Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「濁った激流にかかる橋」伊井直行著(講談社)

2006-01-24 | 児童書・ヤングアダルト
「濁った激流にかかる橋」伊井直行著(講談社)を読みました。
激流に分断された市(まち)、そこには右岸と左岸をつなぐ異形な橋があります。
その上でくりひろげられるさまざまな物語。8編の連作小説です。
著者の作品は初めて読みましたが、別役実さんのファンタジーの不気味さと、橋本治さんのリアルな破天荒さがミックスされたような、不思議な読後感でした。
8編はそれぞれ主人公や時間軸は異なりますが、別の作品に脇役として登場したりして、立体的に作品世界が楽しめるようになっています。
一番面白かった作品は「霧のかかる騒がしい橋からのひそやかな墜落」です。
本人はいたって筋の通った行動をしているつもりの女性。
でも周りから見るとはた迷惑でずうずうしくて融通が利かない困った人。
その滑稽さとせつなさが一緒に迫ってくる感じがとても印象的でした。