身近な問題で宇沢氏の社会的共通資本を考えてみましょう。
お盆で埼玉の実家に帰った時に、母から近所のスーパーマーケットが閉店して日用品の買い物に支障を来しているという話を聞きました。私の実家はJR大宮駅から徒歩数分の町中なのですが、母は買い物難民になってしまったのでした。こういう現象は町中だからこそ起こっているようで、むしろ郊外の方がイオンなど大規模ショッピングセンターがあるので車があれば問題はないことになります。まあ実家の場合、近所のスーパーはいずれ新装開店して復活するようなのでそんなに心配はないのですが。
買い物難民という現象には二つのフェイズがあるように見えます。第一のフェイズは近所の商店街や駅前商店街が衰退して買い物のできる場所がなくなることです。但し車があれば郊外の大規模ショッピングセンターに行けるという状態です。地方は大体こういう状態になっています。車があれば問題は少ないとはいえ、視力や運動神経の衰えなどで運転に支障を来している高齢者の方には深刻な問題です。
第二のフェイズはもっと深刻です。人口減少で売り上げが減少して、郊外型大規模ショッピングセンターが撤退してしまい、車で行ける範囲にさえも買い物ができる場所が無くなることです。急速な人口減少が進む日本では、このような第二のフェイズが数多く発生してくるでしょう。 こういう問題は首都圏や京阪神圏のような人口密集地ではあまり意識されませんが、地方では既に起こっている現象です。
「買い物」は典型的な市場経済の行動ですが、日本の地方社会では市場の調節機能がうまく働かないため、買い物難民が発生することになります。つまり日用品販売店(いかなる業態であれ)は日本の地方社会では社会的共通資本の一つということになります。何らかの公共的調節を働かせる必要がある・・・ということになります。
このように高齢化・人口減少の進む日本では、社会的共通資本の重要性はますます高まっていくのではないでしょうか。