Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「さあ、犬になるんだ!」オールズバーグ著(村上春樹訳)河出書房新社

2007-03-21 | 村上春樹
「さあ、犬になるんだ!」オールズバーグ著(村上春樹訳)河出書房新社を読みました。
セピア色の絵がなつかしさをかもしだす絵本。
主人公はいたずら少年カルヴィン。彼は仲良しのロドニーと誕生日にもらったチケットで催眠術師「偉大なロマックス」のショーを見に行きます。
自宅に帰ってから、さっそく妹のトゥルーディーに催眠術をかけてみたのですが…。
原題は呪文の言葉なのですが、この邦題はいいですね。中身が気になる。
話は一番最後のオチがいいです。妹かしこい。



「パルムの僧院(上)」スタンダール著(大岡昇平訳)新潮社

2007-03-21 | 外国の作家
「パルムの僧院(上)」スタンダール著(大岡昇平訳)新潮社を読みました。
舞台は北イタリア。主人公は美しく無垢な青年貴族ファブリス。
彼はナポレオン崇拝のあまり、ワァテルローの戦いに衝動的に飛び出していきます。この出来事から物語は始まり、波瀾万丈の展開をみせていきます。

天文学者ブラネス師の予言が意味深い。
「どんな富や地位をもつよりも魂の平安をもって死ぬこと」
上巻までのファブリスのなりゆきを見てるとそれも危ういけれど・・・。
たいして好きでもないマリエッタがらみで人を殺めたり、面白半分でファウスタに恋を仕掛けたり、そして何かというとすぐ「決闘だ!」
なんでそんなに簡単に武器を手に人を傷つけたり自分の命を賭けたりするのかな?
この時代の若者ってみんなこんななの?

それに比べて警察長官モスカの慧眼やサンヴェリーナ公爵夫人の優しさのほうが
魅力的に映りました。
特にモスカが「新聞にいくらでたらめを書かせたって二年もたてば誰も覚えていません。でも誰かひとりでも人を殺せばその家族や親戚は死ぬまで私を許さないでしょう。人を殺さないことの方が私には大事なのです」の言葉。
いつ自分の立場が覆されるか常にさいなみ、恐怖政治を敷く大公につかえながら、できるだけ穏健にパルムの国を支えていこうという、モスカの苦しい立場を表している言葉に思えました。

あちらこちらの警察から追われているファブリスがどうなるか?下巻につづく。