邦画ブラボー

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「くちづけ」

2009年06月03日 | ★愛!の映画
春の日差しのような、
ほっこりした三つのエピソードから成る。
いずれも淡い恋心がテーマで、三人の監督によって撮られた。

なんと1955年公開の古い映画。

これを観ながら編んだのが、
例の"くちづけチュニック"というわけです。

「くちづけ」というから
全編くちづけシーンがあると思っていた私は

大馬鹿ものでした。

そういうお下劣な動機で見た自分が恥ずかしくなるほど
清らかで清々しい内容でした。


●筧正典 監督【第一話 くちづけ】

この作品でのみ、くちづけシーンがありました。

初めての接吻シーンの場合、
男性から見た美しい女性の顔がアップで映されることが多いですよね。

瑞々しい肌、かすかに震える閉じられた瞼、ふっくらと艶やかな唇。
頬に光る産毛、無防備に投げ出された伸びやかな肢体・・

と、くれば!

誰だってくちづけしないではいられない!

観ているものも思わず
そうしたくなるような映像を造りだすことは
カメラマンの腕の見せ所のような気がします・・

その後カメラが胸元のほうに降りていって
テンぱった男性の顔がアップになったら
それだけでは済まなくなる可能性が大です(余談)

真面目で潔癖一直線だった女子大生が、
新しい経験をすることによって
一皮むけていく様子が面白かった。

要は人生、理屈じゃないってことかしらね。

●鈴木英夫監督 【第二話 霧の中の少女】

田舎の夏のエピソードをユーモラスに、時にしみじみと描き出し
秀逸!この話が一番好き。

帰省している由子の家に
大学の同級生が旅行の途中、泊まりにやってくることになり一家は大騒ぎに。
特に母親のテツ子(清川虹子)は目くじらを立てて反対するが・・

藤原釜足と清川虹子の夫婦もユーモラスなら、
おばあちゃん役の飯田蝶子がその一枚上を行って抜群。

そして極めつけは、
司葉子の妹役の中原ひとみだ。

この話の題名からもわかるように
主役は司ではなく、この少女なのだ。
くりくりと動く大きな目は中原淳一の絵から抜け出してきたよう。

姉の恋を見る妹の目。
けなげで、一生懸命で、おませで、とっても愛おしい。

鈴木監督ってハードボイルドもいいけど
繊細で叙情的な作品もたまらなくいい。

●成瀬巳喜男監督 【第三話 女同士】

高峰秀子が開業医の奥さんに扮している。

住み込みの看護婦(中村メイコ)が
夫(上原謙)へ恋心を抱いているのを知り・・・

中村メイコは
腹ばいになって鉛筆をなめながら日記を書いているような
女の子の役がすごく似合ってる。。
声が甘くてキュート!

デコちゃんは
微妙な女心をさらっと演じていてさすがです。
この人が演じると
なんでもない話でも印象深く心に残ってしまうのだ~~
おっと、脚本はダンナさんの松山善三なのね。

三篇とも悪人は出てこない。事件も起こらない。
愛すべき人たちによって繰り広げられる最高に「癒される」話。
観ているうちに嫌なことも忘れてしまいそう。

そういう話が全然わざとらしく感じられないところがすごい。

原作 石坂洋次郎
脚本 松山善三
音楽 斉藤一郎
撮影 山崎一雄

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