Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「バーデン・バーデンの夏」レオニード・ツィプキン著(沼野恭子訳)新潮社

2008-10-28 | 外国の作家
「バーデン・バーデンの夏」レオニード・ツィプキン著(沼野恭子訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
冬のロシアを行く「私」の汽車旅。「私」はドストエフスキーの妻アンナの日記を携えています。ドストエフスキー夫妻のドイツへの新婚旅行と「私」の二つの旅が溶け合う物語です。
長くロシアに埋もれていたこの作品をイギリスの古書店でみつけた評論家スーザン・ソンタグが発掘し、彼女の序文つきで新版が刊行されて話題になった作品です。

アンナはもともと彼の口述筆記をしていた速記家で、彼が46歳の時、ふたりめの妻になりました。そのときアンナ20歳、その年の差26!
それなのにアンナがよくできていて、むしろドストエフスキーを包容しているかのようで頭がさがります。
もうちょっとだけ!あと一度だけ!と何度もいって妊娠中の妻を置いて、結婚指輪も質にまで入れて賭けにはまるフェージャ。
オープンサンドのおつりのことで激昂したり、「ここからとびおりるぞ!」と叫んでみたり、私だったらいくら優れた作家でも、彼の妻はやっていけない。
ドストエフスキーがアンナに看取られる最期の場面はとても静かな場面でした。

ドストエフスキーの各作品がところどころに出てくるので、ドストエフスキーの作品を読んでからのほうが面白いと思います。

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