ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

※ブログ下記移転しました(2015年7月以降)
http://ssk-journal.com/

信じてはいけない“政府発”の原発情報

2011年07月09日 | Weblog


 「震災以降、日本では信じられないことが次々と起きている。「辞める」と言って人を騙していつまでも辞めない首相がいたかと思うと、国民に何の相談もなく勝手に自民党と手を組もうという官房副長官がいたり、「復興」の大義とどさくさに紛れて増税を目論む財務相が現れたり。

 そんななか、新たな驚天動地の発表をしたのが海江田万里経産相だ。震災からわずか3カ月、福島第一原発の事故も収拾のメドがまったく立っていないこの時期に、全国の電力会社に指示していた緊急対策が完了したとして、原発の安全宣言を出してしまったのだ。しかもこの週明けから、全国の原発立地自治体に定期点検などで休止している原発の再稼動を要請するというのである。あいた口が塞がらないとはこのことだ。

 発表があったのは18日土曜日のこと。驚いたことに、この唐突な“安全宣言”について閣内がバラバラのようなのだ。翌19日の朝日新聞朝刊の〈原発 急いだ安全宣言〉という記事は、今回の安全宣言について菅直人首相の周辺が「海江田経産相の独自判断だ」と解説していることを伝えている。〈首相官邸では、枝野幸男官房長官は、停止中の原発再稼動を容認せざるを得ないとの姿勢だ。ただ、中部電力浜岡原発の全炉停止を要請した菅直人首相は、慎重姿勢を崩していない〉(同記事より)というのである。いったいこんなことがアリなのか?

 首相は先のG8で海江田経産相と打ち合わせもないまま、いきなり国内1千万戸の屋根にソーラーパネルの設置を目指すとする「太陽光構想」をぶち上げてしまった。まさか、その意趣返しでもあるまい。

 同記事の解説によれば、20日に行われるIAEA(国際原子力機関)の閣僚会議に間に合わせるためだったという。海江田経産相がこの会合で、日本の原発の安全性をアピールしたかったというのである。

 バカも休み休みに言って欲しい。

 そんなことで安全を宣言されたら国民はたまったものではない。福島の事故で明らかなように、そもそも原発に安全などあり得ないのだ。安全を前提にしている以上、同じ過ちの繰り返しになるだろう。原発は安全ではない。とくに地震大国日本では、必ず災害に見舞われると考えたほうがいい。対応によっては福島第一原発の二の舞になりかねない。そのリスクを負ってもなお、再稼動するかどうかの判断と、最悪の事態に対する備えが必要だろう。

  今回、海江田経産相が「安全」の根拠としている「緊急対策」の中身がまたお粗末だ。

  •水素爆発が起きないようにガスを逃がす手順を確認する

  •乾電池を使ったトランシーバーなど代替通信手段を用意する

  •事故が起きたとき用に個人線量計を確保する

  •がれきを撤去するための重機を確保する……など。

  これはほんの一部だが、いずれの対策も想定の範囲内のものばかり。それどころか、いまごろこんなことを言っているのかという内容だ。いまだに「最悪の事態は起こらない」という前提に立っているとしか思えない。どうしても原発を動かさなければならないとしたら、私は最低でも次の準備が必要だと思う。

  •今回の福島原発規模の事故を想定した大規模避難訓練の実施

  •快適で十分な広さの避難場所と住民の移動手段の確保

  •放射性物質の飛散状況の予測と、どのように国民に周知するかの準備

  •周辺住民へのヨウ素剤の配布と摂取タイミングの指導……など。

  どんな船にも必ず救命胴衣が載せてある。それは、どんな船でも沈没や転覆の危険から逃れられないから、その準備がしてあるのだ。原発もそれと同じで、事故から逃れることはできないのだ。その前提でものを考えないと、また大変なことが起きる。フクシマの事態がそれを教えてくれた。もし自分の命が惜しかったら、政府の「安全宣言」など、真に受けてはいけないのだ。」


 

 2011年6月20日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「今日のニュースに一言」で週刊朝日前編集長・山口一臣氏の記事

「信じてはいけない“政府発”の原発情報」

を聞き書きしました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。