ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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児童がひかれても“危ない通学路”が改善されないワケ

2012年11月05日 | Weblog

2012年9月21日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「児童がひかれても“危ない通学路”が改善されないワケ」
 
を企画、取材、執筆しました。
 

 
 けさの各紙は「全国の通学路の6万ヶ所が危険」という記事を一斉に掲載している。これは文科省、国交省、警察庁が全国の公立小学校の約9割にあたる2万校の通学路のうち、「道路が狭い」「大型車が頻繁に通る」「見通しが悪い」など事故の危険が考えられる約7万ヵ所を点検した結果、6万ヵ所が歩道や信号、横断歩道の設置、児童を安全に誘導する人員の配置などの安全対策が必要と判断したというもの。

 この調査の背景には、今年4月の京都府亀岡市で集団登校中の児童ら10人が車にはねられ計3人が死亡、7人が重軽傷を負った事件や、昨年10月に岡山県津山市で車同士の事故に登校中の児童らが巻き込まれ7人が重軽傷を負った事件など、通学路での事故が絶えないという、「この国の子供を取り巻く劣悪な道路事情」がある。ではどうするばよいか?

 調査結果を受け、奥村展三・文科副大臣は「学校、教育委員会、道路管理者、警察が連携を密にして対策を進めないといけない」(日本経済新聞)と述べているが、通学路の問題の本質を理解していない発言と言わざるを得ない。

 例えば、08年3月29日付の日刊ゲンダイの記事によると、自公政権下の08年3月29日に、“道路族のドン”といわれた古賀誠議員の地元・福岡では、国交省所管の地域高規格道路「有明海沿岸道路」(総延長55キロ)が部分開通した。福岡県大川市と大牟田市を結び、古賀の選挙区のど真ん中を貫く自動車専用道路だ。総事業費は2,380億円。地元では“誠ロード”と呼ばれている。

 01年以降の3,000万円以上の入札結果を情報公開請求したところ、この道路工事の受注額は計425億円。そのうち、着工前年の99年以降に古賀氏に献金した業者の受注額は185億円、全体の44%も占めていた。しかも、献金業者の落札率が平均96%と異常に高い。

 利権道路はまだある。古賀の威光といわれる福岡県所管の道路建設は14カ所、トータルの事業費は3,312億円に上る。道路特定財源は50~55%つぎ込まれているが、やはり、これらの道路を受注した業者のうち、古賀に献金している業者は49社、9,000万円に達していた。

 しかも百歩譲って、地元の役に立っているならともかく、ある地元住民は誠ロードについて「地元の人は使いませんよ。下道を走っても、それほど時間は変わらんけんね」と嘆く。

 この記事のように、利権道路はふんだんにつくらる一方で、実は、現地の下道の通学路は驚くほど劣悪で、通学する児童とスレスレの幅しかとれず、車を運転することが怖くなる道路もあったほどだ。そこを大型車も走っており、事故が起きない方が不思議なくらいだった。「なぜあんな危険な道路のまま放置しているのか?」と自治体の道路課の職員に聞いたところ、「道路拡張の計画は立てていますが、なかなか予算がつかない状態です」と言うのみ。要するに、土建業者や用地買収で得をする地主たちを潤すためだけの高規格道路をつくることに専念して、子供たちの通学路を守ることは「予算がないため」といって後回しにしているわけである。

 予算の豊富な道路族のドンの地元でさえ、この有様。全国の道路も推して知るべし。冒頭の通学路6万ヵ所が危険、という記事はそのことを証明しているといえよう。

 ではどうすればよいかというと、全国の高規格道路の建設の大半を中止して、その分の予算を通学路の改善にあてれば済む話である。有権者は、危険な通学路を通るたびに、そのことを考える必要があるのではないか?(佐々木奎一)


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