邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「三年身籠る」

2008年02月16日 | ★人生色々な映画
なんと、「三年身籠る」!
女ならぎょっとしてしまう言葉である。

そんなタイトルの恐ろしさとは裏腹に、
主人公冬子(中島知子)は大きなおなかをかかえて
極めて平穏な日々を送っている。

母(木内みどり)や祖母(丹阿弥谷津子)ものんきに見守っている。

コミカルな音楽を聴いているうちに
こちらも次第に「そんなこともあるかな~~」と思ってくる。

がしかし
彼女を取り巻く世界はどこかいびつである。

女だけの墓参、過激に美味しそうな食事が並ぶ宴、
絶えずわめきちらす妹(奥田恵理華)、美しすぎる青空
奇怪な女装の彼(塩見三省)。浮気している夫(西島秀俊)との
静かで奇妙な会話。
男たちに憤っているような妹の言葉は
相手へのものではなく、すべて独白のようだ。

柔らかな違和感が漂っている。

内なる父親に向けて日記のように手紙を書き
周囲のノイズを全てシャットアウトしている冬子。
自分の内面に深くこもっている彼女だが
胎児と会話していくうちに
次第に自己が開放されていく。
ダンナにもだんだん父親の自覚が出てくる。

出産は原始的で偉大な営みだ!
全てはここから始まる。

びっくり!のラストを見ると
三年・・は必然的な時間だったのかも、と納得してしまう。
そんなこともあるのかも。
ナイナイ。

オツな味のファンタジー・・というか
SFだ。

監督 唯野未歩子
原作 唯野未歩子
脚本 唯野未歩子
公開年 2006年

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日本映画専門チャンネルでは唯野未歩子監督作「三年身籠る」と監督インタビューを放送。
あなたはなぜ映画をつくるのか?
唯野未歩子「『目標を持たない』、というのもあると思う。自分の目の前にある事を一生懸命に
やる、狭い範囲のことだからこそ集中して全力で・・・
リンク先はこちら
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日本映画専門チャンネル 
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「タカダワタル的」

2008年02月08日 | ★人生色々な映画
「ブラザー軒」という歌が好きだ。

男は七夕の夜、かき氷屋に入る。
硝子簾がキラキラ波うつ。
あたりには氷を噛む音。
やがて
死んだ父親と妹がやってきてそばに座り氷を食べ始める・・
二人には言葉が無い。二人は僕が見えない。

菅原克己さんという詩人が書いた詩に高田渡が曲をつけた、
あの世とこの世が混ざり合う七夕の夜の歌。

マリー・ローランサンも金子光晴の詩も
彼の曲がついてあの歌声が乗ると
まったく思いも寄らない方向から
聞くものの心にひたひたと入り込み新しく蘇る。

愉快なステージでの喋りや
街を飄々と歩く姿、
自宅での様子から生き様が浮かびあがってくる。
息子さんである高田漣さんのインタビューからは
偉大な先輩ミュージシャンへの尊敬の念が感じられた。

高田渡はいつも陽気に酔っぱらっているけど、
ギターを背負うとやっぱり半径2mにはただものでは無い風が吹く。
もちろんだが、普通のオジサンではナイ。

ついこのあいだ俳優の佐野史郎がテレビで語っていた、
伝説の中津川フォークジャンボリーでの
ステージがちょっと映る。
当然姿は若いが、歌声は変わらない。
当時松江の中学生だった佐野少年も貯金をはたいてかけつけたそうだ。

あれから
30数年経って
みんなが髪を切って会社に入ってスーツを着て満員電車に揺られ車を買い
家のローンを払ってヒルズ族がどうたら言っていた時も
彼はずっと中央線や地方のライブハウスで歌い続けていた。

追っかけをしていたという、柄本明も言っているけど、
そんな生き方は真似したくても出来ないって。
私たちは彼の歌を聴いて
自分が捨ててきてしまったもの、
大切で懐かしいものを思い出すしかないのだろう。
だがこの映画を撮ったのは
70年代生まれの監督さんというのはとても興味深い。
若い世代に彼の歌、彼の生き方はどう映るのだろうか。

コマーシャルで使われた「私の青空」は最高にゴキゲンな名曲だ。
昔エノケンも歌っていたそうだけど
こんなにいい歌だったっけ?

亡くなってからがぜん
再評価が高まっている彼だが、
その魅力があますところなく詰め込まれた
続編ともいえる「タカダワタル的ゼロ」が、
5月にテアトル新宿・吉祥寺バウスシアターにて公開決定だそうだ!

2003年 タナダユキ 監督

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日本映画専門チャンネルでは
タナダユキ監督作「タカダワタル的」と監督インタビューを放送。
あなたはなぜ映画をつくるのか?
タナダユキ「映画はたくさん嘘をつく。本当は夜なのに昼のシーンとして描いたり、
実際は存在していない人物が登場したり・・・
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「蛇イチゴ」

2008年02月03日 | ★人生色々な映画
ユーモアという感性は
人生観、物事の見方に深くかかわってくる重要な要素だと思う。
黒澤明、小津安二郎しかり。

数々の新人賞を総嘗めした西川美和監督28歳のデビュー作
「蛇イチゴ」には
そこはかとないおかしみが漂う。
絶妙に入る音楽も面白い効果をあげている。

深刻な場面なのに可笑しい。
可笑しいのにせつない。
悲しいけど恐ろしい。

なんとも狂おしい物語だ。

家族のために働く父(平泉成)、
痴呆の舅を介護する明るい母(大谷直子)、
教職についているしっかりものの娘(つみきみほ)。
そして十年ぶりにまいもどってきた
問題ありの長男(宮迫博之)。

おじいちゃん(笑福亭松之助)リアルすぎ!
宮迫博之、このうえなく胡散臭い。しかし愛嬌ある!

どこにでもありそうな家庭を通して
人間の持つ複雑な内面をあぶりだしていく。
是枝裕和が惚れ込んだという
達者な脚本は現実感を持って登場人物の人とナリを浮かび上がらせる。

人の長所は時と場合、
対する相手によっては欠点になり、その逆もあり得るのかもしれない。
一見幸せそうな家族に潜む深い闇は
ふとしたきっかけでむき出しになり、がらがらとその均衡は崩れていく。

脚本と、映像表現の巧みなバランスにノックアウトされた。
丁寧な演出の妙にも感動した。

そういえば子供の頃、
「蛇が食べるから食べちゃダメ」と言われた「蛇イチゴ」
禁断の果実はどんな味がするのだろうと思っていた。

それまでのリアルな生活感から一転する
後半、暗い森での場面が大変幻想的で美しい。

ラストの鮮烈な映像とつみきみほの表情に
あなたもきっと魅了されることでしょう。

2002年 西川美和監督 
プロデューサー: 是枝裕和
脚本:西川美和 撮影:山本英夫 音楽: 中村俊

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西川美和監督作「蛇イチゴ」と監督インタビューを放送。
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西川美和「何かに迷った時、どちらを選んでも大丈夫だと思う。
道を選ぶことそのものが重要。
そうすれば道は開けるから。選ばないで迷っていると・・・
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