3日と空けずに大ニュースが発生するこのところですが、日本人としてはやはり「生前退位」の報に驚きました。
以前女系天皇論の時に、推古天皇に元正天皇、草壁皇子といった「歴史」の故事が続々と出てきたのですが、今回は約200年前の光格天皇以来、という話になっています。
このあたりが日本の歴史の奥深さでもありますが、今回引き合いに出てきたのが光格天皇というのも意味深で、皇統が断絶しかけたところを世襲親王家である閑院宮家から継いだとか、そして今の皇室の直系の祖先になるとか、その光格天皇以来、というのは単に歴史のアヤだけとは思えないものを感じます。
天皇陛下も御年82、昨年あたりからご公務での「ミス」も目立つようになり、しかしながら公務の「軽減」は対象となった先に対して不公平ではないか、という強い義務感が今回の「ご意向」になったのでしょう。
皇位は終身というのもご公務を考えると「人権問題」でもあり、天皇に人権なし、とはいえ常識的な感覚では誰もが思うわけで、今回の「ご意向」も一般には肯定的に捉えられています。
しかし敢えて不敬、不忠の誹りを覚悟して申し上げれば、今回の「ご意向」はこれまで陛下や皇室が強い意思をもって回避してきた「皇統の危機」という論点において、パンドラの箱を開けてしまったのではないでしょうか。
各方面から指摘されている通り、存命中の退位、譲位についての規定が我が国の法令にはありません。皇位、後続を定義する皇室典範にもそれはありませんし、逆に現憲法下での皇室典範制定時に、存命中の譲位を否定する意図があったという話が出ているわけで、そうなると陛下のご意思とはいえども簡単にはいかない話です。
少なくとも、退位と譲位、譲位後の名称(「太上天皇」=上皇)と敬称、重祚の可否を規定しないといけませんし、各種定義に「上皇」を追加する必要もあります。さらには皇位継承順位としては定められている兄弟、甥への皇位継承に伴う「立太子」の規定も必要です。すなわち、いかなる形であれ、現在の皇太子殿下に皇位が継承された時点で、「その次」である秋篠宮殿下の「立太子」に関する規定がありません。また状況次第では「その次」が悠仁親王殿下になる可能性もありますが、その場合の「立太子」の規定もありません。
権限上は「太子」がいなければならない、ということはないのですが、規定があるということは何らかの意味があるわけで、立太子をせずに践祚することになるのは皇室典範の法律上の不備になります。
陛下のご意思を尊重するには皇室典範の改正が不可避ということは共通認識なんですが、そこで出てきたのが、全面改正論です。
有識者会議を設けて検討する必要がある、という声が出るに至っては、陛下の発議を奇貨として「天皇制」を変えてしまおう、という動きであり、小泉政権当時の女系天皇容認論のように、一歩間違えると「天皇制の危機」になる危険性があります。
そういうどさくさ紛れや、議論による時間の空費を回避すべく「摂政」でいいではないか、という声もありますが、これも「摂政」設置の要件に「高齢」がないわけで、皇室典範の定義にある「精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないとき」といってしまうとあまりにも失礼なわけで、常識的に見ればこれも皇室典範の改正が必要です。
ちなみに昭和天皇ご不例の際でも「国事行為臨時代行」だけで摂政は設置されなかったのですが、この「国事行為臨時代行」も「国事行為」に限定されるため、それより広い「ご公務」の取り扱いをどうするか、という話になるわけで、高齢を理由とした場合は不可逆の設置になるのに「代行」やご公務の場合は「名代」でいいのかとなると、制度趣雌Iに難しいでしょう。
結局、譲位(あるいは高齢に伴う摂政設置)に関する最低限の修正を行う、と欲目を出さずに対応すべきですが、「余計な改正」につながる危険性を排除できていない現状は、10年ほど前の政府による「性急な議論」を自ら招きかねない事態です。
しかしそう考えると、今回の「ご意思」はそれを満足させるには法改正を伴うことから、「違憲」の疑いを指摘する声も出ていますが、陛下は日常「護憲」の立場を取られていることを鑑みると、逆に危機感を持っていても「ご意思」になることが不自然であり、ひょっとしたら陛下の「ご意思」を盾に皇室典範の改正に持ち込み、本題とは別の「女系」のような「裏メニュー」を通そうとしているのでは、という陰謀論も荒唐無稽とは言えないでしょう。
