邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「座頭市あばれ火祭り」

2006年10月17日 | ★ぐっとくる時代劇
別名「座頭市対闇公方

勝手に名前をつけて
長年憧れていた作品。

どういうわけか、
レンタル屋でも
この「あばれ火祭り」だけは無かった。
台詞にこれでもかと差別用語が
使われているからだろうか??
VHSは発売されているようである。

闇公方」と呼ばれ、恐れられる裏社会のドンは盲目であった。

武士道残酷物語」のサディストな殿様もよかったが、
森雅之の悪役、最高!

勝新と森雅之、
対照的なふたりが碁を打つ貴重な場面があり、
絵がきまりすぎて気分が悪くなるほどであった。
声は抜群だし。
カメラは宮川一夫だし。

勝新は脚本も初執筆してノリノリ。
座頭市は腕はたつのはもちろんだが
ユーモラスな面も持つイイヤツ・・となっている。

ピーターが市にまとわりつく
チンピラ小僧を演じていて、ぶっきら棒な口調が可愛らしい。

ピーターを可愛いと思ったのは初めてだけど、
「中性的で不思議なボクちゃん」って感じで
『乱』の池畑慎之介より、はるかに魅力的だ。

崖ぷちに咲く
白百合のような大原麗子
淫蕩な妻(吉行和子)に振り回される狂気の浪人仲代達矢など
出演者は大盤振る舞いの豪華さである。
その中でもやっぱりピカイチは
悪の大王、闇公方様で、
思わずというか当然のように声援を送ってしまった。

狂四郎シリーズもそうだけど、
誰も主人公に勝てないとはいえ
魅力的な悪人が登場するとがぜん盛り上がりますね!

*映画の中のイイおんな*
大原麗子;レイコは花である。ここでは崖っぷちの白百合と書いた。
「市さん・・」とひと言言うだけでもつかみオッケ~である。
森雅之との「黄金の絡み」もあってドキッとさせるが
あくまでもチラリチラリ、とだけで気をもたせる。

1970年 監督  三隅研次
脚本   山田隆之 勝新太郎
原作   子母沢寛
撮影 宮川一夫
音楽   富田勲
美術   西岡善信

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「クライマーズ・ハイ」後編感想

2006年10月13日 | ★TV番組
前編の行き詰る展開は
後編へともつれ込む。

だがしかし
何かが違う・・と思ったら演出家が変わっていた。

演出家でかなりドラマは変わるものですね。
デフォルメのツボが違うというか、
狙っているポイントが異なっているような印象を受けた。

面白かったですけど前半が良すぎたのかも。

もっとはっきり言うと、
わかり易くなりすぎたような気がする。

ストーリーの面白さもさることながら
前編は
人物描写に陰影があって
屈折したところが見えて面白かったのだけど。

原作者の横山秀夫は元新聞社に勤めていたそうだ。
なるほど社内の喧騒が生き生きと描かれるわけだと納得した。

後半は
大スクープを掴んだ時の「記者的クライマーズ・ハイ」の状態から
我に返るまでにいたる切迫した心理描写と、
登山中、あってはならない最低最悪の弱気から
「息子」がキイワードになって立ち直る描写は面白かった。

映像的には「崖」とか。

ジャーナリズムに対する
悠木の考え方は賛否両論あると思うが、
報道の在り方をもう一度考えてみたくなるドラマだったと思う。

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「破れ傘長庵」

2006年10月04日 | ★ハードボイルドな映画
60年の「不知火検校」コンビ、
森一生監督がメガホンを取り、
犬塚稔が脚本を書いている。

犬塚は座頭市シリーズの記念すべき第一作目
座頭市物語」の脚色も手がけている。

といった観点からすると、
悪のヒーローがパワーアップして
帰ってきたという図式なのですが、
これはシャレになりませんわ~~

お化けが出ないだけで、
この物語は言ってみたら「ホラー」だ。

と、ぼろくそに言われるだけのことは十分にある悪党が主人公。
同じ「破れ傘」でも「刀舟」とは大違い。

想いを寄せていた女に失望したのが発端か、
生まれながらのワルなのか。
無免許医者、長庵(勝新太郎)はライクアローリングストーン、
鬼畜街道をごろごろと転がっていくのである。

伝統的な「怪談もの」だと、中盤あたりから
非道の限りを尽くす主人公に
亡者が復讐するので、
観客は『そら見たことか』「お天道様はみていらっしゃるのだな」と
安堵するのだが、
ここでは白黒のコントラストが美しい画面に
長庵の悪事がトントン拍子にエスカレートしていくさまが描かれる。
典型的な傘張り浪人に扮した
あの天知茂までもが
哀れにも毒牙にかかってしまうにいたっては
呆然とする。

寺の鐘がご~んご~んと鳴るラストに
恐ろしいほどの無常観が漂っている。(「不知火検校」に通じる)

