Straphangers’ Room2022

旧Straphangers' Eyeや習志野原の掲示板の管理人の書きなぐりです

問題の本質

2010-07-06 22:56:00 | 交通
スカイマークが突如茨城空港からの撤退を発表してから2週間足らず、国交相が会見で「なんの事前通告もなく、一方的に運航停止するというやり方は極めて遺憾だ」「軍民共用の空港であることは(事前に)分かっていることだ」「公共交通機関としての姿勢に極めて疑問を感じる」と批判したそうです。

全くごもっとも、スカイマークは怪しからん、と言うところなんでしょうが、これまでの経緯を見ているとどうも額面どおり受け取れません。
特に航空祭での時刻変更問題がクローズアップされすぎており、航空幕僚監部が「当日の」運航確保に前向きと言う発言を受けて、撤退の前提が崩れた、運航継続を訴える、と言う動きが出ていますが、思うに問題の本質は黒字化が困難なことであり、その障害となったのが増発の問題のはずですが、この問題の解決策が全然処方されていないのでは、撤退の撤回はありえないでしょう。

現行のアシアナ、スカイマーク2便体制だと両社が発着する午前中から昼過ぎの4時間弱が過ぎれば後は訓練にフルに使えますが、スカイマークが増発するとしたらまず夕方のはずです。
今の訓練時間は午前中と夕方前に分散していると言うデータがあり、スカイマークの茨城着は訓練時間帯にかかりますが、その後の出発とアシアナの発着は「お昼休み」の合間に設定されています。

現状は非常に訓練との折り合いがうまくいっているのですが、それに加えて訓練終了後の時間帯に神戸から1往復の設定が可能かどうか。というところですが、訓練時間帯の前後を縛られる形になるので渋られたと想像することは決して突飛な発想ではないでしょう。





さて、こうした話の常として、時間が経てば経つほど、当事者の発言も、責任とか影響とかをいろいろ考えた「大人の対応」になってくるものです。だからそういった余裕も無い第一報の時点での発言には、思惑の無い素直な情報が隠されていることが多いものです。

逆に時間が経てば真実が出てくるということも往々にしてあるわけです。
今回も、当初は「空幕広報室の担当者は「発着時間帯をずらした方がいいのでは、という調整であって、強制ではない」との見解を示した。」と自衛隊からのお願いベースのように報じられていたのが、後になって「航空幕僚監部広報室は「もともと航空祭の時間帯に、周辺で激しい交通渋滞が起きることを懸念して運航時間変更を申し入れた」としており、今後は県や県警に渋滞解消に向けての措置を求めていくという。」と変わっており、管理者による申し入れですから「お願いベース」とはだいぶニュアンスが違いますね。

そしてそう考えたとき、後になって見え隠れするこの手の「違い」は往々にして「隠された真実」をうかがわせるものになるのです。
6月29日に国交省の長安政務官は「航空会社の路線の存廃に関しては、あくまでも航空会社と関係自治体の話し合いと認識している。」と一般論を前置きにして、スカイマークに事情を聞きたいとコメントしていますが、発表当初の茨城県や県知事のコメントを見れば、スカイマークは自衛隊と交渉しているのであり、「関係自治体」の茨城県が当事者どころか蚊帳の外だったことが分かります。

当事者能力が無い「関係自治体」を持ち出されても意味が無いのであり、「関係自治体」経由ではなく自衛隊との折衝が必要という「特殊事情」こそがスカイマークが撤退した理由でしょう。
そしてそういう「特殊事情」が茨城県、いや、監督官庁である航空局からもきちんと説明されていたのか。「一般論」を敢えて前置きしたあたり、航空局も想定外だった可能性すらあります。

国交相は「軍民共用の空港であることは(事前に)分かっていることだ」と言いますが、一航空会社が「関係自治体」や「監督官庁」の頭越しに自衛隊と折衝しないといけない、と言うことまで分かっていたのか。縦割り社会の日本において、こうした「頭越し」の交渉はいちばん嫌われますし、ありえない話なんですが、今回はそれが必要だった。つまり、「関係自治体」や「監督官庁」が期待された機能を果たせなかったともいえますし、最悪のケースとして、関係自治体や監督官庁が正しい情報を伝えきれていなかったということすら考えられます。

そうなると責任問題ですから、それを糊塗するために「(事前に)分かっていることだ。」としてスカイマークの責任を強調しているのかもしれません。

もっとも、「2000円高速」にしろ「本四の値下げ」にしろ、背景を分析し、各方面の調整をしたうえで理詰めで政策を打ち出しているように見えない大臣だけに、今回の「極めて遺憾」も、当事者能力の糊塗なんていう深い意味は無く、ただその場の感情に任せただけかもしれませんが。
そうした思い込みでの独断専行と言う点では、民主党代表の座を棒に振った「メール事件」から進歩が無いようです。