邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「鞍馬天狗・角兵衛獅子」

2005年02月13日 | ★ぐっとくる時代劇
舞台は幕末。倒幕の志を胸に鞍馬天狗が活躍する。
嵐寛寿郎の当たり役。

すごい腕を持った剣豪だが、
心の優しい天狗のおじちゃん。
権力には立ち向かうが、親方に折檻される角兵衛獅子の子供たちを助けたりと、
弱いものには優しいのだ。

助けた子供たちはまとめて西郷隆盛に預けちゃうんですけどね!
(太っ腹で懐の大きい西郷は「よか、よか!」と笑って
大勢の子供を引き取っていくのだった・・・)

ただひとり杉作少年(美空ひばり)は命の恩人、
天狗の弟子となってよき相棒に。
美空ひばりの大人顔負けの演技と歌が堪能できる。

角兵衛獅子の鬼畜親方、隼の長七には加藤嘉。
悪役メークでバリバリ。
背筋がぴんと伸びている加藤嘉。

恋人の仇と天狗をつけ狙い、
諭されて天狗ファンになり居候する女、礫のお喜代(山田五十鈴)。
姿がいいというのはこんなひとのことをいうのだろうか。
思いつめた表情も艶っぽく、惚れ惚れとする女っぷりである。

京の街を取り締まる新選組は
鬼のように描かれております。
鞍馬天狗も捕らえられ、打たれ、地下牢で水責めにあい
絶体絶命のピンチに!

終盤の近藤勇(月形龍之介)VS鞍馬天狗はこの映画のハイライト。
二人の時代劇スターが火花を散らす!

紙芝居を見るようにわくわくする展開。
まさに活劇というにふさわしい。

生涯で181人を斬った(!)という剣豪鞍馬天狗だが、
黒頭巾のそのビジュアルも手伝って大いに人気を博し、
一大ブームに。
お供が子供というのもキュートである。

ちゃんばらごっこという遊びは最近聞かなくなったけど、
少し前までは風呂敷をかぶったこどもが
あちこちで遊んでいた。

忍者も鞍馬天狗も、
変装は「頭巾」が決め手だったものですね。

1951年  大曾根辰夫 監督作品  八尋不二 脚本


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鬼平犯科帳スペシャル「山吹屋お勝」(ドラマ)

2005年02月09日 | ★ぐっとくる時代劇
鬼の平蔵(中村吉右衛門)が帰ってきた。

4年ぶりの登場とあって、ファンの期待も最高潮に達す!
ブラウン管の前で夕方からそわそわしていた人も多いのでは?

今回は吉田栄作が登場。年も重ね、
すっかり時代劇が似合う顔になっていた。
単細胞だけど一本気な男利八を、血まみれになりながら熱演。

そして床嶋佳子がヒロインおしのを達者に演じていた。
この人の肌、透き通るよう。
きっと開く眼がらんらんと輝いて、迫力あった。
世間の裏街道を歩く、逃げ道がない二人。

最後、牢の中にあがりこんでの鬼平の語りは、
やはり吉右衛門ならではの貫禄、台詞回しで粋であった。
そしてなるほど・・の裁き。

懐かしい顔もそろい、美味しそうな料理シーンもあって、
いいお酒飲んだような2時間。

そして悪者の用心棒の中になんと嶋田久作の顔が~~!!
強そうだったのにあっけなくやられてしまったジャン!
特徴のある風貌がメイクによってより際立って、
ワレガネのような声とともに時代劇でも存在感をみせつけていた。
やっぱり、「また見たくなる役者」ですね。

江戸情緒あふれる画面、ドラマチックな演出と、
時代劇の醍醐味に溢れていた。

またか?と思うほど乗りに乗っている
古田求(忠臣蔵、華岡青洲・・など)が池波正太郎の原作を脚本化。

火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)という役職の名前、
いかめしくて好きだ!