悪人と問題アリの善人たち、
人物描写も巧み。
皮肉も利いており
ネガティブなパワーに満ちた怪作である。

他に藤村志保 福田公子 万里昌代 中村鴈治郎 天知茂など

*映画の中のイイおんな
藤村志保:貧乏浪人の糟粕の妻・・おとなしそうでいて芯が強い女です。
あまりにも人を信じすぎるのもな~と
思わせる人の好いおなごを日本の美・志保さんが演じております。

1963年 監督  森一生
脚本  犬塚稔 辻久一
撮影  今井ひろし
音楽  鏑木創
美術  太田誠一

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NHK「プラネットアース」を観た

2006年10月02日 | ★TV番組
自然の中に生きている動物を見るのが好きだ。
籠の中に入れられた鳥より、
大空を飛ぶ鳥を見るほうがはるかに好きだ。

「プラネットアース」第5集「高山 天空の闘い」を見た。
NHKとBBCが5年の歳月をかけて撮った
知られざる地球の映像集である。

アルプス、ヒマラヤ、巨大なバルトロ氷河など、
山々の映像も圧巻だった。

エチオピアの
高山に住むヒヒはなんと90度の斜面に巣を作っている。
800頭もの群れで行動するために、
言語も発達しているそうだ。

小さな猿たちが斜面を素早く動くのはまあいいとしても
ヒマラヤ、カラコルム山脈で
でっかい動物が崖を駆け下りる映像にはたまげた。

3年がかりで初めてカメラが捕らえたという伝説の動物
「ユキヒョウ」の姿はたいそう美しかった。

斜面80度くらいの切り立った崖を、
長い尻尾でバランスを取りながら
恐ろしいスピードで駆け下り狩りをする。

天敵がいない場所だとはいえ、
小動物でもないのに
なんでそこまで登ったの?とユキヒョウに聞きたいものだ。

そして、乱気流に押されながら
8000mのヒマラヤ山脈を遂に越えるツルの群れの
けなげな姿には涙が出そうになった。
何故ヒマラヤを越えるの?と私はまたツルに聞きたくなった。

不思議だ。この世界は不思議に満ちている。

動物たちも我々に
言いたいかもしれない。
なぜそんなごちゃごちゃしたところに棲んでいるの?と。

緒方拳がナレーター兼ナビゲーターとしてちょろっと登場する。
まだまだ地球には我々が知らない世界が存在するのだ。

これを見た後、首にヒモをつけられて
往来を歩いている犬が可愛そうに見えてくるのは筆者だけであろうか。

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「クライマーズ・ハイ」前編感想

2006年10月01日 | ★人生色々な映画
「登山中に興奮状態が極限にまで達し、
恐怖感が麻痺すること」

その言葉と物語はどういう風にリンクしていくのだろうか。
早くも後編が見たくてたまらない。

1985年8月12日。
地方新聞社の遊軍記者悠木(佐藤浩市)は
友人の安西(赤井英和)と登山に向かうはずだった。
退社直前、大きな事件の一報が入ってくる。

日航ジャンボがレーダーから消えた!?
同時に安西がくも膜下で病院に運ばれたことも知らされる。

時間を何時何分・・・と表示することによって
ドキュメンタリーを見るように画面に釘付けにされてしまう。
管轄地域で大きな事件が起こった場合の現場の混乱が
臨場感たっぷりに描かれる。

特に上司(岸辺一徳)との
やりとりは喧嘩そのもので息が詰るほど。

杉浦直樹の傲慢なワンマン社長、
他にも一癖ある同僚たちが生き生きと登場し、
まるで戦場のようだ。

原作に忠実といわれる脚本は
社内での微妙なかけひき、上司との軋轢、命がけのスクープ、
締め切り間際の混乱、地方新聞記者としての誇りや
中央へのライバル意識までも
細やかに書き込み、
一分一秒を争う現場を浮き彫りにする。

御巣鷹山の映像は当時のものを使っており
未曾有の惨劇の恐ろしい記憶がまざまざと蘇った。

物語は単線ではない。

謎の女の電話は一体何か?
また、主人公とその友人の、
父親としての苦悩
身につまされる人も多いのではないでしょうか。

この場面で人間臭い
弱気な佐藤浩市を見たのは新鮮だった!
いつもは
”強気ふてぶて強気ナマイキ”な役が多いじゃないですか。

山に登る」とはいったい
どういうことなのだろうか?

岸辺一徳と佐藤浩市が焼肉屋で鉢合わせし
やりあっている場面で
修羅場だろうがなんだろうが、
しら~っと女給が
タン塩でえ~す
と肉を差し出してくるなど妙に可笑しくて
演出が行き届いているなと感じた。

こんな大人のドラマがもっと見たい!!

ドラマ特選コーナーに入れました。

【原作】横山秀夫
【脚本】大森寿美男
【音楽】大友良英
【演出】 清水一彦(前編担当)

【出演】佐藤浩市 大森南朋 新井浩文 高橋一生 岸部一徳

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