以前女系天皇論の時に、推古天皇に元正天皇、草壁皇子といった「歴史」の故事が続々と出てきたのですが、今回は約200年前の光格天皇以来、という話になっています。
このあたりが日本の歴史の奥深さでもありますが、今回引き合いに出てきたのが光格天皇というのも意味深で、皇統が断絶しかけたところを世襲親王家である閑院宮家から継いだとか、そして今の皇室の直系の祖先になるとか、その光格天皇以来、というのは単に歴史のアヤだけとは思えないものを感じます。
天皇陛下も御年82、昨年あたりからご公務での「ミス」も目立つようになり、しかしながら公務の「軽減」は対象となった先に対して不公平ではないか、という強い義務感が今回の「ご意向」になったのでしょう。
皇位は終身というのもご公務を考えると「人権問題」でもあり、天皇に人権なし、とはいえ常識的な感覚では誰もが思うわけで、今回の「ご意向」も一般には肯定的に捉えられています。
しかし敢えて不敬、不忠の誹りを覚悟して申し上げれば、今回の「ご意向」はこれまで陛下や皇室が強い意思をもって回避してきた「皇統の危機」という論点において、パンドラの箱を開けてしまったのではないでしょうか。
各方面から指摘されている通り、存命中の退位、譲位についての規定が我が国の法令にはありません。皇位、後続を定義する皇室典範にもそれはありませんし、逆に現憲法下での皇室典範制定時に、存命中の譲位を否定する意図があったという話が出ているわけで、そうなると陛下のご意思とはいえども簡単にはいかない話です。
少なくとも、退位と譲位、譲位後の名称(「太上天皇」=上皇)と敬称、重祚の可否を規定しないといけませんし、各種定義に「上皇」を追加する必要もあります。さらには皇位継承順位としては定められている兄弟、甥への皇位継承に伴う「立太子」の規定も必要です。すなわち、いかなる形であれ、現在の皇太子殿下に皇位が継承された時点で、「その次」である秋篠宮殿下の「立太子」に関する規定がありません。また状況次第では「その次」が悠仁親王殿下になる可能性もありますが、その場合の「立太子」の規定もありません。
権限上は「太子」がいなければならない、ということはないのですが、規定があるということは何らかの意味があるわけで、立太子をせずに践祚することになるのは皇室典範の法律上の不備になります。
陛下のご意思を尊重するには皇室典範の改正が不可避ということは共通認識なんですが、そこで出てきたのが、全面改正論です。
有識者会議を設けて検討する必要がある、という声が出るに至っては、陛下の発議を奇貨として「天皇制」を変えてしまおう、という動きであり、小泉政権当時の女系天皇容認論のように、一歩間違えると「天皇制の危機」になる危険性があります。
そういうどさくさ紛れや、議論による時間の空費を回避すべく「摂政」でいいではないか、という声もありますが、これも「摂政」設置の要件に「高齢」がないわけで、皇室典範の定義にある「精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないとき」といってしまうとあまりにも失礼なわけで、常識的に見ればこれも皇室典範の改正が必要です。
ちなみに昭和天皇ご不例の際でも「国事行為臨時代行」だけで摂政は設置されなかったのですが、この「国事行為臨時代行」も「国事行為」に限定されるため、それより広い「ご公務」の取り扱いをどうするか、という話になるわけで、高齢を理由とした場合は不可逆の設置になるのに「代行」やご公務の場合は「名代」でいいのかとなると、制度趣雌Iに難しいでしょう。
結局、譲位(あるいは高齢に伴う摂政設置)に関する最低限の修正を行う、と欲目を出さずに対応すべきですが、「余計な改正」につながる危険性を排除できていない現状は、10年ほど前の政府による「性急な議論」を自ら招きかねない事態です。
しかしそう考えると、今回の「ご意思」はそれを満足させるには法改正を伴うことから、「違憲」の疑いを指摘する声も出ていますが、陛下は日常「護憲」の立場を取られていることを鑑みると、逆に危機感を持っていても「ご意思」になることが不自然であり、ひょっとしたら陛下の「ご意思」を盾に皇室典範の改正に持ち込み、本題とは別の「女系」のような「裏メニュー」を通そうとしているのでは、という陰謀論も荒唐無稽とは言えないでしょう。