土佐電気鉄道(土電)とその子会社である土佐電ドリームサービス、そして高知県交通(県交通)の3社の新設分割による高知県内の公共交通再編が各社の株主総会を経て正式に決まりました。
高知県内の公共交通は、JR四国、土佐くろしお鉄道を除けば土電と県交通の2社でほぼ占められているわけですが、その実態は厳しく、両社あわせて約35億円(土電15億円、県交通20億円)の実質債務超過状態にあり、金融機関の債権放棄、自治体の出資というある意味お決まりのコースと言えます。
ところが今回のケース、よく見ると両社とも「存続会社」になっていません。新会社に事業を継承し旧会社は特別清算するのです。
つまり、両社とも「潰れる」わけです。事業は新会社に継承された抜け殻の会社であり、清算時に会社財産は残りませんから、既存両社の株主は株券が紙切れになることで株主責任を取る格好です。
さらによく見ると、両社の子会社は新会社の子会社として継承されるのに、土電側は交通事業者である100%子会社の土佐電ドリームサービスも特別清算の対象になるのです。県交通側の西南交通などの交通子会社の処遇と比べると不思議な格差といえます。
もうこれ以上言わなくても分かるでしょう。
要は土電の「取り潰し」です。あわせて二進も三進もいかなくなっていた県交通も清算し、交通事業は「公共」が取り敢えず管理する、と言うスキームです。
「公共交通の維持のため」であればこんな訳の分からない、しかも債権放棄に株主責任といきなり「損切り」して、自治体が出資と言う税金の支出を伴うスキームを性急に導入する必要はありません。
言うまでもなく、例の「企業舎弟」の問題があるわけです。問題が発覚しても対応が鈍く、コンプライアンス意識の低さに呆れ果てる状態では自浄能力が期待できない状態で、暴対法などの規定ではこういう「反社会的勢力」との関係が疑われる(どころか関係していたと露呈した)企業との取引をしたら、その企業が詰んでしまうのです。
おまけに補助金漬けの経営体質ですから、そこに国や自治体が補助金を入れることも出来ないとなると、即詰みです。緊急避難的に内容を精査して補助を出してきましたが、その状態を持続することは不可能でした。今回の事例は「苦境の公共交通の再編」ではなく、存続が許されないことをしでかした企業の「後始末」というャCントがまずあるのです。
そうなると県交通による救済、となるはずですが、単純な救済合併だと土電側の問題ある経営陣が積み上げた負債を継承することになり、それに税金を投入することは問題です。県交通の経営も厳しく、補助金で延命しても本質的な解決ではなく、では土電を清算して新会社にしたら、JALの「V字回復」じゃないですが、県交通と何かとライバル関係にあるのにそっちは身軽に、では公平が保てません。
県交通の株主が側杖を食った格好ですが、県交通も清算して、公共交通を担う事実上の公営企業を立ち上げたわけです。
まあ県交通のほうは大株主が高知日野とUDジャパン(旧日産ディーゼル)ということで、1971年の梼Y→再建後にバスメーカーが出資したのがありありですが、50百万円強の投資簿価はおそらく減損で備忘価格になっているでしょうから、「お好きにどうぞ」と諦め顔でしょう。そのあたりが非上場だが一般株主が多い(ので金商法上の開示をしている)土電との違いと言えますし、「痛み」は土電側に大きいであろうことは、事態の経緯を考えると理解できます。
土電は「取り潰し」で、県交通は「二度目」という不名誉な退場ですが、ベースの地合いに変化はないわけで、今後は自治体がどうやって支えていくのかが問われます。なんとかスキームだけは作ったが、これが持続可能である保障は全くありません。
一種の「突然死」であり、公共交通の存続がやっとというのは分かりますが、損切りをさせられた金融機関が振り向かなければ自治体が税金で支えるしかないわけで、どこまでが必要不可欠なのか、を精査して支えていくしかありません。
ちなみに金商法上の開示(2014年6月3日提出の臨時報告書)によると、今回の訳の分からないスキームは下記の通りです。
6月3日提出 臨時報告書
(3)新設分割の方法、新設分割会社となる会社に割り当てられる新設分割設立会社となる会社の株式の数その他の財産の内容
②新設分割会社となる会社に割り当てられる新設分割設立会社となる会社の株式の数その他の財産の内容
新会社は本新設分割に際して発行する取得条項付種類株式3株のうち、当社に1株、高知県交通株式会社に1株、土佐電ドリームサービス株式会社に1株を割り当てます。
(4)新設分割に係る割当ての内容の算定根拠
新会社は関係自治体が株式を100%保有する会社となりますので、新会社が当社等の分割会社3社に交付する株式(取得条項付種類株式)は、自治体の出資後、直ちに新会社に取得されます。分割会社3社に交付される株式は、共同新設分割の手続上の必要から形式的に交付されるに過ぎないことから、分割に際して交付する株式の割当比率につきましては、分割会社に対して均等に1株ずつ交付することといたしました。
(5)新設分割設立会社となる会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
商号:
中央地域公共交通準備株式会社
本店の所在地:
高知県高知市桟橋通4丁目12番7号
代表者の氏名:
取締役社長 片岡万知雄
資本金:
0円
純資産の額:
0円
総資産の額:
7,778百万円
(定款)
第2章 株式
第1節 総則
第6条(発行可能株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
1.当会社の発行可能株式総数は103株とし、各種類の株式の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。
(1)普通株式 100株
(2)取得条項付種類株式 3株
2.当会社の発行する取得条項付種類株式の内容は、次のとおりとする。
