3月26日(火)
「よくなってきた最近の糖尿病治療について」
の講座を開催いたしました
日 時 平成25年3月26日(火)16:00~17:00
テーマ 「よくなってきた最近の糖尿病治療について」
講 師 服部 良之 医師
会 場 佐野市民病院 A棟5階研修室
糖尿病とは、体内にとり入れられた栄養素がうまく利用されず、血液中にブドウ糖(血糖)が多くなる状態です。
糖尿病やその予備軍といわれている人は、そうでない人よりアルツハイマーやがん死亡、心筋梗塞、脳梗塞になる危険性が高いことが九州大学の研究で明らかになりました。(2007年9月2日、朝日新聞)
インスリンとは、膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモンです。
糖尿病には、膵臓からのインスリンの分泌不足による場合の1型糖尿病と、肥満などによりインスリンの作用(効果)が出にくいの場合の2型糖尿病があります。
日本人の糖尿病患者さんのうち、約9割以上が成人に多い2型糖尿病です。
高血糖状態が長く続くと、動脈硬化や血管がつまったりすることにより、糖尿病細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害) および動脈硬化性疾患(虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症)などの危険性がでてきます。
健康な人と変わらない日常生活の質と寿命を確保するためには、血糖、身体、血圧、血清脂質の良好なコントロールにより合併症を抑制することが重要です。
今回は、血糖をコントロールし、合併症を抑制するための3つの治療法についてのお話でした。
(1)インクレチン製剤
インクレチンとは、食事を摂取すると小腸から分泌され、膵β細胞のインスリン分泌促進作用に関与する主要な消化管ホルモンの総称で、代表的なインクレチンはGLP-1、GIPの2種類です。
ブドウ糖を経口的に投与した場合の方が、静脈(注射)に投与した場合よりも、より多くインスリンが分泌されます。
これがインクレチン効果です。
インクレチンは血中で酵素DPP-4により速やかに分解されてしまうため、2型糖尿病患者では、インクレチン効果が低下しており、食後高血糖に深く関与していると言われています。
DPP-4阻害薬は、DPP-4の働きを阻害し、抑制してGLP-1を長く活性化させる効果があり、持続投与しても高血糖の時だけ作用するので低血糖を起こす心配がありません。
(2)インスリン治療(特にBOT療法)
今服用している飲み薬を続けながら「持効型(じこうがた)」と呼ばれる、効果が長く続くインスリンを1日1回だけ注射する療法(BOT療法)です。
持効型溶解インスリンの利点
作用持続時間は最長24時間であるため1日1回の注射で治療可能
明らかなピークがないので、低血糖(特に夜間低血糖)の発現リスクが少ない
個体内変動が少なく、再現性が良いため、朝食前の空腹時血糖が安定する
無色透明であるため、撹拌する必要がない
体重増加を抑制する作用が示唆されている(インスリンデテミル)
BOT療法は早期に、時期を逃さずインスリンを導入し、適切な治療を継続することにより、本来の膵臓の機能が回復してくると、いずれはインスリンが必要なくなる可能性もあるそうです。
(3)糖質制限食
カロリー制限食は、摂取カロリーの超過をなくすことで肥満を改善し、インスリンの効き目をよくするのに対し、糖質制限食は、食後血糖を上げないのでインスリンの必要量が少なく、血糖値を下げるとともに肥満改善の効果があります。
1日3食のうち、朝・昼に比べ夕食のボリュームが多くなるご家庭が多いのではないでしょうか。
食後、糖質に変化する炭水化物(ごはん・パン類・麺類)の摂取量を夕食の時だけでも制限するなど工夫することで食後血糖の上昇を抑制しましょう。
他に、魚油やオリーブオイルなど良質な油や、食物繊維を多く含む食品、野菜を多く摂取しましょう。
糖分が多い果物は、食べ過ぎに気をつけましょう。
糖質制限食は体脂肪率が高い人、運動が苦手な人、食後に眠くなることが多い人などにおすすめですが、腎機能が低下している人、やせ型で体脂肪率がかなり低い人には注意が必要です。
ここでは3つの治療法について簡単にご紹介しましたが、詳細については診察の際、専門医にご確認ください。
医師に相談して、自分に合う治療法を取り入れてみませんか。