社会人大学院で学ぶ技術経営

社会人大学院で技術経営を学びながら日々の気づきを書きとめてみます.

製造業における「カスタマーからクライアントへ」

2006年09月16日 | サービスサイエンス
近藤隆雄 著「新版 サービスマネジメント入門―商品としてのサービスと価値づくり」の73ページに「カスタマーからクライアントへ」という一節がある.

本書によると,カスタマーとは「企業にとって無名の存在,マス(大衆)の一構成員,統計的存在で,その取引は総計されてコンピューターのプリントアウトで表現される.また,カスタマーにサービスするのは,たまたま手の空いている従業員である」.

これに対して,クライアントは,「名前をもち,マスではなく個人として認識される.彼の要求は個別に受けとめられ,バックグラウンドのデータ,これまでの取引状況などがデータベースに記録される.対応する従業員は彼の要求に応えられる能力を備えた者,または特別に任命された者である.」

関係性マーケティングの視点からは,カスタマーをクライアントにして収益性を高めたいということだが,「市場が求める高品質の商品を効率良く生産し,効率よく大量に販売する(同書53ページ)」ことによって利益を得ることが得意な製造業にとっては,「大量のクライアント」はスキーム上のギャップ/アンバランスが存在する.

サービスシステムでは,システム/プロセス全体でのバランスの良さが求められる(同77ページ).お得意のITを駆使してもアンバランスは完全には解消できない.かえって中途半端で失敗するケースも多い.製造業のサービスイノベーションのジレンマの1つである.


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