♪あなたの燃える手で、私を抱きしめて♪この歌を聞くと、私の胸は切なさでいっぱいになり、
じわっと涙が溢れてきてしまう。
人は、しばしば歌に自分の身に起きた出来事を重ね合わせ、思い出の箱に閉じ込める。
しかし、私がこの歌を聴くとき、脳裏に浮かぶのは、私自身の思い出ではなく、
この歌を作り出したエディット・ピアフのことである。
ある時、ニューヨークで講演をしていたピアフの元に、フランスから恋人が船で来ることになってい
た。「とても待てないわ、飛行機で来て」ピアフは、電話で彼に言った。そして、その恋人の乗った飛
行機が墜落……。そのような出来事があった後、この『愛の賛歌』を、ピアフはつくった。
この歌に、そんな悲しい背景があったのだと知って以来、この歌はただの『愛の賛歌』ではなく、
『ピアフの愛の賛歌』として、私の心に強烈に焼きついたのだった。
生きている間、人は何度不尽な不意の別れを経験しなければならないのだろう。そんな別れの中で
も、事故による愛する人との別れ、一番辛いことではないだろうか。
二年程前のこと、私は彼と会う為に、約束の場所で待っていた。三十分経ち、
一時間経っても彼のバイクは現れなかった。まさか…私の心の中には『事故』の二文字が渦巻いていた。
(警察に問い合わせようか?)そんな思いも抱きつつ、私は待った。
彼から家に連絡が入ったのは、二時間以上後のことだった。彼は、やはり事故に遭っていたのだ。
バイクの破損は酷かったが、幸いにも彼自身に傷はあまりなかった。「時間に遅刻しそうだったから」
と事故の理由を言う彼に、「遅刻しても怒らないから、安全運転をして」としおらしく、その時の私
はいったのだった。
人生という旅路において、人は皆、片道切符しか持っていない。あの一言が、あの行動がなけれ
ば……後でそう思っても、決して始点まで引き返すことはできないのである。
じわっと涙が溢れてきてしまう。
人は、しばしば歌に自分の身に起きた出来事を重ね合わせ、思い出の箱に閉じ込める。
しかし、私がこの歌を聴くとき、脳裏に浮かぶのは、私自身の思い出ではなく、
この歌を作り出したエディット・ピアフのことである。
ある時、ニューヨークで講演をしていたピアフの元に、フランスから恋人が船で来ることになってい
た。「とても待てないわ、飛行機で来て」ピアフは、電話で彼に言った。そして、その恋人の乗った飛
行機が墜落……。そのような出来事があった後、この『愛の賛歌』を、ピアフはつくった。
この歌に、そんな悲しい背景があったのだと知って以来、この歌はただの『愛の賛歌』ではなく、
『ピアフの愛の賛歌』として、私の心に強烈に焼きついたのだった。
生きている間、人は何度不尽な不意の別れを経験しなければならないのだろう。そんな別れの中で
も、事故による愛する人との別れ、一番辛いことではないだろうか。
二年程前のこと、私は彼と会う為に、約束の場所で待っていた。三十分経ち、
一時間経っても彼のバイクは現れなかった。まさか…私の心の中には『事故』の二文字が渦巻いていた。
(警察に問い合わせようか?)そんな思いも抱きつつ、私は待った。
彼から家に連絡が入ったのは、二時間以上後のことだった。彼は、やはり事故に遭っていたのだ。
バイクの破損は酷かったが、幸いにも彼自身に傷はあまりなかった。「時間に遅刻しそうだったから」
と事故の理由を言う彼に、「遅刻しても怒らないから、安全運転をして」としおらしく、その時の私
はいったのだった。
人生という旅路において、人は皆、片道切符しか持っていない。あの一言が、あの行動がなけれ
ば……後でそう思っても、決して始点まで引き返すことはできないのである。
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