邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「ちゃんばらグラフィティ・斬る!」

2005年08月23日 | ★ぐっとくる時代劇
これぞ日本のエンターテイメント。

「ちゃんばら」への絶大なる愛にあふれた映画を
ビデオ屋の片隅で見つけた。

宇崎竜童作曲(インスト)のテンポのいいロック調の音楽に乗って
東映の黄金期を彩った数々の作品の名場面が
次々と登場するという豪華絢爛のちゃんばらオムニバス。

古くは
1955年の内田吐夢監督、片岡知恵蔵主演の「血槍富士」から、
「旗本退屈男」、「新吾十番勝負」「一心太助」「水戸黄門」
「忠臣蔵」「丹下左膳」・・・・まだまだあります・・・

こちらに全部の収録映画が網羅されていました。

片岡千恵蔵、市川歌右衛門、萬屋錦之介、大川橋蔵
役作りについての苦労話などのインタビューも入り
ファンにはこたえられないものになっている。

華やかな娯楽作が大半になっているが
「宮本武蔵」や「反逆児」などの
シリアスなシーンも織り交ぜて一気に魅せる。

東千代之介がこんなに演技派だったとは知らなかった・・とか、
錦ちゃんってこんな美少年だったのとか、
あの平幹二朗にも下積み時代があったのかとか、
妖怪大戦争の前身は「笛吹童子」だったのかとか、
水戸黄門は自分で印籠を出していたのかなどなど
新しい発見が沢山あった。

大スターだけではなく脇役の方々もイイ!
当時のセットの立派さにも目をみはる。

キッチュな色彩とスピード感あふれる演出で繰り広げられるちゃんばら絵巻は
若い世代にも楽しめるだろう。

編集が特に面白かったのは
太助が、丹下左膳が、武蔵、黒頭巾、退屈男などが
ものすごい勢いで駆け抜けるシーンを集めた「走る」編。

「桜」がテーマのシーン集では
なんだかわからないんですけど涙が出てしまいました。
失涙!(造語)

夢があり、華があった東映時代劇。

「ザッツ・エンターテイメント」よりも
「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストよりも
こっちのほうが断然至福!

1981年 浦谷年良監督作品 監修 マキノ雅裕

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傑作!「仇討」

2005年08月20日 | ★ぐっとくる時代劇
中村獅童って錦之介の甥なんですか?

またもや橋本忍の脚本にぐいぐいとひっぱられ
クライマックスにいたっては
画面に入ってしまうかのように見入ってしまった。

ちょうど逆貞子状態というんでしょうか。私のありさまは。

ほんのささいなことから
抜き差しなら無い立場に追い込まれ
仇討に巻き込まれていく若者の悲劇を描く。
封建的で非情な武家社会への批判が痛烈に感じられる。

幾重も重なった層によって緻密に構築された脚本が、
主人公の悲劇をより際立たせている。

無駄な台詞がひとつとして無い脚本もすごいが
主役の萬屋錦之介
偉大さも思い知らされた作品。

先日も内田吐夢監督「宮本武蔵 一乗寺の決斗」
の一シーンを見たばかりだが
錦之介の素晴らしさは圧倒的な爆発力にあると思う。

ためにためた苦悩を吐き出すとき、
刀を持って全速力で走り出すとき、
そのエネルギーは天空に向かって放射されるようだ!

躍動する肉体、殺陣はもちろんのこと、
主人公の内面を克明に表現する演技は
観るものを釘付けにさせる。

等身大の人間としての侍と、彼をとりまく社会。
権力と欺瞞。

べたべたとした感傷を抜いて、ひりつくような
悲しみと絶望をあぶりだしていく今井監督の手腕も見事。

物語はどんどん加速していく。

終盤の展開は圧巻の一言。息もつけない。

進藤英太郎、田村高廣、丹波哲郎、石立鉄夫、
三島雅夫、加藤嘉 小沢昭一などの脇も素晴らしい。

「武士道残酷物語」も今井監督と
萬屋錦之介の黄金コンビだった。

社会派と呼ばれる今井正監督だが、
言いたいことがはっきりしている映画はとんでもない力を持つ。

傑作!

