Simplex's Memo

鉄道と本の話題を中心に、気の向くまま綴ります。

「走り続けた17年間・感動の記録 ありがとう SL あそBOY」を読んで

2005-10-26 22:23:28 | 読書録(鉄道)
先週、通信販売を申し込んでいた「SLあそBOY」記念誌が今日届いた。
早速ページをめくってみる。

復活から再びの引退に至る18年間がビジュアルと新聞記事、それから「SLあそBOY」に様々な立場で関わった人々の回顧から成っている。
収録された「SLあそBOY」復活当時の新聞記事を眺めているだけでも復活時の苦労が偲ばれる。

以前に「SLあそBOY」引退記事を書いた時はその理由として「台枠の傷みが激しい」事を挙げている。その辺りの事情についても本書で説明されていた。
少し書き出してみる。

○2~3年前からは馬力低下により雨天時は空転を起こして動けなくなる事があった。そのため天気予報で降雨が予想される時はDLを立野まで先行させる救援対策を取っていた。
○2005年3月からは台枠の歪みによる動輪軸受けの異常発熱が発生し、自力走行が難しい状況となった。

かようなように車齢83年という蒸気機関車の運行は最後になればなるほど、過酷さを増していった事がよくわかる。

再び本の感想に戻ると、唯一惜しむらくは「記念誌」と謳う割にデータ面が弱いかなと思える点。
せめて復活から引退までの経緯をまとめた年表的な物は欲しかったし、58654の形態変化といったデータ的な面を期待すると「外れ」だと感じるかもしれない。

ただ、本書のコンセプトは「美しい写真やデータの紹介」ではなく、「『あそBOY』に関わった多くの人の魂の記録を残し伝えたかった」という言葉に象徴されるように、「人」に重点を置いている。
編集コンセプトはきちんと反映された内容なので、これはこれで「あり」なのかもしれない。

本書の題名を見て「ありがとう」とはあるが、この種の本にありがちな「惜別」とか「さようなら」といった文言はない。
それは本書冒頭を読めば理解できる。
JR九州社長曰く、「あそBOY」の復活については「鉄道人として何とかしたい、今後詳細な検討を重ねて、将来的な復活の可能性を探り続けていく」としている。
今はこの言葉を信じてその時を待とうという気分になっている。

もし「あそBOY」の復活を探り続けていくというのであれば、その時まで「あそBOY」が牽引していた客車も籍を残しておいて欲しいと思う。
機関車だけ復活しても、牽引する客車が無ければ興ざめというものだから。

<データ>
「走り続けた17年間・感動の記録 ありがとう SLあそBOY」
企画・発行 九州旅客鉄道株式会社 九州支社
取材・制作・著作 株式会社 マインド。
定価 1500円(本体1425円+税75円)

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