(ア)取得条項
当会社は、設立後、最初に行う募集株式発行の効力が生じる日に、発行済みの取得条項付種類株式の全部につき、無償で取得する。
高知県内の公共交通は、JR四国、土佐くろしお鉄道を除けば土電と県交通の2社でほぼ占められているわけですが、その実態は厳しく、両社あわせて約35億円(土電15億円、県交通20億円)の実質債務超過状態にあり、金融機関の債権放棄、自治体の出資というある意味お決まりのコースと言えます。
ところが今回のケース、よく見ると両社とも「存続会社」になっていません。新会社に事業を継承し旧会社は特別清算するのです。
つまり、両社とも「潰れる」わけです。事業は新会社に継承された抜け殻の会社であり、清算時に会社財産は残りませんから、既存両社の株主は株券が紙切れになることで株主責任を取る格好です。
さらによく見ると、両社の子会社は新会社の子会社として継承されるのに、土電側は交通事業者である100%子会社の土佐電ドリームサービスも特別清算の対象になるのです。県交通側の西南交通などの交通子会社の処遇と比べると不思議な格差といえます。
もうこれ以上言わなくても分かるでしょう。
要は土電の「取り潰し」です。あわせて二進も三進もいかなくなっていた県交通も清算し、交通事業は「公共」が取り敢えず管理する、と言うスキームです。
「公共交通の維持のため」であればこんな訳の分からない、しかも債権放棄に株主責任といきなり「損切り」して、自治体が出資と言う税金の支出を伴うスキームを性急に導入する必要はありません。
言うまでもなく、例の「企業舎弟」の問題があるわけです。問題が発覚しても対応が鈍く、コンプライアンス意識の低さに呆れ果てる状態では自浄能力が期待できない状態で、暴対法などの規定ではこういう「反社会的勢力」との関係が疑われる(どころか関係していたと露呈した)企業との取引をしたら、その企業が詰んでしまうのです。
おまけに補助金漬けの経営体質ですから、そこに国や自治体が補助金を入れることも出来ないとなると、即詰みです。緊急避難的に内容を精査して補助を出してきましたが、その状態を持続することは不可能でした。今回の事例は「苦境の公共交通の再編」ではなく、存続が許されないことをしでかした企業の「後始末」というャCントがまずあるのです。
そうなると県交通による救済、となるはずですが、単純な救済合併だと土電側の問題ある経営陣が積み上げた負債を継承することになり、それに税金を投入することは問題です。県交通の経営も厳しく、補助金で延命しても本質的な解決ではなく、では土電を清算して新会社にしたら、JALの「V字回復」じゃないですが、県交通と何かとライバル関係にあるのにそっちは身軽に、では公平が保てません。
県交通の株主が側杖を食った格好ですが、県交通も清算して、公共交通を担う事実上の公営企業を立ち上げたわけです。
まあ県交通のほうは大株主が高知日野とUDジャパン(旧日産ディーゼル)ということで、1971年の梼Y→再建後にバスメーカーが出資したのがありありですが、50百万円強の投資簿価はおそらく減損で備忘価格になっているでしょうから、「お好きにどうぞ」と諦め顔でしょう。そのあたりが非上場だが一般株主が多い(ので金商法上の開示をしている)土電との違いと言えますし、「痛み」は土電側に大きいであろうことは、事態の経緯を考えると理解できます。
土電は「取り潰し」で、県交通は「二度目」という不名誉な退場ですが、ベースの地合いに変化はないわけで、今後は自治体がどうやって支えていくのかが問われます。なんとかスキームだけは作ったが、これが持続可能である保障は全くありません。
一種の「突然死」であり、公共交通の存続がやっとというのは分かりますが、損切りをさせられた金融機関が振り向かなければ自治体が税金で支えるしかないわけで、どこまでが必要不可欠なのか、を精査して支えていくしかありません。
ちなみに金商法上の開示(2014年6月3日提出の臨時報告書)によると、今回の訳の分からないスキームは下記の通りです。
6月3日提出 臨時報告書
(3)新設分割の方法、新設分割会社となる会社に割り当てられる新設分割設立会社となる会社の株式の数その他の財産の内容
②新設分割会社となる会社に割り当てられる新設分割設立会社となる会社の株式の数その他の財産の内容
新会社は本新設分割に際して発行する取得条項付種類株式3株のうち、当社に1株、高知県交通株式会社に1株、土佐電ドリームサービス株式会社に1株を割り当てます。
(4)新設分割に係る割当ての内容の算定根拠
新会社は関係自治体が株式を100%保有する会社となりますので、新会社が当社等の分割会社3社に交付する株式(取得条項付種類株式)は、自治体の出資後、直ちに新会社に取得されます。分割会社3社に交付される株式は、共同新設分割の手続上の必要から形式的に交付されるに過ぎないことから、分割に際して交付する株式の割当比率につきましては、分割会社に対して均等に1株ずつ交付することといたしました。
(5)新設分割設立会社となる会社の商号、本店の所在地、代表者の氏名、資本金、純資産の額、総資産の額及び事業の内容
商号:
中央地域公共交通準備株式会社
本店の所在地:
高知県高知市桟橋通4丁目12番7号
代表者の氏名:
取締役社長 片岡万知雄
資本金:
0円
純資産の額:
0円
総資産の額:
7,778百万円
(定款)
第2章 株式
第1節 総則
第6条(発行可能株式総数及び発行する各種類の株式の内容)
1.当会社の発行可能株式総数は103株とし、各種類の株式の発行可能種類株式総数は、次のとおりとする。
(1)普通株式 100株
(2)取得条項付種類株式 3株
2.当会社の発行する取得条項付種類株式の内容は、次のとおりとする。
(ア)取得条項
当会社は、設立後、最初に行う募集株式発行の効力が生じる日に、発行済みの取得条項付種類株式の全部につき、無償で取得する。