1964年 今井正監督作品 脚本 橋本忍 音楽 黛敏郎 美術 鈴木孝俊

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「子連れ狼」子を貸し腕貸しつかまつる

2005年08月19日 | ★ぐっとくる時代劇
「刺客」という言葉が飛び交う
今日この頃ですが、
この映画を見た私にはそんな恐ろしい言葉
とてもじゃないけど安易に使えません。

「ちゃんの仕事は、刺客ぞな」の歌で有名な「子連れ狼」が
初映像化されたのは、
若山富三郎の映画版だった!

昭和45年から週刊漫画アクションに連載された
小池一夫原作、小島剛夕画による劇画は大人気を博した。

拝一刀がなぜ
箱車を押し冥府魔道の旅に出ることになったのか?
大五郎がなぜあんなに肝が据わっているのか
わかるのがこの作品だ。

小池一夫自身が脚本を手がけているため、
台詞がイイ!

冒頭に立派な屋敷が映し出され
家来たちがすすり泣く中を
家老風の侍(加藤嘉)
純白の着物を着た幼い若君の手を引いて登場する。

若君が座るや、背後から三つ葉葵の紋が染め抜かれた着物に
たすきをかけ刀を携えた
拝一刀(若山富三郎)が厳粛な面持ちで現れる。

そして・・

!!

江戸時代、
幕府を支える裏の組織として
黒鍬衆が密偵、危険人物の暗殺に裏柳生
さらに要人の「切腹介錯人」には拝一族があたっていた。

その公儀介錯人の地位を狙う
柳生の陰謀によって一族郎党と妻を殺され、
いわれのない汚名をきせられる拝一刀。

大五郎と共に「冥府魔道」への旅立ちの装束である
白装束をまとい、
切腹を迫る上意書を
「笑止!」と斬り捨てるシーンは鳥肌ものです。

以来柳生一派に付け狙われながら
一殺五百両の刺客を生業として諸国をさすらう。

旅の途中で、子を亡くし気が触れた女に
大五郎を無料でレンタルしてやる場面があって
子を貸し・・という題名はそこからきているものと思われる。

若山富三郎の殺陣は
弟勝新太郎が、「立ち回りは俺より兄ちゃんのほうがうまいよ」と
言っていただけあってすさまじい。
なんてったって元公儀介錯人ですから。
必殺剣法!

三隅研次のメリハリの効いた演出が冴え渡る。

一刀を付け狙う柳生烈堂(テレビでは金田龍之介)に
伊藤雄之助が扮し憎たらしさ不気味さこの上なし。
若山富三郎主演でシリーズ化。
大五郎との絆の深さは作品を追うごとに深まっていくようだ。

萬屋版もいいが、
ハードな若山版子連れ狼も、もっと評価されてもいいと思う。

1972年 三隅研次監督作品 小池一夫脚本 原作: 小池一雄 小島剛夕

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「THE JUON」

2005年08月18日 | ★恐怖!な映画
劇場で見たかったんですが
遅くなりました。

邦画ではありませんが、
清水崇監督のメガホンなので
「恐怖カテゴリー」に入れさせて頂くことにします。

オリジナルビデオ版のほうは(劇場版は未見)
かなり昔に見た。

全体に漂う重苦しい雰囲気と、
普通の生活に突如出現する恐怖の描写は、
攻撃的で
一人で見るのが辛くなったくらい衝撃的だった。

劇場にもかからなかったビデオ作品が
口コミで評判を呼び、
劇場版が作られ、遂にはリメイクされ全米制覇するという小気味の良さ。

恐さのあまりにディテールをあまり覚えていなかったのだが
この作品を見て、
細かいモチーフを「懐かしく」思い出した。

アメリカ人が痛めつけられています。

日本に住むアメリカ人が主人公だが
日本人監督が撮っているので、
映像的にもことさら誇張した表現はなく
ごく普通の今の東京の街を映し出していて
我々が見ても違和感が全く無い。

