脅迫まがいのことを公然とネットで発言する神経を問いますが、それがたいして批判されない、日車批判の方がご法度という流れはどうなんでしょうね。JR宝塚線事故を持ち出す向きもそうですが、なんとか日本側の問題ではないとはぐらかそうという意思を感じるのですが、それが「工作員」でないとしたら、いわゆる鉄道クラスタの類が総じてそのような忖度をするというところに、本件がいみじくも炙り出した根深いものを感じます。