社員の首切りを阻止するために、
拳銃自殺しようとするサラリーマン木口。(佐田啓二)
危うく一命を取りとめるが
事件は社会問題としてマスコミに取り上げられ、
彼は一躍時代の寵児のようにもてはやされることに。
唐突な始まりに驚く。
拳銃をこめかみに当てた木口の写真が、
生命保険会社の広告塔となるくだりはまるでアメリカ社会のよう。
ポップアートのような巨大な写真の看板がビルの前面に掲げられる。
木口と彼を取りまく人々の顛末。
同僚金井を演じるベテラン織田正雄がリアルな芝居。
木口を売り出す仕掛け人、マネージャー・ユキに芳村真理。
ウエストがきゅっと締まったバービースタイルの洋服がよく似合う。
上昇志向が強い、時代の先端を走る女を演じている。
ユキの元恋人でバリバリ業界人の週刊誌記者・原田には三上真一郎。
ドライで現実的な男です。
木口の妻に岩崎加根子。この人どんな役でもうまいですわ~
都会的な乾いた雰囲気が全編に漂う。
スピーディな場面展開にも驚いた。
木口はしだいに自分が社会に求められていると錯覚していくが・・・
ユキが元彼、原田に抱かれながら
「私はこの手で社会を変えられると思った。」
「でも、なにも変らなかった・・」と、独白するシーンがある。
「何かがおかしいわ、この音、昔も聞いた覚えがあるわ・・」
世の中も自分も、何も変わっていないと気づくユキは、
「踊るわ!踊って踊って踊りぬくわ!」とクラブで
原田を相手にヤケ踊りするのでした。
クラブのシーンが何箇所か出てくるが、音楽が印象的に使われている。
最後に大きな広告が取りはずされ、
地面に落ちていく様子が象徴的で目に焼きつく。
吉田監督がどうしてもやりたかった場面だったそうです。
松竹ヌーベルバーグと呼ばれた作品群のひとつとされている。
これらの刺激的な作品が次々と発表された60年代に
リアルタイムで見たかった!
佐田啓二は絵になっていました。
1960年 吉田喜重監督作品 松竹
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暮れは「忠臣蔵」となると、正月にも見たいものがある。
それは「旗本退屈男」。
「この眉間に冴える三日月型は天下ご免の向こう傷。
直参旗本早乙女主水之介。人呼んで旗本退屈男。わはわはわははは・・」
早乙女主水之介、直参旗本の御曹子。
年齢不詳。無役。どうやら独身。
江戸城に登城する時も、キンキラキンの派手な着流し姿。
市川歌右衛門のあたり役です。
数年前に息子、北大路欣也がリメイクして、
シンボルである派手な衣装をそのまま使うということで話題になりました。
初めて見たときびっくりしたのは殿様、ほんとに「退屈」していること。
退屈だから事件に首をつっこむ。退屈すぎてどこへも出かけていく。
取り巻きの町人が「殿様、大変だ!」とお屋敷に駆け込むと、
退屈な殿様は、待ってました!とばかり「なに!?」と、身を乗り出す。
「また退屈の虫がさわぎだしたぞ、わっはっは」
一言で言うと、ものすごく「おせっかい」な殿様なんです。
住んでいるのはすごい御殿。
周りに美しい女をはべらせ、日がなぶらぶらしている殿様、主水之介(もんどのすけ)。
だが、実は諸羽流正眼崩し、剣の達人。悪は見逃すことが出来ない。
愉快痛快。殺陣もきまります。
このキャラクターを演じるのは市川歌右衛門しか考えられなかった。
底抜けに明るく、正義感が強い根っからのおぼっちゃま。
ゴージャスで品もある。
今のところ、北大路欣也がお家芸としてこの役を受け継いでいる。(世襲)
息子だから顔もよく似ているけど、
いい男すぎて豪放磊落なめちゃめちゃさが少し足りない。
あと他に誰がいるだろうと考えた。
歌舞伎の市川団十郎なんかが演じると、
荒唐無稽な雰囲気かもし出して面白いかなと思った。
「余が承知しても、この眉間の三日月が承知せぬわ!」
シリーズで何本か出ているが
このパターンは変わらない。ぜひお正月に見て晴れ晴れしたい。
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