Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「バビロンを夢見て」リチャード・ブローティガン著(藤本和子訳)新潮社

2006-01-14 | 児童書・ヤングアダルト
「バビロンを夢見て」リチャード・ブローティガン著(藤本和子訳)新潮社を読みました。
主人公C・カード。彼は始終バビロンの白昼夢を見ているはさえない私立探偵です。
彼はある日死体を盗んでくれという不思議な依頼を受けます。
結末を迎えてもその真意はわからぬまま。
探偵業を営む現実もバビロンも、どちらも架空の世界のような不思議な作品です。
「オリーブの瓶から油が流れるように」死体を運ぶ、などブローティガンならではの比喩の巧みさも健在。
筋を追うよりただ作品の空気を楽しんでしまった作品。
破天荒な筋書きに、ブコウスキーの「パルプ」を思い出しました。

「200X年文学の旅」柴田元幸・沼野充義著(作品社)

2006-01-14 | 柴田元幸
「200X年文学の旅」柴田元幸・沼野充義著(作品社)を読みました。
柴田さんはアメリカ現代文学、沼野さんはロシア・東欧文学研究の第一人者。
ふたりの文学についてのエッセイが交互に並んでいます。
ロシアにおける村上春樹の読まれ方や、アメリカの漫画、それぞれが訳している作家の現況など現代の文学の空気がいっぱい詰まっています。
池内紀さんなどをゲストに招いた「外国文学は役に立つのか?」の座談会、
レベッカ・ブラウンなどをゲストに招いた「新しい文学の声」の模様も同時収録されています。
ふたりの文学・翻訳に対する熱い思いが伝わってくる作品でした。

「ヒナギクのお茶の場合」多和田葉子著(新潮社)

2006-01-14 | 児童書・ヤングアダルト
「ヒナギクのお茶の場合」多和田葉子著(新潮社)を読みました。
芥川賞受賞作家の8篇の短編集。
多和田さんの作品は初めて読んだのですが、恋愛小説ぐるいの少女が"ボクトーキタン"を追体験する「所有者のパスワード」や、哺乳瓶の乳首に変身する主人公の話「雲を拾う女」など、不思議な話が多いです。
一番印象的だったのは表題作。
緑の髪の舞台美術家と小説家のわたしの交友を描いたものです。
ヒナギクのお茶で紙を染めたり、お盆を憎んだり、ひとつひとつのモチーフが詩的で雰囲気がいいなあと思いました。