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「死んでもいい」

2005年02月08日 | ★愛!の映画
劇画:
筋を重視し、画風・ストーリーともに現実味を志向した比較的長編のもの。(大辞林)

劇画がもっとも熱かったのが70年代だ。
上村一夫の、
「同棲時代」、小池一夫&上村一夫の「修羅雪姫」や石井隆の劇画、
「天使のはらわた」シリーズなども映画化された。

石井隆は劇画家であり脚本家であり監督でもある。
この「死んでもいい」は「天使のはらわた 赤い眩暈」に続く監督2作目。
石井作品に登場する、ネオンと夜と雨、
名美という女はこの映画の中にもやはり登場する。

彼にとっての永遠の女性、象徴であるかのような名美。
今回は大竹しのぶが「名美」に扮して秀逸!

煙草を手にぐずぐずぐずぐずと喋る。
「このまま帰らないかな~あの家には。」
「明日があさってになって、あさってが・・」
「私がどうにかしなくたって、世の中どうにかなっちゃうもんでしょ・・」
(イライラ・・)

ずるずると、流れるままに生きる女。
こんな女にひっかかったら最後!

女も女なら引きずられる男も男・・の三角関係。
三つ巴に絡まって行き着く先は・・・
古今東西、幾度となく繰り返されたテーマ。
だけど、やっぱり見てしまうんだなこれが。

永瀬正敏(信)がふとしたことから出会った人妻
大竹しのぶ(名美)に惚れるんですね。
名美の夫は現場を押さえながらも妻とどうしても別れられない。
若い永瀬は突っ走り・・
そんなことしてるうちに来るべき時が来る・・

夫が現場に現れるタイミングが絶妙。
ドキドキしてしまった。
逢引の場所にばったり無邪気に現れる夫、
そして大急ぎで隠れる間男!(古~)
見つかったらどうなるかということを考えただけでもホラ~!

だって相手が、室田日出男
二人とも簀巻きにされて東京湾に投げ込まれるのか?
と思うじゃないですか。
だけどこの夫は、娘ほど年の違う名美を惚れぬいていて、
泣けてくるほどお人良しなのだ。

無表情な信(永瀬)は喘息の持病を持ち、
社会の底辺を流れ流れている若者。
ラブシーンも切羽つまったって感じでよかった。
名美は小さな不動産屋を営む亭主と別段不満も無く暮らしていた。
信とそうなって、両方の男にその場その場で応対。
甘えるんですよ。
(イライライラ)

そんな様子を見てむっとするのはやはり大竹の演技が上手いから。
大竹しのぶと名美の区別がつかなくなっていくのだった。
私のイライラ最高潮に達すると同時に、ドカンと!来た。

物語を象徴するかのようなシーンがいくつか。
電灯にくっついた蛾の死体。
ひらひらと舞う色とりどりの布。

三人がぴたっと役にはまっていて、
最後まで濃密なテンションを保っています。
ラストはとてもリアルで緊迫していた。
だって相手が室田日出男ですからねえ・・・

徹底的に女とその性にこだわる石井監督。
女とは何か?を追求しているかのよう。

題名がいつも鮮烈でイイと思っていた。劇画的だ。

1992年 監督:石井隆 脚本も 石井隆

追記:室田日出男さんのことを調べていたら、2002年に肺がんで
亡くなったとのこと。知らなかった!
非常に残念。この映画での室田さんも素晴らしかった。
ご冥福をお祈りいたします。

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華岡青洲の妻(3)”献身”

2005年02月05日 | ★TV番組
和久井映見がいい!
青洲(谷原章介)の妹役、中島ひろ子
迫真の演技にもびっくり仰天涙して、
すっかり化粧が取れてしまった!?第三回だった。

加恵(和久井映見)は姑(田中好子)に嫌味を言われて
泣いているような芯の弱い女ではない。
槍のような言葉にもバシバシ切り返すたくましさと
気性の激しさを持っている。
二人とも、似たものどおし。
いい勝負の姑・嫁なのである。

新薬の開発中、青洲の妹、於勝(中島ひろ子)が乳がんで倒れる。
弱った体で青洲に迫り、
自分を薬の実験に使ってくれと懇願する場面は迫真の演技。
今思い出しても泣ける。
看病する加恵に「赤ん坊に乳を飲ませるってどんなかんじやろ・・」
と言うシーン・・眼にゴミが・・。
ふたりの泣き顔を見て目から汗が湧いて出た!

