邦画ブラボー

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「心中宵庚申」-太地喜和子

2012年07月05日 | ●面白かったTVドラマ

近松門左衛門原作を

ノリに乗ってた

和田勉が演出。

 

八百屋(といっても大店・今のスーパーみたいなもの?)の

若主人半兵衛と妻千代(太地喜和子)はラブラブで

仲睦まじい夫婦だった。

 

それがいったいなんで心中せねばならんの???

 愛があれば問題ないんじゃないの?

no no no!

どっこい、

そうは問屋が卸さない日本人社会。

 

達者な役者に巧みなプロット、

和田演出のなんともいえぬワクワク感でひっぱられてしまいます。

 日本人ならではの義理人情、

しがらみが複雑に絡みあい

あがけばあがくほど闇に呑み込まれていってしまう。

 

お千代は再婚。

男好きがする愛くるしい美貌で、

気立てはいいけど

ちょっとどんくさい(爆)

八百屋の嫁なのに勘定が苦手で

スキがあるキャラである、

とか

くそ真面目な半兵衛は養子で

実は元武士であるとか、

それら細部がすべて不幸へ加速する要因になっていく・・・

と、

説明するわけでもないのに

理解できるように作っていくのがさすがです。

 

ラスト、

死を覚悟した道行きの場面の

見所は

血まみれで顔面蒼白で

ほとんどイッちゃってる男の方(滝田栄)と

女、太地喜和子の恍惚とした

悦びに似た表情を浮かべる顔の対比です。

 

「やってもうた」

 

放心しながらも、気持ちを奮い立たせ

これから最後に大仕事、

やることやってキッチリ「けじめ」をつけねばならん!

(昔の日本人はそういうこと思いましたですね)

という厳しい現実に直面している男と、

愛する男と一緒に死ねる嬉しさに酔っている

すでに現実から離れている女との差といいましょうか。

 

お千代の父、辰巳柳太郎の渋さ、

嫉妬に狂う姑乙羽信子もなくてはならない

立役者です。 

 

この物語の主題は

「義理人情」はもちろんですが

わたしは「嫉妬」が大きなテーマだと思います。

 

ジェラシーです!

 

姑の嫉妬、

千代に気がある

親戚のぐうたら男(尾藤イサオ)の嫉妬、

そして

嫉妬の親玉、象徴であるところの庚申様の嫉妬です。

 

わけもなく

胸騒ぎがして

宵庚申の音に怯える千代が印象的。

 

もしかしたら

庚申さまが

乗り移って

乙羽信子の常軌を逸した行動をうながし

悪夢のような夜を

クリエイトしたのかもしれません!!

 

あまりにも

幸せそうにしていると

恐ろしいことが起こるぞという

警告を含めた物語なのかもしれません。

 

無邪気で聖女のような雰囲気を持つお千代は

太地喜和子じゃなくては

出来ないことは明白です。

テレビドラマ史に残るであろう

すごい作品を見られて時代劇専門チャンネルさんに

感謝いたします。満腹。