Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「レッド・データ・ガール はじめてのお使い」荻原規子著(角川書店)

2008-12-08 | 児童書・ヤングアダルト
「レッド・データ・ガール はじめてのお使い」荻原規子著(角川書店)を読みました。
山伏の修験場として世界遺産に認定される、玉倉神社に生まれ育った鈴原泉水子(すずはら いずみこ)は、宮司を務める祖父と静かな二人暮らしを送っていました。
しかし泉水子が中学三年になった春、突然父親に東京の高校への進学を薦められます。しかも、父の友人で後見人の相楽雪政が、山伏として修業を積んできた自分の息子・深行(みゆき)を、泉水子に一生付き添わせるといいだします。
泉水子がやがて知ることになる自分の生い立ちや家系に関わる秘密とは?

ひっこみじあんで不器用な泉水子が、少しずつ自分を変えていこうとする姿がけなげ。雪政と深行親子は印象は違えどきらびやかで人をひきつけます。このイケメンぶり、荻原作品ならでは。
「はじめてのお使い」とは修学旅行をさしているのかな?
それとも「神の使い」をさしているのでしょうか。
泉水子の舞の場面は「風神秘抄」のラストシーンのようでした。

単発の物語ですが、終わり方からして今後シリーズ化しそうな予感。
もし続巻があるのなら、泉水子の両親、大成と紫子の登場が楽しみ!

「ギフト」ル・グウィン著(谷垣暁美訳)河出書房新社

2008-12-08 | 外国の作家
「ギフト」ル・グウィン著(谷垣暁美訳)河出書房新社を読みました。
高地は「ギフト」を持つ人々が住むところ。
カスプロ家の跡継ぎである少年オレックは、強すぎる「ギフト」を持つ恐るべき者として、父親に目を封印されてしまいます。
幼なじみのグライとともに成長していくオレック。
「西のはて」を舞台に描く三部作の第一作目です。

「ギフト」とはその血縁の者だけがもつ特殊能力。
指差しやまなざし、言葉などを使ってほかの人間や動物に働きかける能力のことです。その能力は一族によって「ねじり」や「呼びかけ」、「もどし」「ナイフ」などさまざま。
オレックとグライは、低地人の流れ者エモンに出会うことによって自分たちの歴史、これからの行く末を見つめ直すことになります。

ファンタジーですが、自分がギフト(能力)を発揮することへの期待と、同時に自分にはギフトがあるのだろうかと不安にさい悩まされる姿、ギフトをどう使いこなしていくか、両親への葛藤など十代の悩みには深く共感できます。
隣の大国のブランター(長のこと)のオッゲ一族の横柄さには本当に腹がたちました。どこにでもこういう嫌なやつはいるんですね。

第二部はまた主人公が違うようですが、次作を読むのも楽しみです。