Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

『御馳走帖』 内田百著 (中央公論社)

2004-12-22 | 柴田元幸
『御馳走帖』 内田百著 (中央公論社)を読みました。

食べ物、嗜好品をテーマにした随筆集。
鰻やらおからやらライスカレー、シュークリーム、
そして何より大好きな酒・煙草などについて、百先生が自由自在に語ります。

私が好きなのはこの作品の「菊世界」の中の一節。
「蕎麦屋は近所の中村屋で、別にうまいも、まづいもない、ただ普通の盛りである。
日がたつに従って、益うまくなる様であった。
うまいから、うまいのではなく、うまい、まづいは別として、うまいのである。
うまい蕎麦は、ふだんの盛りと味の違ふ点で、まづい。」

また、同著作内「酒光漫筆」の中でも同じようなことを語っています。
「時々飛行機で灘の蔵から持って来たといふ酒を貰ふことがあるが、
味利きをする段になれば、うまい事は確かにうまいと思っても、
私の飲み料と云ふことになると、その、うまいと云ふ点が結局口に合はない
欠点となるので、勿体ないと思ひながら、つい人にやったり、煮酒に下ろしたり
してしまふ。」

この感覚、よくわかります。

百先生は食いしん坊ですが、美食家ではない(?)ようなので、
うんちくなしで、好きなものを語る姿が楽しめる一冊でした。