おるすばん
埼玉県議会で,小学校3年生(9歳)以下の子どもの「放置禁止」を盛り込んだ虐待禁止条例改正案が自民党県議団から提案され,13日にも議決される可能性があると報じられていたが,県議団は一転提案を取り下げることにした。
提案の内容は,小学校3年以下の子供を一人で放置することが「児童虐待」に当たるとして,これを禁止するという。留守番,公園,車内に一人でいさせることがそれに相当するといい,18歳未満の兄弟にあずけることも駄目だという。
罰則規定はないが,県内の保護者からは,親を締め付けるものと,困惑の声が上がり,さいたま市内の公立小中学校PTA協議会では,本会議でこの案を可決しないよう求める署名活動を始め,ホームページページに反対の見解を表明していた (以上朝日新聞10月9日記事) 。
また,各紙が伝える専門家の意見も,非現実的で親を委縮させ分断させるものだとか,親に求める前に児童虐待を防ぐ社会的整備を検討すべきだとかいった,否定的なものが多かった。獨協大学和田一郎教授(こども論)は,埼玉県は児童虐待への対策が全国ワースト2で,そんな条例を作るより,虐待への対応をっ考えるのが先だと指摘している(毎日新聞デジタル版)。
確かに,親の保育義務違反による児童虐待は存在する。刑事罰によってそのことをとがめる以前に,予防することが重要であることも理解できる。しかし,そのことが条例などによって,個々人の置かれる立場を考慮せずに一律に禁止することで達成できるか,あるいはすべきであるか,わたしは疑問に思っていた。うっかりすると,小4以上の子どもを放置しても虐待ではないという免罪符を与えかねない。
そして,思い出したのが,子供が小さかった時の愛読絵本『はじめてのおるすばん』である。しみずみちを作・山本まつ子絵により,1972年に岩崎書店から出版されたこの絵本は,不朽の名作として,今でも根強い人気を得ているようである。
(余談だが,作者のしみずさんはお絵かき教室を開いていて,そこに通っていたわが子はこの先生が大好きだった。)
物語はシンプルである。3歳の女の子のみほちゃんが,お母さんにおるすばんを頼まれ,来訪者との愉快な会話の「冒険」をしながら,立派に「務め」を果たし,帰ってきたお母さんからほめられて,おみやげのプリンをもらう。
ここにある3歳の女の子の一人おるすばんは,放置による虐待ではない。親子のほのぼのとした愛情が表現されている。
一定時間児童が一人で置かれても,それが全て虐待ではない。そこに保護者と児童の間の愛情が存在するかが問題なのだ。その愛情の発露を妨げる要因にこそ,注意が向けられなければならない。
STOP WAR!
アメリカあたりの制度を聞きかじったか,誰かの入れ知恵で動いたのか,いずれにせよお粗末極まりない事件でした。