そんな今までにないアイディアが面白い。

最初からガツンと恐怖描写きます。

ちんまりとまとまった日本の家屋や
バスのシートは、
彼らが手足を伸ばすこともままならないように見え、
ひとごとながら息がつまるような閉塞感を感じる。

言葉が通じない異国での生活は不安で
狭く暗い家屋も気持ちをふさぐだろう。

買い物にいってもわけがわからない。

恐ろしい目にあっても
人に伝えることが出来ない。

そんな外国人の気持ちがよく表現されているので
最初は
「異文化に対応出来なくて
うつ病になった西洋人の妄想を含むという、
二重構造の映画なのか」
と思った。

だがそういうまだるっこしい切り口ではなく、
テーマはあくまでストレートなものだった。

「怨念」「呪い」

中盤はお化け屋敷的な
恐怖描写に慣れてくるが
後半のたたみかけは面白かった。

サスペンスフルな演出と
結末のつけ方はアメリカ映画的だなとは思った。

清水監督はあくまでも「ホラーは、わけわかんないから恐いんじゃん」と
主張したそうだが
やはりアメリカの観客向けには
わかりやすい説明が
必要だったのだと思われる。

だがその手法もオリジナルの雰囲気を壊すことなく
上手くまとめられていたと思う。

全米で第一位を記録したそうだが、
これを見たアメリカ人は
日本人の怨念は「ものすごくしつこい」と恐れ入ったであろう!!

快挙!

2004年 清水崇監督作品 脚本 スティーブン・サスコ サム・ライミ監修

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「亡国のイージス」

2005年08月16日 | ★人生色々な映画
「シュリ」と「ダイ・ハード」を
足したようだといったらあんまりでしょうが
音楽(トレバー・ジョーンズ)の彩り方も
あからさまにハリウッド映画を喚起させた。
(「シュリ」における音楽もまた
ハリウッド映画的だったことを思い出す)

最初からいきなり緊迫した映像で
思わず身を乗り出すも
その後、筋から置いてけぼりを食わないようにと
緊張しっぱなしの中腰状態となった。

一緒に見た連れの
「あれは誰だ?」「あれがお父さん?」「息子は誰だ?」
「結局あれは妹か?恋人なのか?」などの疑問は、
隣の席で開演前にサンドイッチで腹ごしらえをしていた
初老のご夫婦をはじめとした
お盆休みを映画でも見て・・・という、
のんびりした面持ちの客でいっぱいの映画館館内に
霞のように広がっていたに違いない。

一言も発しない女工作員は
公式HPを見て初めて
そのわけを知り驚いた。

その後も物語は
登場人物の気持ちをおぼろげながら「汲んで」、
自分の「想像」で進行していくという事態に!

アクションに重点を置くあまりに
(重点を置きたかったのかは不明なれど)
副長や幹部たちのドラマが書き込まれていないので、
なんであそこまでに至ったのか感情移入も出来ないまま
事態はどんどん進んでいく。

真田先任伍長は弾を少なくても
3発、そしてナイフでも刺されていたはずなのに
最後はターミネーター対ターミネーターの戦いになっておったのは
いいとしても、
某国工作員のステレオタイプの台詞はどうか。

真田広之はもちろんのこと、
勝地涼、安藤政信、谷原章介をはじめとする若手俳優も
まぶしいくらいに全力投球だった。

海上、空と、自衛隊全面協力の迫力映像。
だがしかし・・
問題提起か、人間ドラマか、エンターテイメントか
散漫すぎてある意味すごいです。

一番説明しなくてはならないところを
はしょり過ぎたのではないだろうか?

■亡国のイージス公式サイト

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