Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「蒼穹の昴(第一巻)」浅田次郎著(講談社)

2008-12-25 | 日本の作家
「蒼穹の昴(第一巻)」浅田次郎著(講談社)を読みました。
「汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう」
中国清朝末期、田舎暮らしの貧しい糞拾いの少年、春児(チュンル)は、占い師、白太太(パイタイタイ)から途方もない予言を受けます。
彼はその予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分、文秀(ウェンシウ)に従って都へ上りました。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に二人は歩み始めます。
この「蒼穹の昴」の続編が「中原の虹」。先に「中原の虹」を第二巻まで読んでしまったのですが、引き返してこの「蒼穹の昴」から読み進むことにしました。

幼い春児、たくましくて優しくてかわいい!
う~ん、やっぱり「蒼穹の昴」から読めばよかったです。残念。大人になった春児の目線から振り返って子ども時代をたどるのと、幼い春児の目線からこの先どうなるのかどきどきしながら読むのとではまったく楽しさが違いますから。

この本では春児、文秀の生きる道筋を追う楽しさだけではなく、科挙の仕組み、内容(天文学的な難しさ)から、宦官の運命の非道さ、手術の様子(めちゃめちゃ痛そう・・・)など中国独自の文化をお勉強としてではなく、小説の中で自然と知ることができて面白いです。

そして浅田さんらしい「芝居として絵になる」場面も数々。
春児が月夜に盲目の胡弓弾きに会う場面。
文秀が楊老子とは知らずに訪問を受け問答する場面。
「君ほどの学問を積んだ人間が、偏屈であろうはずはない。事情は知らぬが、つまらぬ芝居はもうこれきりにしたまえよ」
今まで「落ちこぼれ」と目されてきた文秀の心を一言で裸にした、楊の鋭くも優しい言葉です。

文秀と春児には今後どのような試練が待っているのか・・・。第二巻につづく。

**********************************

2010.10.29追記

以前BSHiで放送されていたドラマ「蒼穹の昴」が、いよいよNHK総合で放送されるようになりましたね!(日曜夜11時から)毎回楽しみに見ています。
田中裕子さんの演じる皇太后が威厳がありつつも母性を感じさせてすばらしいし、春児の京劇姿も美しくてうっとり。
そして文秀などの中国人の方の演技が芝居っ気満載(というか、やりすぎ感・・・)があって日本とは違うなあと、お国柄が感じられて面白いです。
その中で日本人のメンタリティにもばっちりマッチするのが光緒帝の役の張博(チャン・ボー)さん。抑えた演技で、高貴で知的で陰のある皇帝を見事に演じていらっしゃいます。第四回のハマグリ姿もおちゃめ。
ドラマは全25回。最終回まで全部見るぞ~!