なんて上手い女優さんなんだろな~中島ひろ子

麻酔薬の実験に「老い先短い自分を」、
「いやぜひ嫁の私を!」と言い争う姑と嫁の応酬は、
凄まじさを通り越して笑いを誘った。頑固に張り合う二人。

結局根負けした青洲が於継に麻酔薬を飲ませるのだが、
それは母の気持ちを静めるための偽の薬だった。
そうとは知らず、「母親の鏡」だという周囲の礼賛に誇らしげに笑う於継。
その姿を見つめるライバル心むき出しの加恵の表情が可笑しかった。

ついに青洲を説得した加恵の熱意。
「わたしは華岡青洲の妻ですから」という台詞が実に生きた!!
和久井映見ってすごい女優さんになったなあと思うことしきり。

次回は加恵が命がけの人体実験に。絶対に見逃せない!

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「いのちぼうにふろう」映画版

2005年02月03日 | ★ぐっとくる時代劇
先月劇場で無名塾のお芝居版を見たので、
小林正樹監督による映画を再見。

脚本は舞台と同じ仲代達矢の妻だった隆巴。

深川縁にある、安楽亭という一膳めし屋に集まる荒くれ男たち。
主人(中村翫右衛門)は
世の中からはじきだされたそれらの若者を雇い、
ご禁制の抜荷をしていた。

そこへ独りの若者(山本圭)が飛び込んできて、
貧しさのため女郎に売られそうな恋人(酒井和歌子)を助けたいと告白する。
最初は若者をからかっていたならずものたちだったが、
この二人の恋を成就させてやるために人肌脱ごうと言い出す。

山本周五郎原作。
悪のふきだまりのような安楽亭が舞台なので
全体的にトーンは明るくはない。
武満徹の音楽もモノトーンで無機的。

若い塾生たちによる熱気に溢れた芝居も素晴らしかったが、
映画版は佐藤慶、岸田森、山本圭、栗原小巻、神山繁、
中村翫右衛門、勝新太郎、仲代達矢などという
名優の、味のある芝居が楽しめる。
中でも勝新太郎にゃ~参った。参りました。

勝が演じたのは、安楽亭に夜毎やってきては
のんだくれる謎の男なのだが、
この映画のキーになるような重要な役だ。
長い独白シーンがある。
ここが聞かせどころ、見せ所。
江戸っ子弁、ほろ酔い加減の語り口が聞かせる!
男の身の上話に引きずり込まれ、心底泣けた!
やっぱりこの人は天才だ。
ダイアモンドのような素晴らしい独り芝居だった。

仲代達矢は小林監督の作品に出ていると
生き生きしているように見える。
俳優さんと監督にも相性があるように思う。
つらい過去を背負ったはぐれもの定七を演じて、
ルビーのようにあかあかと輝いていた。

仲代達矢がルビーなら山本圭の演技はサファイアのようだ。
硬質の光を放ってすがすがしい。
舞台では勝新太郎の演じた酔っ払いをやって貫禄を見せていたが、
こちらの役のほうがあっているように思う。
真面目でいちずな若者・・

あらくれものたちの中で紅一点の栗原小巻は
まるで一粒の真珠のようだった。
「あたし、おとっつあんの娘だもの。」芯の強い娘役。

なんだか宝石箱のようになってしまった、安楽亭。

葦が生い茂る暗く寂しい深川で男たちが一瞬きらりと光り、散っていった。
百両、千両の金がなんだ!
もっと大事なものがある・・と言ってみたくなる映画!

1971年 小林正樹監督作品 隆巴脚本 東宝 
原作 山本周五郎「深川安楽亭」より

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