邦画ブラボー

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「心」

2006年06月24日 | ★人生色々な映画
松橋登である。

苦悩する若者・・をやらせたら天下一品ですねえ。
夏目漱石の原作をベースに新藤兼人が
脚本を書き、監督も務めている。

舞台は明治ではなく
現代(といっても70年代)に置き換えられていた。

久々の松橋登はやっぱりよかった。
繊細な芝居で主人公K(名前は記号で表されている)の心理を演じきる。
恋の衝動、裏切り
友を死に追いやった苦しみを端正な顔ににじませる。
甘く、深みのある声でのナレーションも素晴らしかった。

この人はひとり芝居ででも、
きっと魅せとおすだろうけれども、
無骨なSを演じた辻萬長
対照的で面白かった。

だがいったい、あの「an an 」から抜け出してきたような
I子(杏梨)は何もの?

関係ないけど、仕立物を生業としている下宿のM婦人を演じた
乙羽信子の手つきがすごくて驚いた。
「香華」でも裁縫が得意な母親をやっていたので、
ほんとに得意だったのかもしれない。
夫の新藤監督はよくご存知だったのだろう。
もっとも、この年代の方まではたしなみとして
日本女性は普通にお裁縫が出来たのですねえ。

私は劇団「四季」の頃の勇姿を知らないので、
松橋さんで思い出すのは魔界転生
細川ガラシャにおぼれる家綱将軍であろうか。
狂気の芝居も抜群に似合うのだった。
これもよかったが。

生きることの普遍的な苦しみを静かにしかし深く描いた映画であった。

監督 : 新藤兼人  原作 : 夏目漱石
脚本 : 新藤兼人 
撮影 : 黒田清巳 音楽 : 林光
美術 : 難波一甫

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