ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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衆院選で隠れがちな『国民審査』とは!?

2012年12月28日 | Weblog

2012年12月10日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「衆院選で隠れがちな『国民審査』とは!?」
 
を企画、取材、執筆しました。
 
 
 
 けさの新聞は休刊。週末は、9日付の毎日新聞朝刊に「学ぶ 育てる 教えて! デスク 裁判官にも投票するの?」という記事があった。これは衆院選と同時に行われる「国民審査」について説明したもの。

 「国民審査」とは、最高裁判所の15人の裁判官を国民が審査する制度で、憲法79条に定められている。衆院選の投票所に行ったことがある人ならご存知のように、国民審査の投票用紙には、前回衆院選前後に任命された新しい裁判官の氏名が印刷されている。有権者は、辞めさせたい裁判官がいれば「×」をつけて、×印が有効票の半数を超えれば辞めさせることができる。「○」と記すと無効票になってしまい、信任する場合は「白紙」とするのが特徴で、文字通りの白紙委任をする制度といえよう。これまでこの制度で辞めさられた裁判官は絶無。

 今回は10人の裁判官が国民審査に付される。各裁判官の下した判決のうち、同紙が報じた分を調べたところ、例えば、こんな判決があった。

 02年、東京都のラーメンチェーン経営会社について「カルト団体が母体」と中傷する文章を掲載したとして、名誉棄損罪に問われた会社員男性の被告(38)は、一審判決で無罪、二審で罰金30万円の逆転有罪となり、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は、「ネットの情報は不特定多数が瞬時に閲覧可能で、時として深刻な被害がある。それ以外の表現手段と区別して考える根拠はない」と判断し、「被告は事実関係を会社に確認しておらず、罪が成立する」と結論づけ、二審判決を確定させた。(10年3月17日付朝刊)

 ファイル共有ソフト「Winny(ウィニー)」を開発・公開し、インターネット上で映画などの違法コピーを手助けしたとして、著作権法違反ほう助罪に問われた元東京大助手のプログラマー・金子勇被告(41)は、1審判決で有罪を言い渡されたが、2審で逆転無罪となり、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は、適法にも違法にも利用できるウィニーを中立価値のソフトだとした上で、「入手者のうち例外的といえない範囲の人が著作権侵害に使う可能性を認容して、提供した場合に限ってほう助に当たる」との初判断を示した。金子被告については、著作権侵害が利用者の4割程度にまで拡大するとは認識していなかったとして、ほう助の故意はなく無罪と結論付けた。なお、裁判官5人のうち1人、大谷剛彦裁判官は「ほう助犯が成立する」と反対意見を出していた。(11年12月21日付朝刊)こうした判決が毎日のように下されている。

 ちなみに、「サイコーですか? 最高裁!」(著: 長嶺超輝/光文社刊)によると、国民審査制度のルーツとされるアメリカでは、50州のうち21州で、「裁判官公選制」により、民衆の直接投票によって裁判官が選ばれている。だが、裁判官を投票で選ぶことで、宣伝や報道が影響力を持つあまり、資質のない裁判官が多く当選するようになっていった。その弊害に風穴をあけるため、1939年、アメリカ法曹協会により、国民審査制度が提案され、翌40年にミーズリー州ではじめて導入され広がった。以後、国民審査によって辞めさせられた裁判官は数知れないという。

 アメリカの裁判官は、人々にとって身近だ。日本の裁判官は、まだまだ遠い。真の司法改革は、うえんなようだが、国民が裁判官の判断にもっと関心をもつことから始まるのかもしれない。(佐々木奎一)


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